リーグ戦の不調を感じない戦いぶり
ご存じの通り、リバプールはプレミアリーグで苦戦を強いられている。直近5試合で勝利できたのは最下位シェフィールド・ユナイテッド戦のみとなっており、つい最近まで「無敵」とも言われていたアンフィールドではクラブワースト記録となる6連敗。28試合を消化し、まさかの8位に低迷している。
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ユルゲン・クロップ監督へ向けられる目も当然厳しくなっており、レンジャーズを10年ぶりのリーグ優勝に導いたスティーブン・ジェラードの新監督就任についての噂もちらほら目立つようになっている。チームは今、圧倒的な強さでプレミアリーグを制した昨季からは考えられない状態にあった。
しかし、現地10日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)・ラウンド16の2ndレグ、RBライプツィヒ戦ではプレミアリーグでの絶不調ぶりを感じさせず、リバプールらしい強さを取り戻せていたと言えるだろう。
お互いに攻守の切り替えが早く、試合は立ち上がりからスピーディーな展開となった。その中で最初に多くの決定機を作ったのはリバプールで、GKペテル・グラーチを何度も襲っている。同選手のファインセーブがありさっそく得点とはならなかったが、早い段階で試合が決まっていた可能性も十分高かった。
その後もリバプールとライプツィヒは一進一退の攻防を繰り広げている。ただ、1stレグを2-0で制しているリバプールはやはりどこか落ち着きがあり、反対にライプツィヒには「点を取らなければ」という焦りのようなものが感じられた。スコアこそ0-0だったが、内容的にはリバプールがやや上回っていたと言える。
そして70分に試合が動いた。ディオゴ・ジョッタが敵陣深くでボールを持ち、右サイドのモハメド・サラーへラストパス。背番号11は中へ切り込み、左足で冷静にシュートを流し込んでいる。さらにその4分後、リバプールはサディオ・マネがゴールネットを揺らし、2戦合計スコア4-0と相手を突き放した。
試合はこのまま終了し、リバプールはベスト8へ駒を進めている。貴重な先制弾を叩き出したサラーは「プレミアリーグで数試合負けた後にここへ来た。チームはベストな状態にないが、CLで戦いたいと思っている」と言葉を残した。
「本職」ファビーニョがもたらす効果
と、ここまで簡単に試合を振り返って来たが、このライプツィヒ戦で輝きを放っていたのがリバプールの「ダイソン」ことファビーニョだ。
モナコから加入した当初は苦戦しながらも、徐々にチームに馴染み今では欠かせない存在となったファビーニョ。今季はフィルジル・ファン・ダイクやジョー・ゴメスが長期離脱したことでセンターバック起用も増えていたが、ライプツィヒ戦では「本職」のアンカーを担っている。
ファビーニョはCBとしても賢さを生かしてハイパフォーマンスを披露していたが、やはり中盤底においてチームにもたらす効果は絶大だった。とにかくポジショニングが絶妙で、必ず良い位置、良いタイミングでライプツィヒの攻撃をストップしてくれる。読みの鋭さも相変わらず抜群で、この試合ではチームトップタイとなる3回のインターセプトを記録している。中盤の強度は明らかに増していた。
リバプールはスタート4-3-3だったが、攻撃時はチアゴ・アルカンタラをトップ下に置いた4-2-3-1のような形に変化している。その中でファビーニョは攻守のバランスを整えながらビルドアップに貢献しており、チアゴが心置きなく前でプレーできるようサポートしている。その効果もあってか守備時の対応も含め、チアゴはいつもより非常に活き活きとしていた。
攻守においてダイナミックなプレーが持ち味のジョルジニオ・ワイナルドゥムは、ここ最近アンカー起用が多く前へ果敢に飛び出すことが難しくなっていた。しかし、この日はカバーリングに長けるファビーニョという男がいるので、守備時インサイドハーフに入ったワイナルドゥムは積極的に前からプレッシャーを与えたり、鋭いカットを狙ったりと本来の怖さを発揮できている。
中盤底でバランスを見ながら、カバーもでき、自らも勝負できるファビーニョがいることで、インサイドハーフの選手もより活発になる。ライプツィヒ戦ではそれが大きく証明された。故障者続出のCBはオザン・カバクやナサニエル・フィリプスに任せ、ファビーニョはアンカー起用に固定する。これが、リバプールが導き出した本当の答えなのかもしれない。
(文:小澤祐作)
【了】