プレミアリーグ第36節、チェルシー対アーセナルが現地時間12日に行われ、0-1でアーセナルが勝利した。3バックを採用したアーセナルは敵陣からのプレッシングで相手のミスを誘い、決勝点をもぎ取った。昨季に続いてリーグ戦では低迷しているが、この勝利は来季につながるものとなるのだろうか。(文:加藤健一)
3バックを採用したアーセナル
アーセナルはUEFAヨーロッパリーグ(EL)準決勝で敗退し、UEFAチャンピオンズリーグに参加する権利を逃した。ELや来季から創設されるUEFAカンファレンスリーグ出場権獲得の可能性は残されているものの、欧州行き消滅の可能性も十分にある。
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「次のシーズンは別のシーズンになる。来季に(良い)影響を与えるため、今は最善を尽くすことに集中する必要がある」
アーセナルのミケル・アルテタ監督は、チェルシーを0-1で破った試合後にそう述べた。そういった意味で、チェルシーという相手は来季に繋げるために不足なしの相手だった。
チェルシー戦でアルテタ監督が用意したのは3バックだった。ブカヨ・サカとキーラン・ティアニーをワイドに置き、最終ラインにはロブ・ホールディング、パブロ・マリ、ガブリエウ・マガリャンイスを最終ラインに並べた。
昨季の終盤以降、アーセナルは3バックがメインだったが、今季の途中で4バックに戻している。分岐点となったのは、12月19日のエバートン戦と、8試合ぶりの勝利を収めたチェルシー戦。ビッグロンドンダービーが2試合ともに転換点となったのは、果たして偶然だろうか。
なぜチェルシーに勝利できたのか?
決勝点となったのは、チェルシーのミスだった。自陣でビルドアップするチェルシーに対して、アーセナルは高い位置から圧力をかける。GKケパ・アリサバラガはバックパスを受けるためにゴールを空けていたが、ジョルジーニョのバックパスが無人のゴールへ飛んでしまう。ケパはなんとかかき出したが、これを拾ったピエール=エメリク・オーバメヤンが折り返し、ジョルジーニョにプレスをかけていたエミール・スミス=ロウが押し込んだ。
ケパのポジションを認識できなかったジョルジーニョのミスだが、何もないところから生まれたミスではなかった。ミスを引き起こしたのは、アーセナルの守備の方法にある。
この試合は3-4-2-1のミラーゲームだったが、アーセナルはハイプレスのハメ方を工夫していた。チェルシーの3バックの両側にボールが渡ると、シャドーがプレスをかける。相手の2ボランチは逆サイドのシャドーとモハメド・エルネニーがマンマークする。
このとき、フリーなのは逆サイドのセンターバックだけだった。セサル・アスピリクエタにパスが通って長い距離を運ぶシーンがあったが、このパスを通すためには、オーバメヤンを越える必要があり、リスクが高かった。チェルシーはボールを持つことは難しくなかったが、そこから前進させるのに苦労していた。
そうなれば、GKやセンターバックから前線にロングボールを放るのが一般的だが、チェルシーの前線とアーセナルの守備陣を比べると、空中戦の優劣ははっきりしていた。アーセナルは3バックの前にトーマス・パルティを置いて、4対3の数的優位を保っている。チェルシーが前線にロングボールを送っても、アーセナルが回収するだけだった。
これを踏まえて得点シーンを見ると、アーセナルがチェルシーを追い詰めていたことがわかる。アーセナルの3バックは大成功だった。
アーセナルの勝利は来季につながるか…
アルテタ監督は新布陣に手応えを感じている。「ハイプレスで本当にいい瞬間があったし、深い位置で守る時間帯の組織も素晴らしく、個々のパフォーマンスも大きかった」とチームを称えた。新システムが復調するきっかけとなる可能性はあるだろう。
しかし、チェルシーにとってこの敗北に大きな痛みはない。4位を確定させることはできなかったが、土曜日に行われるレスターとのFAカップ決勝に向けて主力を温存することもできた。試合後のトーマス・トゥヘル監督のリアクションは、アルテタ監督とは対照的だった。
「直近の試合から(選手の)変更が多すぎたかもしれない」と言ったのは、レスター戦にショックを引きずらないためだろう。「私が全責任を負う」と自身が敗戦の責任を負うことで、選手たちをかばった。
トゥヘル監督は攻撃的な選手の枚数を増やして同点を狙った。戦略的に手の込んだ修正を見せなかったのは土曜日を見据えてのことだったのかもしれない。アーセナルが本気でチェルシーと対峙した一方で、チェルシーの視界にはレスターがいた。
アーセナルはビッグロンドンダービーで大きな勝利を掴んだ。しかし、アルテタ監督が言うように、来季はまた別のシーズンになる。この勝利が来季につながるかどうかは分からない。
(文:加藤健一)
【了】