イベントには地元の力士も登場
第7節ベガルタ仙台戦の試合前、なんとも川崎フロンターレらしい企画が開催された。
「Thank You TODOROKI さよならイベント」と銘打ったこの企画は、昨季シーズン後から立て替え工事が始まっている等々力競技場の旧メインスタンドを、サポーターが感謝を込めてハンマーなどで取り壊していくというものである。3月で仮設メインスタンドの工事もひと段落し、本格的な解体作業に入っていく前に「破壊式」を行ったというわけだ。
この日、朝から集まった参加者は約80名。
「川崎フロンターレ建設部」のロゴの入った特製ヘルメットをかぶると、建設会社立ち会いのもと、解体の始まっている旧メインスタンド内を見学。選手達が使用していたロッカールームの壁に参加者が思いを書き込むと、持参したつるはしやハンマーでコンクリートの応援席を壊していった。
この破壊式には、地元・春日山部屋の力士・春日国も飛び入りゲストとして参加。壁の打ち抜き作業では自慢の張り手を披露し、サポーターの大歓声を浴びていた。ドリル体験などもあり、工事現場らしからぬ楽しさに包まれ、破壊式は無事に終了となった。
つるはし持参での破壊式
「正直、不安でしたよ。やはり工事現場ですから。ケガもなく終わって本当によかったです」
そう言って安堵の表情を見せていたのは、今回のイベントの発案者でもあるフロントスタッフの谷田部然輝だ。
毎回他の追随を許さないユニークなプロモーション企画で知られている川崎フロンターレだが、スタジアムの取り壊しにサポーターを参加させてしまおうという今回の発想も相変わらず秀逸である。この破壊式はどういう経緯で生まれたのか。
「推進する会(等々力陸上競技場の全面改修を推進する会)から『何かフロンターレらしいことをやろうよ』と言われたことですね。他の企画案ですか?(等々力競技場で)キャンプするとか宿泊してしまうとかいろいろありましたよ。その流れで、『ダイナマイトで爆破できないの?』などと話していたら、こういう形になりました」
さすがにダイナマイトは無理だったが、つるはしやハンマーを持参して破壊してしまおうという企画が発表されると、サポーターの反応は予想以上の好感触だった。谷田部は苦笑する。
「みんな『破壊式』という名前ばかりに目がいってましたね。たぶんベルリンの壁を壊すときのイメージがあったかもしれない。でも今日やってわかった通り、つるはしを持参しても、なかなか壊れないんですよ(笑)。
それにこの企画で僕らが伝えたかったのは、選手の使っていたロッカールームの壁に自分の名前を書いて、それがずっとモニュメントとして残るという部分なんですよ」