【写真:Getty Images】
東京五輪で金メダル獲得を目指すU-24日本代表が最大の武器とするのは、2列目のアタッカー陣のクオリティだ。
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右サイドではMF堂安律、トップ下ではMF久保建英が中心的な存在となり、チームの攻撃をけん引している。一方、左サイドは絶対的な軸となる選手がいない状況。試合ごとに先発する選手が変わり、それぞれ特長の違う選手たちがしのぎを削っている。
ただ、左サイドで競争する選手たちのクオリティに不足があるわけではない。MF相馬勇紀も、MF三笘薫も、2人が不在の間に新たな可能性を示したMF三好康児も、十分にレギュラーを任せられる質の高さを誇る。
「やっぱり自分が試合に出て活躍するのは選手として誰もが目指すべき場所だと思うんですけど、これがチームスポーツの難しいところ。やっぱりチームの勝利を一番に考えなければいけないし、それこそ五輪(のメンバー)に選ばれるまでのしのぎ合いから、(五輪に向けて)1つのチームとなって戦わなければいけない。自分としては日々の練習や親善試合で結果を出して信頼して使ってもらえるように、プレーで示すだけだなと思っています」
大きな国際大会に向けてのポジション争いの難しさを語ったのは、相馬だ。6月の2試合では好パフォーマンスを披露してレギュラー定着に向けてアピールし、その後に東京五輪出場メンバー入りの権利を勝ち取った。だが、同じくAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のウズベキスタン遠征から戻ったばかりの三笘と同様、決して絶対的な地位を築いているわけではない。
相馬や三笘がACLに出場するためタイへ遠征している間に、左サイドのポジションは三好が埋めていた。ポジション争いは三つ巴状態だ。
では、東京五輪開幕に向けてどう振る舞い、森保一監督にアピールしていこうと考えているのだろうか。相馬の考えはこうだ。
「正直、(三好)康児とも(三笘)薫とも本当に仲はいいと思っているし、お互いにリスペクトもあります。お互いに特長も違うから、変に意識することなく、その(目の前の)相手に対してどの特長をぶつけていくのかを考えてやっていきたい。
だからプレーでは、いい意味で自分の特長や結果でお互いにライバルとして頑張りながら、もし自分が試合に出たらまず相手のサイドバックの体力を削って(交代選手に)バトンタッチするとか、逆にそこで(最後まで)いき切ってしまうこともできると思います。そういったチームとしてのことも(競争の中で)やりたいと思っています」
ある意味、“やさしさ”のあるライバル関係とでも言おうか。ポジションを争う選手に敵意を向けるのではなく、試合に出場して勝利に貢献することを目指しつつ、あくまでチームの一員としての役割を理解し、互いを尊重する。相馬は三笘らとの関係性を大切にしている。
もちろん自分が試合に出ていなくとも、考えが変わることはない。
「チームの輪の話をすれば、僕は昨日(ホンジュラス戦)サブだったので、盛り上げる声だったり、チームにどういう声かけをしたら試合に本当に集中しながらもいいモチベーションで戦っていけるかを考えていました。
そういったところが必要だし、あとは同じポジションの選手で、例えば僕と薫とか、前から結構いろいろと書かれているのは知っていたんですけど、僕と薫がいまどういう話をしているかと言ったら、『お互いにどっちが出ててもタッグでやろう』ということ。
僕が最初に出ることになったら相手の選手が本当に疲れ切るまでプレッシャーにいくし、仕掛け続けるし、それでヘロヘロになったときに代わろうとか。逆も同じです。そういった話を日頃からできているので、個々の部分とチーム全体の雰囲気の両方を作っていけたらいいなと思っています」
相馬は「ライバル感より、本当にチームとして頑張ろう」という、チームの雰囲気の良さを6月の合宿から継続して感じている。
「昨日の試合前、(吉田)麻也さんが『いままでは(五輪のメンバーに)選ばれることが大事だったかもしれないけれど、選ばれたらここからは代表として戦っていくんだ』ということをみんなに投げかけていました。そういった面で本当にいろいろな人の思いを背負わなければいけないなと感じました」
東京五輪が近くにつれ、相馬の意識の中でも「個」と「チーム」のバランスは確実に変わってきているだろう。矛盾するようだが、三笘あるいは三好との“協力的ライバル関係”はU-24日本代表の攻撃の破壊力をグッと高める重要な要素になるかもしれない。
(取材・文:舩木渉)
【了】