信念を貫いたリバプール
リーグ戦3連敗はユルゲン・クロップがリバプールの監督に就任して以来、初めてのことだった。ブライトンに不覚を取り、マンチェスター・シティ戦とレスター・シティ戦では試合終盤に連続失点を喫した。プレミアリーグの順位は6位まで後退。クロップは「シティとの差を埋められるとは思わないよ」と、優勝争いからの脱落を認めている。
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RBライプツィヒ戦前日にクロップは「信念を貫かなければいけない。時に信念を失うこともあるが、それを取り戻す必要がある」と語っている。果たして、ライプツィヒ戦でリバプールはその信念を取り戻すのに十分な戦いだった。
社会情勢によりドイツで開催できず、試合はハンガリーのブダペストで行われた。ブンデスリーガ最少の16失点という堅守を誇るライプツィヒに対し、リバプールは貴重なアウェイゴールを2つも奪取。理想的な展開で1stレグを終えている。
ライプツィヒの3バックはリバプールの3トップに対してマンマークで守った。サディオ・マネにはノルディ・ムキエレがつき、ロベルト・フィルミーノが中盤に降りる動きにはダヨ・ウパメカノがポジションを捨てて対応している。
マンマークで守ることで、ライプツィヒは3トップのポジションチェンジにも対応することができた。しかし、数的同数で守るのはリスクもある。リバプールはサイドバックや中盤が相手DFの裏のスペースに執拗にボールを送り続けた。
マルセル・ザビツァーのパスがずれ、それを拾ったモハメド・サラーが先制点を決めた。カーティス・ジョーンズが送った浮き球のパスに対応したノルディ・ムキエレが転倒。マネがこれを拾い、そのまま運んでゴールネットを揺らしている。
リバプールはミスを引き起こしやすい戦い方をしている。2得点はライプツィヒのミスという偶発性だけでない。リバプールはフィニッシュに至る過程で1対1の局面を生み出すのがうまかった。
ゲーゲンプレッシングが炸裂した経緯
「サッカーチームとは、家を建てるようなものだ。基礎がしっかりしてなければ、常に揺れてしまい、風が通り抜ける。それ(怪我人が多い現状)を変えることはできないが、我々はそれ(ベースを作る作業)に取り組んでいる」
ライプツィヒ戦前日、クロップはチームを家に喩えている。ペップ・ラインダースがアシスタントコーチとしてリバプールに復帰し、アリソンとファビーニョが加入したのが2018年の夏。トランジションの強さを保ちつつ、ボール保持の局面でも成熟度を高めた。
3人がCL制覇とプレミアリーグ優勝のキーマンになったのは間違いない。しかし、今季はファン・ダイクの離脱をきっかけにバランスを崩した。3人は家の基礎ではなく、その上に建てられた上物である。初心忘るべからずという言葉通り、苦しむリバプールは原点に立ち返えった。
1点目はサラーが一瞬の隙を見逃さなかったことで生まれた。2点目はジョーンズが縦への意識を強く持っていたからこそ、マネが見えていたのだろう。「我々が求めていた試合だ」とククロップがライプツィヒ戦を振り返ったように、リバプールらしいゲーゲンプレッシングは90分を通して相手の脅威になっていた。
ジョーダン・ヘンダーソンと新加入のオザン・カバクは裏を取られるシーンもあった。それでもチームが無失点に抑えられたのは、前線からの守備が機能していたからだろう。「みんなが前線から本当によくプレスをかけていたと思うし、中盤は素早くボールを回収していた」とヘンダーソンはチームメイトを称えている。
シティ戦とレスター戦でも、終盤に失点するまでは“らしい”戦いを見せていた。リバプールらしい戦いを90分続けることができれば、結果はおのずとついてくる。ライプツィヒ戦はリバプールの強さがまだ廃れていないことを証明した試合だった。
(文:加藤健一)
【了】