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PSG、ネイマールがスーパーな輝き。バイエルンにとっての大きな障害、攻守のグレードを高めたその役割【欧州CL分析コラム】

チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝2ndレグ、パリ・サンジェルマン対バイエルン・ミュンヘンが現地時間13日に行われ、0-1でアウェイチームが勝利。しかし、2戦合計スコア3-3でアウェイゴールの差により上回ったPSGがベスト4入りを決めている。躍動したのはやはり、背番号10ネイマールだった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

バイエルンはあと1点が遠く…

バイエルン・ミュンヘン
【写真:Getty Images】

 40分、バイエルン・ミュンヘンはマキシム・チュポ=モティングのヘディングシュートにより1点を先取。この時点で2戦合計スコアは3-3。残り時間を考えても、勝利の女神がどちらに微笑むかを予想することは容易ではなかった。

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 結果的に、ベスト4への切符を掴んだのはパリ・サンジェルマン(PSG)。バイエルンは最後まで攻めたが1点が遠く、アウェイゴールの差に泣いた。最もモヤモヤが残る試合になったと言えるのかもしれない。

 前回王者の選手や監督は試合後、揃って1stレグの結果を悔やんだ。

「決定打となったのは1stレグでPSGの効率性が我々を上回っていた事実だ」(ハンジ・フリック監督)

「1stレグを振り返り、多くのチャンスを活かすことなく余計な失点を重ねてしまったことが腹立たしいよ」(マヌエル・ノイアー)

「パリで勝ったにもかかわらず最終的に敗退してしまったことはとても残念だ」(トーマス・ミュラー)

 確かにバイエルンからすると、2ndレグよりも1stレグの内容の方が落胆ぶりは大きかったと言える。再三にわたりチャンスを作りながら点を奪えず、ノイアーの言葉通りわずかなピンチから失点を重ねてしまった。そうしたほんの少しの差が、チャンピオンズリーグ(CL)という舞台ではどうなるか。バイエルンは最終的にその怖さを痛感したと言えるはずだ。

 また、バイエルンにとって不運だったのは欠場者の多さだ。

 ドイツの絶対王者がPSGを押し込む時間は多かったが、その形はほぼサイドに偏っていた。レロイ・ザネとキングスレー・コマンがボールに触れる機会は多く、そこで1対1を仕掛けてブロックの攻略を図る。ザネとコマンの能力を考えれば十分な攻撃だったかもしれないが、リズムは決して良くなかった。

 ただ、流れを変えようにもロベルト・レバンドフスキ、セルジュ・ニャブリ、レオン・ゴレツカを欠くバイエルンは駒不足。ベンチには若手選手が多く、フリック監督は途中から18歳ジャマル・ムシアラ、ベテランのハビ・マルティネス2枚をピッチに送り出すことが精一杯だった。

 もちろんPSGにも怪我人はいた。これを敗因のすべてにするのは、前回CL王者に相応しくはない。ただ、レバンドフスキやニャブリらがいれば、バイエルンの攻撃にもっと迫力が出ていたことは確かだろう。たらればは禁物だが、このタイミングで彼らが離脱した影響は決して小さくなかったと、2試合を終え感じている。

怖さを与えたネイマール

ネイマール
【写真:Getty Images】

 一方のPSGは最後までヒヤヒヤした展開が続いたものの、GKケイラー・ナバスのファインセーブ、マルキーニョスに代わりゲームキャプテンを担ったプレスネル・キンペンベを中心とした守備陣が粘り強く戦ったこともあり、再びベスト4への挑戦権を得ている。

 PSGの戦い方は1stレグと大きく変わらなかった。バイエルンにボールを持たれた際は4-4-2で対応し、奪ったら一気に縦へ展開。とくに、バイエルンが追加点を奪おうと前掛かりになってきた後半は、フランス王者のカウンターが怖さを示すシーンが増えていた。

 そのPSGの中心にいたのは背番号10ネイマールだ。1stレグで勝利の立役者となった男は、再びバイエルンの前で躍動した。

 4-2-3-1のトップ下で先発したネイマールは、とにかく絶妙なポジショニングを取り何度も良い形でボールを引き出した。事実、この日のPSGで最もボールに触れたのはネイマールで、その数はチーム2位レアンドロ・パレデスの73回を大きく上回る85回となっている。

 ネイマールに対するチェックはもちろん厳しかったが、同選手は華麗なタッチと緩急、そして全身をうまく使い鋭い相手のプレスを無力化。二人に囲まれながら突破するシーンもあり、それによってマークがズレてフリーとなったキリアン・ムバッペやアンヘル・ディ・マリアを効果的に使っていた。

 カウンターの起点になるだけでなく、最後はフィニッシュにもしっかりと絡んでいる。シュートはことごとくポストやクロスバーに嫌われてしまったが、ボールを引き出す動きやシュートコースを作るまでのアクションは完璧。バイエルン側はどうにもこの男を捕まえることができなかった。

 チームとして無得点に終わったので、ネイマール自身も大満足、とまではいかないだろうが、守備にも貢献し、シュート数最多の6本、ドリブル成功数同6回、チーム最多のキーパス3本は見事なスタッツを言わざるを得ない。バイエルンに与えた怖さは、計り知れないものがあった。

攻撃センスがチームに与える時間

 ただ、ネイマールが与えたのは怖さだけではない。チームに対し“時間”も与えた。

「攻撃は最大の防御」という言葉は有名だが、PSGはそれをピッチ上で再現したようにも思う。軸となるネイマールがプレスを剥がし、カウンターが決まり、バイエルンを深い位置へ押し込む。そして最後はムバッペやネイマールが「やり切る」ので、必然的に相手のカウンターは発動しない。

 守備陣として最も怖いのは、やはり低い位置でボールを失った時だ。ラインを上げようとしたままの状態で相手の攻撃に転じ、各選手の位置がバラバラとなってやられてしまうケースは多い。つまり「準備」が足りていない場合が、最も危険なのである。

 サッカー経験者、とくにDFだった方はよくわかるかもしれないが、味方が敵陣深くでプレーする時間が長ければ長いほど、安心感がある。もちろんその際にいかに集中できているかが重要なのだが、準備できる時間があるというのは何よりもありがたい。

 そういった意味で、単独、あるいは味方と連係し深さをとって時間を作る仕事を誰よりも多くこなしたネイマールの存在は、PSGの守備強度を影ながら高めたとも言える。もちろん最後は複数得点を与えなかった後ろの選手たちの力が発揮されたと見るべきだが、バイエルンにとって良い位置で捕まえさせてくれないネイマールの存在が、良い攻撃へ繋げる上での障害になっていたことは確かだ(ネイマールが点を決めていればチームがもっと楽になったのも事実だが…)。

 ネイマールはこの試合のMOMに選出されている。UEFAテクニカル・オブザーバーのパトリック・ヴィエラ氏は「PSGの危険なチャンスはすべて彼の個人的な才能から生まれたもの」と背番号10を評価した。悲願のCL制覇へ、ネイマールの活躍がまだまだカギを握るだろう。

(文:小澤祐作)

【了】

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