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「本田△」「ゼイワン」…。絶対に残しておきたい隠語が、そこにはある【サッカー本新刊レビュー:蹴るように読む(2)】

text by 佐山一郎 photo by Getty Images

小社主催の「サッカー本大賞」では、4名の選考委員がその年に発売されたサッカー関連書(実用書、漫画をのぞく)を対象に受賞作品を決定。このコーナー『サッカー本新刊レビュー』では2021年に発売されたサッカー本を随時紹介し、必読の新刊評を掲載して行きます。



『いまさら誰にも聞けないサッカー隠語の基礎知識』

(カンゼン:刊)

編著:サッカーネット用語辞典
定価:1,760円(本体1,600円+税)
頁数:208頁

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 タイトルには「いまさら誰にも聞けない」とついているが、かなりサッカーに思いを深くしている人でもじつは知らない用語が溢れている。そして面白い。へぇー知らなかったな、とつい誰かに話したくなる言葉でいっぱいだ。

 ランダムに拾ってみよう。「カツ丼食ったからね」(2013年に日本代表が当時世界ランキング5位だったベルギーに逆転勝ちしたときの、松木安太郎の名言)、「早野乙」(早野宏史のダジャレに対するネットのリアクション。「ジダンが地団駄」を最初に使ったのも彼である)、「ベルギーは赤い悪魔でしたか」(2002年の日韓ワールドカップの際、ベルギーと引き分けた日本代表のメンバー中田英寿へのインタビューの際に、アナウンサーが放った言葉。中田は「質問の意味がわかりません」と答えた)など。単語だけもうすこし挙げておくと、「キャバクラ7」「ガヤる」「なぜ笑うんだい」「リトル本田」「正解じゃない」「玄米法師」「じぇじぇじぇJ2」、ついでに「ゼイワン」。ああ、あれなぁ、と膝を打つ語もあれば、初めて(それこそいまさら誰にも聞けない!)目にする単語も。

 著者は日韓ワールドカップからサッカーに関するインターネット掲示板に夢中になった人。大手メディアにはない、ちょっと斜めから見るサッカーの世界に魅了され、自らの手で「サッカーネット用語辞典」を開設した。こういう姿勢は、ひたすら生真面目にやらないとだらしなく見えたりもするのだが、著者が本当に「用語辞典」を意識したように、集めて語彙を解説する姿勢には讃辞を送りたい。「絶対に残しておきたい隠語が、そこにはある」の宣伝文句はまさにその通り。

 それにしても本田圭佑に関する語彙って、こんなに豊富だったんだな、と感心することしきり。貴重な人材だった。「本田△」は「ほんださんかっけー」と読むのだ。じゃ、「エア・K」や「誰が時計は片腕って決めたん?」は、覚えているだろうか? 忘れた人、詳細は本書で。

(文:陣野俊史)


陣野俊史(じんの・としふみ)
1961年生まれ。文芸批評家、作家、フランス語圏文学研究者。現在、立教大学大学院特任教授。サッカーに関わる著書は、『フットボール・エクスプロージョン!』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)、『サッカーと人種差別』(文春新書)、共訳書に『ジダン』(白水社)、『フーリガンの社会学』(文庫クセジュ)。V・ファーレン長崎を遠くから応援する日々。

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