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バルサはやっぱり4-3-3
スペインは記録的な寒波に見舞われているという。
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首都マドリードでは50年ぶりの大雪が降り、バラハス空港の滑走路が閉鎖に。アトレティコ・マドリードの試合は、対戦相手のアスレティック・ビルバオが会場に到着できず延期となった。
さらにはヘタフェへ移籍した久保建英のデビューが期待されていた10日のエルチェ戦も翌日に延期となっている。陸路も空路も大混乱で、猛烈な寒波はサッカー界だけにとどまらず社会全体に大きな影響を及ぼしている。
とはいえスペインは地域によってかなり気候が違うため、温暖な南部アンダルシア地方の平野部に雪は降らなかった。
それでも例年以上に厳しい寒さのようだったが、降ったのはゴールの雨だった。アウェイに乗り込んだバルセロナは、ラ・リーガ第18節でグラナダに4-0の大勝。リオネル・メッシとアントワーヌ・グリーズマンが2得点ずつを奪う理想的な展開で勝ち点3をもぎ取っている。
序盤戦は不振が叫ばれたバルサはようやく本来の姿を取り戻しつつある。現在リーグ戦8試合負けなしで、その間は6勝2分。ロナルド・クーマン監督はついにチームの最適なバランスを見出したようだ。
シーズン開幕からしばらく4-2-3-1をベースに組織づくりを進めてきたものの、なかなか結果がついてこなかった。昨年12月に入って徐々に勝ち星が積み重なるようになってきて、途中で3バックも試した。
だが、行き着いたのはバルサの代名詞とも言える「4-3-3」だった。
メッシを頂点に配置し、右ウィングにウスマン・デンベレ、左ウィングにアントワーヌ・グリーズマン。そして中盤アンカーにセルヒオ・ブスケッツ、インサイドハーフは右にフレンキー・デ・ヨング、左にペドリが定着した。
純粋なストライカータイプではないメッシは、“偽9番”的に中盤まで降りて組み立てに関与する場面も多い。そうなると両ウィングは中央に絞って2トップ気味になり、配置は中盤ダイヤモンドの4-4-2のように変化する。
デンベレとグリーズマンが空けたアウトサイドのスペースには、両サイドバックが積極的に攻め上がってくる。非常にシンプルながら、選手のタレントを生かしつつ結果を追求するには最も効率的な戦術と言えるだろう。
メッシ&グリーズマンが爆発
ウエスカもアスレティック・ビルバオもグラナダも、メッシが中央で動き回る可変型4-3-3システムに翻弄された。
チームの調子が上がるとともに、中心選手たちもパフォーマンスを高めている。グラナダ戦は特に前線3人の躍動感が凄まじかった。
12分、グリーズマンは相手選手に当たってコースが変わった味方からのパスを巧みにコントロールし、素早く反転してシュート。見事な技術が光ったゴールでバルサが先制する。
35分には左サイドをドリブルで駆け上がったグリーズマンのお膳立てを受け、メッシが相手ディフェンスの隙間を巧みに射抜く技ありシュートで追加点を挙げる。勢いに乗る背番号10は42分に、針の穴を通すような精度の直接フリーキックも決め、バルサのリードを3点に広げた。
右サイドから再三の仕掛けで相手の脅威となっていたデンベレは、63分に意表を突く浮き球のラストパスで同胞のゴールをアシストした。ドリブルで突っかけると見せかけてボールをふわっと浮かせ、走りこんできたグリーズマンが左足のコントロールから素早く右足一閃。角度のないところから鋭い一撃をゴールネットに突き刺した。
「チームが成長していることを、自信をもって示すことができた。4つのゴールを決めたのは非常にポジティブなことで、これからも続けていかなければならない」
試合後、クーマン監督は難敵グラナダ相手の快勝を誇った。2得点のグリーズマンには「アタッカーはゴールで生きているようなもの。今日のアントワーヌは素晴らしかった。彼は我々にたくさんのものを与えてくれた」と絶賛した。
自信を深めるクーマン監督
早い時間帯に大量リードを手にしたことは、勝利以上にポジティブな効果をもたらしたかもしれない。
4点目の直後にメッシやデ・ヨングを下げ、73分にはペドリとデンベレも交代でピッチを退いた。彼らのような連戦でもフル稼働を続けていた主力に余裕を持って休息を与えられたことは、コンディショニングの面で今後に大きなプラス材料となるだろう。
クーマン監督も「バルサはタイトルを目指して戦うために、レオ(メッシの愛称)を必要としている」とメッシの重要性に言及したうえで、「結果のおかげで彼とペドリを休ませることができた」と交代に休養の意図があったことを認めた。
どんな時もずっとピッチに立ち続けることを好むメッシも、途中交代に対して珍しく不満をあらわにすることがなかったから、指揮官の意図をしっかりと汲み取れていたのだろう。33歳になって無理がきかなくなりつつあることも理解しているのかもしれない。
グラナダ戦で得られた成果はまだまだある。試合前のウォーミングアップでロナルド・アラウホが筋肉に違和感を訴え、急きょサミュエル・ウンティティが先発メンバーに入って90分間プレーした。
長くひざの負傷に悩まされてきたフランス代表センターバックは、今季の公式戦3試合で合計55分間しかプレーしていなかったが、約7ヶ月ぶりの先発起用で健在ぶりをアピールした。序盤こそウォーミングアップ不足からか重さが見られたものの、尻上がりに調子を上げて後半は盤石の出来。ジェラール・ピケが負傷離脱中のディフェンスラインに頼もしい戦力が帰ってきた。
「1人の選手に依存するのではなく、チーム全体のメンタリティも重要になる。全員が元気で最高のコンディションであれば、タイトル争いができるだろう。選手間の距離が離れていると難しくなるが、今週はとても良かったと思うし、結果が我々に自信を与えてくれた」
クーマン監督は暫定3位まで浮上したチームに希望を感じているようだ。勝利を重ねるために最適なシステムを見出し、メッシやグリーズマンらも完全復活、さらに連戦を見据えた選手起用もできて、ウンティティに不安がないことも証明された。
今週はミッドウィークからスーペルコパ・デ・エスパーニャに挑む。レアル・ソシエダとの準決勝を勝ち抜き、週末の決勝も制して今季初のタイトル獲得となるだろうか。自信を深めるバルサの真価が問われる最初の関門は目の前にそびえ立っている。
(文:舩木渉)
【了】