【前編はこちらから】 | 【フットボールサミット第6回】掲載
「危険な野心のない遠藤は、誰からも愛され、尊敬もされる」
――彼は性格的にも飄々としていて、それがチームに落ち着きを与える反面、あまりアグレッシブとは言えません。
「優れたパーソナリティを持っていたと思うが、チームがそれを十分に活用したかどうかはまた別だ。
また、性格の強さは必要だ。自分の意見がはっきり言えるかどうか。遠藤にはそうなって欲しかったが、彼はとても繊細な若者であるし、ちょっと脱力したような弱さもある。また自分自身に対しても他人に対しても、謙虚すぎるという印象がある。
いろいろなもの――課題や障害を、積極的に乗り越えようとはしない。それこそ彼が実現すべきことだ。何故なら遠藤は、本物の才能に恵まれているのだから。だからこそ他人よりも秀でること、困難な状況では普段以上に努力して、自分のすべてを出し尽くすことを。常にそうする必要はないが、ときに自分の存在を証明して、さらに先に進めねばならないときがある」
――たしかに好青年であることが、サッカーで常にプラスに働くわけではないでしょうが。
「例えば本田圭佑は、日本で唯一とも言える個人主義的傾向を持つ選手だ。サッカーでは個人主義も必要だし、個人主義的にプレーする選手も必要だ。本田がそうしたプレーをするのは認めるにしても、他の選手が彼に同調して、同じようにプレーを始めたら目に余る。
だからこそ遠藤には、チームのパトロンになって欲しいと私は願う。プレーの面で彼は最高であるのだから、彼の判断でプレーを構築する。ガンバのようにプレーすることを、彼も好んでいるはずだ。
遠藤にとっては、パトロンになるのは簡単なことで、チームメイトが信頼を寄せればそれでいい。極めて冷静ですべてに的確、さらには好青年でもある。スターになりたいという危険な野心も彼にはない。彼の年齢では驚くべきことだ。だから誰からも愛され、尊敬もされている。若手は彼を手本にすればいい。そして遠藤にとっても、若い選手と一緒にプレーすることが、彼らに支えられてさらに優れたプレーを実現するチャンスとなっている。そういう人生も悪くはない」