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Jリーグ 4年前

次に、「ポジショナルプレーの指導」とは? すべてはゴールを奪うため【ポジショナルプレー~指導法~・後編】

ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、来季からレノファ山口の指揮官として現場に帰ってくる「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開した渡邉晋氏初の著書『ポジショナルフットボール実践論』から、「ポジショナルプレー」とは何か? に迫った「渡邉式ポジショナルプレー~指導法~」を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:渡邉晋)

text by 渡邉晋 photo by Getty Images

選手がピッチでイメージを共有できる

渡邉晋
【写真:Getty Images】

 2016年は3バックにする以前から、局面で数的優位を作り出してボールを前進させるビルドアップを実践してきました。CBと相手FWが2対2の同数なら、ボランチが下りて数的優位を生み出すわけですが、このボランチの動きは、プレスをかけようとする相手FWを困らせています。

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 さらに最終ラインで空いた1人がボールを中盤へ持ち運べば、相手は誰が対応するべきか迷い始めます。あるいは、その場所を使わなかったとしても、そこに相手が守備のパワーを割いたのなら、どこかほかの場所で数的優位が生まれているはず。そのようにして《良い立ち位置》がチームの利益になっていることを、全員が理解し、共有することが大切です。

 そして、最終的には誰かが完全にフリーで、なおかつ、ゴールに向かってスピードに乗った状態でボールを引き出していく。究極の理想は、相手GKと2対1になることです。それを外せば最終的にゴールマウスに対して1対0。無人のゴールにボールを入れるだけという状況です。

 もちろん、それは理想なので、相手GKと1対1の状況も、あるいは、相手CBと1対1の状況も、チームにとっては充分な利益です。そこからの逆算として、まずはチーム全体で《良い立ち位置》を取り、相手を困らせることが必要になるわけです。

 実はここまで詳しく、選手に言葉で説明したことはありませんでした。それはなぜかと言うと、言葉ばかりになって机上の空論になるのは絶対に嫌だったから。何より、選手がピッチでイメージを共有できたからです。

《立ち位置》の原則に基づくということ

 たとえば、トレーニング中によく起きていた現象で言えば、シャドー、あるいは1トップが《良い立ち位置》を取るからこそ、相手DFが中央に集まり、最終的には外からWBがフリーでスピードアップできます。

 相手を困らせ、数的優位を生み出し、ゴールに迫る。これは選手にとっては非常にわかりやすい絵であり、トレーニングやゲームを行うことで自然に出てくる現象となればメリットを体感しやすかったと思います。付け加えるとすれば、1トップ・2シャドーと両WBを置く[3-4-3]は、立ち位置のメリットが初期配置の時点で明確に見えやすいシステムでもありました。

 このように、選手とはプレーしながらイメージを共有しましたが、言葉で紐解くとすれば、《良い立ち位置を取る》ということが大前提としてあり、「良い立ち位置とは、1人で2人以上を困らせる立ち方のこと」であり、それらはすべて「ゴールを奪うため」にある、と整理することができると思います。

『ポジショナルプレー』の指導とは、このような《立ち位置》の原則に基づいて指導することであると私は解釈しています。

(文:渡邉晋)

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『ポジショナルフットボール実践論 すべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる』


定価:本体1700円+税

<書籍概要>
渡邉晋は《切る》《留める》《解放》など独自の言語を用い、ベガルタ仙台に「クレバーフットボール」を落とし込んだ。実は選手を指導する際、いわゆる『ポジショナルプレー』というカタカナ言葉は一切使っていない。
にもかかわらず、結果的にあのペップ・グアルディオラの志向と同じような「スペースの支配」という攻撃的なマインドを杜の都に浸透させた。フットボールのすべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる――。
ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開する。

詳細はこちらから

【了】

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