短期間で大きく変わる英国人監督の需要
2016年夏のこと。その数シーズン前までプレミアリーグで指揮を執っていた、アラン・カービッシュリーが国産監督の行く末を嘆いた。
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「自分でチームを昇格させる以外に、英国人がプレミアリーグで監督を務めるチャンスはなくなってしまいそうだ」
そう語った東ロンドン生まれの元監督は、チャールトン(現3部)を率いた15年間に2度の昇格と6年連続のプレミア残留を果たし、続くウェストハムでも、シーズン途中の就任で起死回生の降格回避と翌シーズンのトップ10フィニッシュを実現していた。
ところが、経営陣との摩擦で地元クラブを去ったあとは現場復帰が叶わないまま。ウェストハムのオーナーがアイスランド人だったように、所属クラブの半数以上が外資の手に渡っていたプレミアでは、外国人オーナーにとっては知名度もこだわりも乏しい英国人監督が職にあぶれるようになっていた。
その後も、外資参入は続いている。2020/21シーズンを見ても、英国籍の個人または組織の所有といえる数は、全20チームの3分の1に満たない。しかし、プレミア監督としての英国人を取り巻く状況は、短期間で大きく変わった。
就任2年目のブレンダン・ロジャーズは、昨季5位のレスターを率いて今季はヨーロッパリーグも戦っている。シェフィールド・ユナイテッドを13年ぶりのトップリーグで堂々の9位に導いたのはクリス・ワイルダーである。ブライトンは、サッカーで知られる地域ではない国内南東岸のクラブにして、グレアム・ポッター体制下での攻撃的スタイルが静かに注目を浴びている。
モイーズも復活。プレミアリーグで何が?
古豪アストン・ヴィラは、プレミア復帰1年目の昨季最終節で劇的に残留を実現したディーン・スミスの下、今季は90年ぶり最高の4連勝スタートを切った。昨季10位でプレミア復帰5年目のバーンリーは、ショーン・ダイチのチームとして過去50年間で最も長いトップリーグでの日々を送っている。
1シーズンのみでプレミアに返り咲いたフラムの監督は、3年前に現役を退いたばかりのスコット・パーカーだ。イングランド代表の他にチェルシーでもチームメイトだったフランク・ランパードは、その古巣で今季が監督2年目だ。
キャリアの蘇生に成功した古株もいる。1992/92シーズンに始まったプレミアの歴史でも最年長監督のロイ・ホジソンは、クラブ史上最長のトップリーグ定着期にあるクリスタル・パレスにさらなる安定感を提供中。スティーヴ・ブルースも、補強に消極的なオーナーがクラブ売却にも失敗したニューカッスルを、「無風地帯」の13位に留めて就任2年目を迎えている。昨季半ばにデイヴィッド・モイーズ体制に切り替えたウェストハムには、「上昇気流」という言葉が用いられるまでになった。
モイーズ就任の1年前、サウサンプトンがマーク・ヒューズを解任して、オーストリア人のラルフ・ハーゼンヒュットルを監督に迎えた時点では、プレミア内の国産監督はわずか5人となっていた。それが今季は、20チームの半数が英国人に率いられている。これは、一時的なトレンドに過ぎないのか? 単なるオーナー陣の気まぐれか? それとも、雇用方針に基づく持続性のある変化なのだろうか?
(文:ドミニク・ファイフィールド、訳:山中忍)
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