23番目ではなかった大久保嘉人
5月12日、いよいよW杯のメンバー23人が発表された。最も会場からどよめきが起こったのはザッケローニ監督が“オオクボ”の名前を読み上げた時だ。
「できるだけ自分たちのサッカーをできる基準で選んだ」
そう語るザッケローニ監督の基準を象徴するのが大久保嘉人の選出だった。世間的には“サプライズ”ではあるし、12年のアイスラインド戦が唯一の招集だった選手がいきなり最終メンバーに選らばれるというのは驚き以外のなにものでもない。
ただし、ザッケローニ監督の基準に照らし合わせれば、彼の選出は理にかなっている。もちろん「就任当初は怪我に悩まされていたイメージがあるが、この1年半のパフォーマンスはすばらしい」と語る通り、昨年のJ1得点王であり、今季もゴールを量産する得点力の部分が高く評価されたのは間違いない。
しかし同時に、彼が持つユーティリティ性がメンバーを構成する上で非常に重要なピースとなった。筆者は、大久保は“23番目”の枠ではなかったと想定している。むしろ彼が複数のポジションと役割にはまることで、当落線上の候補をうまく整理できたのだ。
アタッカーの人数は8枚となっており、基本的には4つのポジションを8人でまかなう構成だが、本職のトップ下は本田のみで、ウィングが5人となり、バランスは良くない。大久保のメインポジションをウィングとして想定すればそうだが、彼をトップ下に入れてしまうと各ポジションに2人という綺麗なバランスでおさまる。
【次ページ】ザックが4年間求めた“本田の代役”