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セリエA 4年前

ACミラン、屈辱的敗戦を引き起こした原因は? ポジティブな時間が台無し、リズムを崩してしまったのは…【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

セリエA第32節、ミラン対サッスオーロが現地時間21日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。チャンピオンズリーグ(CL)出場を目指すミランにとっては痛すぎる敗戦となった。前半は良い時間を過ごしていただけに、なおさらこの結果は悔いが残る。敗因はどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

サッスオーロ相手にポジティブな入り

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【写真:Getty Images】

 欧州スーパーリーグ(ESL)の件で揺れたミランだが、ピッチ内ではそうした影響を感じさせないほど、選手は立ち上がりから集中して試合に臨んでいた。

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 ロベルト・デ・ゼルビ監督の下、ポゼッションサッカーを基本としてくるサッスオーロに対し、ミランはただ構えるのではなく真っ向から勝負を挑んでいる。もちろん相手もそれで怯むことなくパスをしっかりと繋いできたが、ミランの粘り強さが立ち上がりは一枚上回っていた印象だ。

 スタートは4-2-3-1だったが、前線はかなり流動的だった。前線にアンテ・レビッチとラファエル・レオンの2枚が張り、ハーフスペースにハカン・チャルハノールとアレクシス・サレマーカーズがポジショニング。それにより空いたスペースを両サイドバックが使うなど、攻撃時は実質4-4-2の形に近かった。

 上記した通り前線が流動的なので、サッスオーロの守備陣はミランの選手を捕まえるのに苦労していた。そして、チャルハノールを中心にテンポの良いアクションを繰り返したホームチームは、必然的に面白いパスコースを次々と作り出すこともできていた。ミランの攻めは前半から非常に活性化していたと言える。

 30分の時点で、ミランはシュート8本を放ち、反対に被シュート数は3本だったというデータが出ている。これだけでも、いかにミランが良いペースで進めていたかがわかるだろう。

 そのミランは30分に先制。チャルハノールが華麗なコントロールショットを沈めている。前半はこのまま1-0で終えるなど、実にポジティブな内容であった。

後半に崩れた原因

 1点を取り返したいサッスオーロは、後半に入りやはり攻撃的な交代を行ってきた。ハメド・ジュニオール・トラオレ、ジャコモ・ラスパドーリ、イェレミー・トリャン、マキシム・ロペスを送り込んでいる。

 前半よりも前掛かりになったサッスオーロに対し、ミランはやるべきことを変えず、あまり焦りの色を見せることなく対応していた。しかし、75分になる直前に行った2枚替えを機にリズムは崩れてしまう。

 ステファノ・ピオーリ監督はチャルハノールを下げラデ・クルニッチ、レビッチを下げマリオ・マンジュキッチを投入。ただ、この二人がまったくと言っていいほど機能せず、押し込んで相手の攻めを制御することが不可能となってしまう。そしてもちろん、この交代によりディフェンス面が強化されたわけでもなかった。こうして攻守で曖昧となり、ペースがサッスオーロに傾いてしまったのだ。

 ミランは76分に失点すると、83分にも失点。相手の勢いに完全に飲み込まれてしまった。ピオーリ監督は逆転を許した後にピエール・カルル、ブラヒム・ディアス、サム・カスティジェホの3人を一気に送り込んだが、この交代はあまりに凡庸と言わざるを得なかった。

 ミラン専門ニュースサイト『milannews.it』によるサッスオーロ戦の採点でピオーリ監督には「5点」が与えられており、「(イェンス・ペッター・)ハウゲではなくクルニッチを起用したのは理解できない」とやはり交代策に関して疑問を抱いている。確かに、攻撃時はハーフスペースに位置するチャルハノールを代えるならば、クルニッチよりもハウゲの方が怖さはあっただろう。

 結果論にはなってしまうが、ピオーリ監督の交代策が的確だったとは言い難い。

失点シーンに共通した甘さ

 リズムを壊してしまったピオーリ監督の責任は重いが、もう一つ気になるポイントがあった。それは、2失点とも似たような形でやられていることである。

 1失点目はライン間に守備人数を集めたことでサイドが空き、そこに展開されトリャンに1対1を仕掛けられている。最後は運が味方した部分もあったかもしれないが、ペナルティーエリア内に侵入してきたラスパドーリを誰もチェックしておらず、フリーの状態でシュートを許してしまった。

 2失点目は右サイドで仕掛けたドメニコ・ベラルディに対し2人が引き寄せられ、中央が空いてしまう。そこに侵入してきたラスパドーリへの対応が遅れ、右足でシュートを流し込まれてしまった。

 ある一点に人数を集め、そこで奪いきれずにスペースを空けてしまい、飛び込んできた選手への対応がワンテンポ遅れる。上記2つの場面でミランが露呈してしまった隙と甘さだ。とくに、センターの選手が左右に振られ過ぎてしまっていたので、ここは次節以降の反省点になるだろう。

 ここにきてホームでの一戦を落としたのは大きな痛手だ。首位インテルとの勝ち点差はこれで10に広がった。ただ、本当にミランが気にするべきはその下。ユベントスやアタランタはすぐそこまで迫ってきており、ナポリやラツィオもまだまだチャンピオンズリーグ(CL)出場圏に食い込んでくる可能性は高い。

 残り6試合。もうミスは許されない。シーズン終了後、「あのサッスオーロ戦を落とさなければ…」という話題が出てくることだけは、なんとしても避けたい。

(文:小澤祐作)

【動画】10番背負うMFの華麗な一撃も! ミラン対サッスオーロ ハイライト

参照元:YouTube

【了】

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