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立ち上がりの攻防
第14節を終え9勝5敗で2位につけていたレスターと、同7勝3分3敗(1試合未消化)で3位につけていたマンチェスター・ユナイテッド。26日に行われたこの両者による上位対決は、期待を裏切らぬ素晴らしいゲームとなった。
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2014年9月以来レスターに負けていないユナイテッドは、お馴染みの4-2-3-1でスタート。負傷したアーロン・ワン=ビサカの代わりにヴィクトル・リンデロフが右サイドバックに入り、スコット・マクトミネイとフレッジが中盤底2枚を形成している。
そのユナイテッドは立ち上がり、ホームチームの守備に苦戦を強いられた。
レスターはボール非保持時に4-4-2の形を取る。ジェイミー・ヴァーディーはエリック・バイリーとマクトミネイの間に立ち、ジェームズ・マディソンはハリー・マグワイアとフレッジの間に立つ。こうして、最終ラインからのビルドアップを限定させていたのだ。
サイドバックにボールが流れれば、両サイド、左ハービー・バーンズと右マーク・オルブライトンが積極的にプレスをかける。ユナイテッドはこの強度に手を焼き、なかなかボールも人も前進させることができなかった。
8分の場面では、ビルドアップを遮断されGKダビド・デ・ヘアへバックパス。ボールが少し嫌なバウンドをしていたことで守護神の処理が中途半端となり、深い位置でレスター側にカットされあわやといったシーンを招いている。ユナイテッドがボール回しに苦しんでいたことがよく分かるシーンだった。
しかし、レスター側に隙が全くなかったわけではない。ユナイテッドが前へボールを運べる条件はもちろん存在した。
レスターの守備を回避するうえで重要となるのはSBの働きだ。先述した通りユナイテッドのSBに対しては両サイドハーフが強く当たりにくるが、そこをうまくかわしヴァーディーやマディソンの背後を取るダブルボランチにボールを預けられれば、必然的にラインを押し上げることが可能となった。
ユナイテッドのボランチが前に出られれば、レスター側のボランチがつり出される。そうすれば、今度は攻撃の生命線であるブルーノ・フェルナンデスを使いやすくなる。中央をパトロールするウィルフレッド・ディディの存在は厄介だったが、ユナイテッドもしっかり工夫はみせていたと言えるだろう。
21分の場面ではリンデロフが寄せてきたバーンズを回避し下がってきたアントニー・マルシャルへパス。そして反対サイドのルーク・ショーがタイミングよく上がり、対峙するオルブライトンを引き離す。そこへパスが通り、レスターを押し込むことに成功していた。
気になる選手個々の守備対応
ユナイテッドは23分に先制に成功している。マーカス・ラッシュフォードの得点だったが、少しラッキーな形だった。
しかし31分、バーンズに強烈な左足ミドルを突き刺され、前半のうちに同点に追いつかれてしまった。バーンズにボールが入った際、マクトミネイは対峙する選手の利き足を警戒しすぎたのか、強く寄せ切ることができなかった。
前節のリーズ・ユナイテッド戦で2得点1アシストを記録し勝利の立役者となったマクトミネイだが、この日は失点シーンのように曖昧な対応をみせてしまうことが少なくなかった。
最も多かったのはレスターのビルドアップ時、フレッジやリンデロフとの間を使われてしまうことだ。ユナイテッドは基本的にB・フェルナンデスがプレスのスイッチを入れハイラインで相手を捕まえに行くが、マクトミネイの「次に移るプレー」が遅れてしまうことがしばしば。38分の場面はまさにそこを突かれている。
ボールを貰いに降りてきたバーンズを警戒したマクトミネイはサイドへ流れマーク。ここまでは良かったのだが、その後相手のボールが下がると気を緩めてしまったのか、ジョギングしてしまった。するとマクトミネイが出たことで空いたスペースをマディソンが利用。フレッジのカバーは間に合わず、背番号10にボールを通され押し込まれている。
こうした選手個々の守備対応で気になるシーンは何度かあった。オープンな展開となった後半、レスターに奪われた同点弾も、ある選手の行動一つで防げたかもしれない。
2-1リードで迎えた84分。ユナイテッドはレスターに押し込まれ、右サイドに展開される。この時タッチライン際に張ったジェームズ・ジャスティンに対しフレッジとショーが寄せており、ハーフスペースにアジョセ・ペレスがいるという状態だ。
A・ペレスはフリーだったのだが、ペナルティーエリア前にいるポール・ポグバはその存在に気付いていた。しかし、自身でマークに付くのではなく、ジャスティンに寄せているショーにマークに付くよう指示している。
ただ、ジャスティンを警戒しているショーはポグバの手で行っている指示に気づかない。当然だ。そのため、A・ペレスはフリーのままボールを引き取り、最後はヴァーディーの得点を演出している。
ポグバがA・ペレスのマークを引き受けて戻れば防げた失点であったことは間違いないが、この日は高いポジションで途中出場した背番号6にそこまでの意識はなかったのか。少し悔やまれるシーンだった。
勝てた試合だったが…
結局2-2で終えることになったユナイテッドだが、振り返れば勝てた試合だったと感じる。
ラッシュフォードは1点を奪ったが、もっと決めていても不思議ではなかった。立ち上がりにはいきなりフリーでのシュートチャンスを迎えたが外してしまい、後半にはGKカスパー・シュマイケルとの1対1をモノにできなかった。FWとしてこれだけのビッグチャンスを迎えながら1点に終わったのは反省すべきだ。
マルシャルはボールを受ける動きよりもボールを受けた後の動きで魅せる選手。ワントップではなかなか持ち味を出すことはできなかった。過去を変えることはできないが、スタートからエディンソン・カバーニを起用していれば、結果は変わったかもしれない。
ダニエル・ジェームズはスピードこそ魅力だが、少しでも強度の高い相手にぶつかると面白いように何もできなくなってしまう。ドリブルでの推進力があっても、その後のパスで精度を欠くなど、微妙なパフォーマンスに終始した。
先発したユナイテッドの前線3人が迫力不足を露呈する中、レスターのエースは訪れたチャンスをしっかりとモノにしている。総合的に見ればアウェイチームが勝ち点2を落としたのは、決めきる力があるかどうか。こうした単純な「差」が出たことが理由と言えるだろう。
しかし、B・フェルナンデスは話す。「ドレッシングルームで幸せな気分になれた。みんな悔しがっていたし、レベルアップしなければと話していたからね」と。
また、オーレ・グンナー・スールシャール監督も「選手たちが残念がる姿を見ることができ、満足している。この勝ち点1は大きいものになるかもしれないが、我々はさらに大きな目標、達したい基準を持っている」と話す。
勝てた試合で勝ち点1止まり。ただ、この悔しさが次戦以降に繋がっていくのかもしれない。
(文:小澤祐作)
【了】