「海外組」と「国内組」が分かれても
日本代表は30日、カタールワールドカップのアジア2次予選でモンゴル代表と対戦し14-0の大勝を収めた。
25日の国際親善試合では韓国代表に3-0で勝利しており、3月の日本代表活動は2連勝で終わった。スコア上は大差がついたとしても、勝ったことで得られる成果は負けた時にくらべはるかに大きいのは間違いない。
今回の日本代表合宿は異例づくしだった。特に「海外組」と「国内組」が分けて語られることが多く、両者の間には埋めがたい溝があったのも事実。というのも新型コロナウイルス対策の一環で宿舎のフロアも食事会場も別、移動のバスや練習場のロッカールームも海外組と国内組で分けられ、チーム全員が密にコミュニケーションを取れる場は練習中や試合中のピッチ上のみだったからだ。
同時期に活動していたU-24日本代表に回る選手や、招集できなかった海外組の選手もいるなか、森保一監督はJリーグで活躍する中堅世代に多くのチャンスを与えた。2試合で招集したフィールドプレーヤーを全員起用し、8人の選手がA代表デビュー。日本代表での初ゴールを決めた選手も4人いる。
新戦力の見極めや選手層の拡充を図った成果について、森保一監督は「A代表の活動に彼ら(国内組)が融合してくれることによって、我々にとって嬉しい発見・発掘につながりましたし、今後のA代表の活動にさらに厚みが出たなと思っています」と手応えを感じている。
「普段、所属クラブで中心として活躍することによって国際舞台でも力を発揮できるんだということが、Jリーグや日本サッカーの自信になると嬉しいです。今回、国際経験を積んだ選手たちがクラブに帰ってさらに成長したいと思ってもらえるように。
そして、所属クラブで代表を経験した選手を見て、他の選手が『俺たちもっとできるんだ』と思ってしのぎを削って、レベルアップにつながれば嬉しいですし、その先のJリーグの盛り上がりにつながり、試合がさらに盛り上がっていってくれると嬉しく思います」
Jリーグ組の選手たちが体感したもの
森保監督はモンゴル戦後の記者会見で国内組の台頭や、それにともなうJリーグのさらなる底上げについて何度も言及した。練習や試合を通して海外組のクオリティや基準の高さを実感した国内組の選手たちは、間違いなくさらに意識を高く持って、継続的な日本代表入りのチャンスを掴むために努力を積むはずだ。
モンゴル戦でハットトリックを達成したFW大迫勇也も「もちろん経験の部分でもそうですし、若い選手が出てきているので、これを続けることによってワールドカップで勝てるチームになってくると思います。各々が各クラブで、僕もそうですけど、しっかりと存在感を出していかなければいけないのかな、と。特に僕はそうですね」と語る。新顔たちから多くの刺激をもらったようだ。
約1週間半にわたって大迫や鎌田大地ら海外組のアタッカーたちと過ごした畠中槙之輔は「ディフェンスとの駆け引きであったり、タイミングの外し方だったり、ボールの受け方1つをとっても、やっぱり世界でやっているだけあって、Jリーグとはタイミングも全然違います」と、改めて海外組の質の高さを実感していた。
そのうえで「逆に本当に自分にとってはすごくいい練習相手というか、これからに向けていい経験値を得られる相手なので、練習していてもすごく楽しいです」と充実の表情。横浜F・マリノスでプレーするセンターバックは「国内組、海外組と言われるのは今は仕方ない」と述べつつも、「Jリーグでは本当に負け知らずになるくらい、絶対に負けないという気持ちでやらなければいけない」と成長への意識を高めていた。海外移籍への思いも強くなっている。
キャプテンを務める吉田麻也は1年4ヶ月ぶりに日本国内で開催となった日本代表合宿を次のように振り返った。
「前回(昨年11月)、前々回(同10月)も海外組しか呼べない状況だったので、国内組の選手はもどかしい思いをしていただろうし、このチャンスをモノにしたいという高いモチベーションでこの合宿に挑んだのは間違いないと思います。
ただ、一歩を踏み出したとは思いますけど、これからだと思いますし、昨日もいいパフォーマンスをしたU-24代表(U-24アルゼンチン代表に3-0勝利)に行っている選手もこの座(A代表)を狙って戦ってくるし、他のJリーグの選手、他の海外でプレーしている選手も、『23人』という枠を必死に、死にもの狂いでつかみにくると思います。
全員にとってこれは競争ですし、一度このチャンスをモノにしたら、簡単にこのポジションを分け与えてはいけないなと思うので、1人ひとりが死にもの狂いでこのポジションを死守しないといけないんじゃないかなと。それはこれから4月、5月のJリーグだったり、各国のリーグでの所属クラブでのパフォーマンスにつながってくるし、そこで意識を高く、高いパフォーマンスを維持して、次の招集に備えるのが大事になると思います」
国内組に欧州移籍のススメ
日本代表で経験した基準の高さをそのままJリーグの所属クラブに持ち帰って維持し続ける重要性とともに、吉田は国内組でA代表を経験した選手たちに、改めて欧州の高いレベルに挑戦することの意義や重要性も説いた。
「欧州の本当に強いチームでプレーしている選手はまだまだ少ないと思うので、ここから2ヶ月でいいパフォーマンスを出して、夏に(欧州へ)移籍する選手が1人でも多く出ないといけないと思いますし、そういうところに身を置くのが(ワールドカップで結果を出すために)一番の近道なんじゃないかと。こではずっと言っている話ですけど
もちろん国内組で(A代表に)選出された選手もこの合宿を経て、いろんなこと感じたと思うし、上のレベルで誰かがやれば、自ずと下も刺激を受けて、総合的にチームが良い方向に向かっていく。1人だけの問題ではなくて、1人でも多くの選手がそういうところ(よりレベルの高い環境)に身を置くのが一番大事なことだと思います」
大差がついてもモチベーションを自分たちの成長に向けることで有意義な試合とし、コミュニケーションの機会が限られても肌感覚で日本代表に求められる高い基準を新顔の国内組たちに伝えることができた。ワールドカップ予選で相手のレベルが劣ろうと、ベクトルの向け方しだいで試合に意味を持たせることができ、前向きな成果が得られるのである。意味のない試合や練習など1つもない。
ロシアワールドカップ以降、海外組の選手がチームのほとんどを占める状態か、あるいは海外組のみか国内組のみという限られた条件下でしか活動できていなかった森保ジャパンにとって、両者の「融合」はなかなか進んでいなかった重要テーマの1つだった。
複雑な状況下での合宿になったが、森保監督率いる日本代表のチーム作りはこれまでの海外組中心で戦い方と選手構成の軸を作る段階から、選手層の拡充やコンセプトの伝播・浸透によってチーム全体の底上げを図る新たなフェーズに移行したのではないだろうか。
(取材・文:舩木渉)
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