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アーセナルはヴェンゲルとグアルディオラの混血? ミケル・アルテタが見せた興味深い「リアクション」【分析コラム】

プレミアリーグ第23節、アストン・ヴィラ対アーセナルが現地時間6日に行われ、1-0でアストン・ヴィラが勝利した。昨年末以降、好調を維持してきたアーセナルだが、アストン・ヴィラの固い守備を崩せず。この試合で見せたミケル・アルテタの采配は、かつての恩師・アーセン・ヴェンゲルと、マンチェスター・シティで仕えたペップ・グアルディオラのエッセンスを感じさせた。(文:本田千尋)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

開始早々の失点が響いたアーセナル

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【写真:Getty Images】

「リアクション」は興味深かった。だが、成功はしなかった。2月6日に行われたプレミアリーグ第23節、対アストン・ヴィラ戦。2人の退場者を出して敗れた前節ウォルバーハンプトン戦のダメージを引きずっていたのだろうか。メンタル面が整っていなかったのか、アーセナルの選手たちは、試合が始まってすぐの2分に失点してしまう。

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 セドリック・ソアレスがガブリエルに戻したパスのスピードが遅く、ベルトラン・トラオレにかっさらわれる。ブルキナファソ代表アタッカーは、そのまま右サイドを抉り、ゴール前のオリー・ワトキンズにパス。今季ブレントフォードからクラブ史上最高額で加入したFWは、アーセナル相手にきっちり仕事をした。開始早々にアストン・ヴィラに先制を許してしまう。

 この手痛い失点の後でアーセナルの選手たちは、強度の高い[4-4-2]の守備ブロックを自陣に築くヴィラを崩せず。試合後にアルテタ監督は「それでもチームはリアクションを示し、我々はプレーを続行してチャンスを創り続け、前進し続けてゲームを完全に支配し続けた」と振り返ったが、どちらかと言うと、ボールを持たないヴィラのペースで時計の針は進んでいった。

アルテタは固い守備を崩そうとしたが…

 ディーン・スミス監督のチームの守備の強度は極めて高かった。アーセナル側がボールをサイドに出せば、SBとSHにそのまま2枚できっちり蓋をされ、カウンターを仕掛けても帰陣が速く、かつ冷静に処理されてしまう。また、ブカヨ・サカに対しては、エズリ・コンサやジャック・グリーリッシュが激しく潰しに来た。

 アーセナルは個々の役割がはっきりした[4-2-3-1]の布陣で攻めたが、パスワークの精度を欠き、テンポは上がっていかない。パスの精度がイマイチ良くなかったのは、衝撃的なウルヴス戦の敗北+序盤の失点から来るメンタル面によるものなのか、極めて高いヴィラの守備の強度によるものなのか。おそらく、その両方が要因だろう。

 後半に入ると、前半に比べてパスが繋がるようになり、エクトル・ベジェリンやサカがシュートまで持っていく場面も増えたが、依然としてヴィラのゴールを割ることはできない。この状況に対して、アルテタ監督は興味深い「リアクション」を示す。

 59分、ワントップのアレクサンドル・ラカゼットに代えて、ピエール=エメリク・オーバメヤンを投入し、それでも状況を打開できないと、65分にはセドリックに代えてマルティン・ウーデゴーアを投入。ウーデゴーアがトップ下、サカが左SBに入るような格好だ。

 もっとも、サカは純粋なSBを務めたわけではなく、攻撃時には高い位置を取ってペペの近くでプレーし、左サイドの攻撃に厚みをもたせた。サカが上がった後のスペースは、ボランチのグラニト・ジャカが埋めた。SBを削って攻撃的なMFを投入するという、どこかペップっぽい交代策である。73分にはウーデゴーアも左に寄り、さらに後方からジャカも加わって、さらに人数を掛けてボールを回した。

 そして74分、アルテタ監督はさらに果敢な交代を見せる。負傷したトーマスに代えて、ウィリアンを投入。ボランチに代わってアタッカーを入れた。布陣をおおまかに記せば、[2-3-4-1]といったところで、2CBの前にサカ、ジャカ、ベジェリン、2列目が左からウィリアン、エミール・スミス=ロウ、ウーデゴーア、ペペ、そして最前線にオーバメヤンである。もちろん、この陣形を維持し続けるわけではなく、攻撃時にはサカとベジェリンは上がって、アーセナルはとにかく前に人数を掛けた。

ヴェンゲルとグアルディオラの混血

 このようにアストン・ヴィラ戦でアルテタ監督が見せた「リアクション」は、アーセン・ヴェンゲル風の[4-2-3-1]に、ペップ風の交代策で味付けしていくようなやり方だった。アルテタ監督は、チーム状況が好転した昨年末のチェルシー戦以来、どこか現役時代に所属したアーセナルを母体にしているように思える。だからといって、ペップ流のエッセンスも放棄していない、といったところだ。

 しかし、この超攻撃的な布陣は、形としては人目を引くようなものだったが、あまり練習では取り組んだことがなく即興的なものだったのか、選手間のパスワークの精度は欠いた。79分、82分とショートカウンターを食らって、それぞれグリーリッシュとワトキンズに決定機を与えてしまう。

 アーセナルも84分にウィリアン、サカ、スミス=ロウの3人で左サイドを崩して、決定機を演出したが、サカのマイナスのボールをウーデゴーアはダイレクトで枠の外に飛ばしてしまった。そして試合終了の笛が鳴るまで、ヴィラの選手たちの守備の強度は高く、終ぞアーセナルの選手たちはゴールを割ることができなかった。鋼の意志をスタイルで体現したスミス監督のチームに0-1で敗れ、アーセナルは2連敗。

 次のリーズ戦では、曲者のマルセロ・ビエルサ監督相手に、ヴェンゲルとペップの混血が流れるアルテタ監督はどのような「リアクション」を示すだろうか。ウルヴスに敗れるまではせっかく好調を維持してきただけに、3連敗は避けたいところだ。

(文:本田千尋)

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そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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