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イブラヒモビッチが躍動
第19節アタランタ戦、第20節ボローニャ戦で今季セリエA初の連続無得点に終わり、コッパ・イタリア準々決勝インテル戦では58分に退場してチームに迷惑をかける始末。ここ最近のズラタン・イブラヒモビッチは、何かとネガティブな話題が多かった。
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しかし、それぐらいのことで強靭なメンタルを兼ね備えるスウェーデンの王様が一気に調子を落とすことはない。それは、現地7日に行われたクロトーネ戦で大きく証明された。
前半途中まで、ミランは最下位クロトーネを前に苦戦を強いられた。ステファノ・ピオーリ監督が「試合のアプローチは良かったが、前半は少し距離感を見失って相手に上手くプレーさせてしまったね」とゲームを振り返った通り、3-5-2で挑んできた相手に幅をうまく使われ、押し込まれる時間帯が少なくなかった。得点も奪えていなかったので、少し嫌な空気が漂っていた。
ただ、その流れを吹き飛ばしたのがイブラヒモビッチだった。30分、ペナルティーエリア角付近で相手二人を引き付けると、横にいたラファエル・レオンへパス。その後リターンを貰った背番号11は冷静にゴール右隅へシュートを流し込んでいる。今季のクロトーネは先制された試合で勝ち点を獲得したことが1度もなかったので、この1点は非常に大きかった。
さらに、イブラヒモビッチは64分にも得点。左サイドを突破したテオ・エルナンデスからのグラウンダークロスを完全フリーな状態で押し込んでいる。時間はまだ25分ほど残されていたが、試合の流れ、クロトーネの力を考えてもこの時点で勝負は決まっていたと言える。
ドッピエッタを達成したイブラヒモビッチは、これでクラブキャリア通算得点が「501」に到達。今季リーグ戦14得点は全体2位の成績で、1試合で2得点をマークした回数(6)はクリスティアーノ・ロナウドと並んで欧州5大リーグトップだという。
今年で40歳となるにもかかわらず、スーパーな活躍を続けるイブラヒモビッチ。まさに「神」のような存在だが、神だからといって当然何もしていないわけではない。クロトーネ戦後、ピオーリ監督はこのようなコメントを残している。
「イブラはモチベーションを高く保っているアスリート。栄養管理、疲労回復、予防と全てにおいて完璧に体をケアしている。彼は並外れたプロで、驚異的な体格を備えている」。
この努力こそが、ミランを再びトップレベルへ引き上げる原動力となっているのだ。
ちなみにイブラヒモビッチは2点目を決めた後、パオロ・マルディーニやリッキー・マッサーラらのいるスタンドに向けジェスチャーを送っている。「もう一本」と言うかのように指を動かし、指を一本振り、次に二本振っていたようだ。
一部メディアは、これには今シーズンで満了となる契約にあと1、2年追加することを希望したメッセージが込められている、と解釈したようだ。この日の得点数を指で表しただけのようにも思えるが…果たして。
チャルハノールの存在価値
また、クロトーネ戦では、イブラヒモビッチ以外にも印象的なパフォーマンスを披露した男がいた。それが、ハカン・チャルハノールである。
背番号10を身に着けるトルコ代表MFは先月16日に新型コロナウイルスの陽性判定を受け戦線離脱。しかし先月29日に陰性判定を受けており、翌30日に行われたボローニャ戦は欠場したものの、今節のクロトーネ戦で戦列復帰を果たした。
チャルハノールは62分からの出場だったが、ピッチに立ってから間もなくしてよくボールに触れていた。そして出場からわずか7分後にアンテ・レビッチのゴールをお膳立てすると、その1分後にもレビッチの得点を演出。いきなり2アシストをマークしたのだ。ちなみにチャルハノールは今季リーグ戦でのアシスト8回のうち7回を12月以降に記録。これはバイエルン・ミュンヘン所属のキングスレー・コマンと並んで欧州5大リーグトップだという。
攻撃面で結果を残したチャルハノールは守備でも貢献。66分には自陣深くで果敢に動き回りボールをカットし、カウンターの起点に。さらに相手のアンカーであるニッコロ・ザネラートの警戒も怠らず、67分にはスプリントしてペナルティーエリア内まで戻るという意識の高さをみせつけている。
この日トップ下で先発を飾ったのはレオンだったが、やはりチャルハノールのクオリティーは改めて抜群だと感じる。ライン間でボールを受けてからの散らしがスムーズで、細身ながらタメを作ることもできるから攻撃のリズムがよく生まれるし、何より運動量豊富で幅広いエリアでプレーできる強みがある。それはもちろん、攻撃面だけでなく守備面でも同じことが言える。
レオンもカウンター時などはうまくサイドに流れスペースを突くなど奮闘していた。ただ、引いた相手に対しボールを持つ展開になるとやはり窮屈そうなプレーを強いられてしまい、結局はスペースを見つけにサイドに流れてしまうということが多々ある。チャルハノール不在時に慣れないトップ下をよく担っていたことは間違いないが、レオンのトップ下起用は今後、あくまで緊急時用になるだろう。
ピオーリ監督も「レオンはトップ下でうまくやってくれたが、我々のOMFはチャルハノールとブラヒム(・ディアス)だよ。彼らがそのポジションに対して誰よりも多くのクオリティーを持っているのは明らかだ」と話している。レオンには今後、左サイドでの活躍を継続してほしいところだ。
チャルハノールが戻ってきたことはミランにとって非常に大きい。それはクロトーネ戦のわずかな時間でも証明された。ミランはまだまだ上昇気流に乗り続けるかもしれない。
(文:小澤祐作)
【了】