【写真:Getty Images】
日本サッカー協会(JFA)は18日、東京五輪に向けたなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)のメンバー18人とバックアップメンバー4人を発表した。
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選手の名前が読み上げられると同時に、背番号も明かされた。高倉麻子監督は、東京五輪でなでしこジャパンの「10番」をFW岩渕真奈に託すことに決めたこともわかった。
これまでなでしこジャパンの「10番」はMF籾木結花が着けることが多く、岩渕は近年「8番」を背負って試合に出場していた。ところが自国開催の五輪で籾木は「15番」を着けることになり、エースナンバーである「10番」は岩渕に渡った。
高倉監督は「代表の10番というのは、本当にただの番号だと言えばそれまで」と述べつつ、「やはりなでしこジャパンの象徴的な『10番』と言えば、澤(穂希)さんになってくると思うんですけれども、彼女の後で『10番』を背負う選手というのは、私の中でもとても重い意味があると感じていて、このチームの発足当時から岩渕はその候補の1人ではありました」と明かした。
澤は2011年の女子ワールドカップを制した当時のなでしこジャパンの絶対的支柱で、大会得点王とMVPも獲得。同年に女子のFIFA年間最優秀選手賞を受賞し、キャリアを通じて五輪に4度、女子ワールドカップにも6度出場した日本女子サッカー界の象徴的存在だった。
もちろんなでしこジャパンで刻んだ国際Aマッチのキャップ数やゴール数(通算205試合出場83得点)は歴代最多。数々の金字塔を打ち立ててきた澤の「10番」を受け継ぐ者には相当な重圧がかかるだけでなく、同時に極めて高いレベルの自覚や責任感が求められる。
岩渕があまりに大きくなってしまった「10番」を託すのにふさわしい選手なのか、「本当にチームを背負っていく、顔になる」タイミングを高倉監督はずっと見極めてきたという。そして、機は熟した。
「岩渕の持っているパフォーマンスや潜在能力含め、人間的にも『10番』を託すのは成熟した時だなと感じていたので、意図的に『8番』を背負ってもらいながら彼女の成長を待っていて、ここしばらくのパフォーマンスや彼女の合宿中の言動のなかで強い自覚を感じたので、いま『10番』を託してもしっかり(責任を)果たしてくれると感じていました」
澤らとともに2011年の女子ワールドカップ優勝メンバーでもある岩渕は、当時チーム最年少だった。あれから約10年の間にリオデジャネイロ五輪の出場権を逃すなど苦い経験もしながら、地道に成長。抜群のテクニックや華やかなプレースタイルから“マナドーナ”とも持て囃され、大きな期待を寄せられてきた「新10番」は、選手としても1人の人間としても深みが増した。高倉監督は、そう考えている。
「若い頃から注目や期待を一身に受けて、心の内側を考えれば苦しい部分もたくさんあったと思うんですけれども、焦りや責任感や、うまくいっていることやうまくいかないことを、最近は上手く自分の中で処理できるようになったのではないかと感じています。それをグラウンド上でもパフォーマンスや結果として出せるようになってきたのが、彼女の成長として感じているところです」
東京五輪に向けた活動の中で、取材に応じる岩渕の言葉の端々には日本女子サッカー界を引っ張る選手としての自覚や、なでしこジャパンの中心選手としての責任を感じることが多かった。強い覚悟を持って、キャリアの最盛期に自国での五輪を迎えようとしている。
高倉監督は「東京五輪という大きな舞台で、彼女がチームの浮き沈みを背負って立つくらいの気迫で、10番を背負ってグラウンドで躍動してくれることを強く期待しています」とも語った。
なでしこジャパンがメダルを獲得できるかどうかは、間違いなく「10番」を託された岩渕のパフォーマンスにかかっている。
(取材・文:舩木渉)
【了】