絶対に落とせなかったラツィオ戦
本当に感動的なセレモニーだった。地域侮蔑行為により入場禁止処分を食らったゴール裏以外、全てのエリアを埋め尽くした64000人の観客は誰一人として帰らず、サン・シーロのラストゲームとなったハビエル・サネッティの現役引退セレモニーを見守った。
「僕はこのユニフォームを守ることを誇りに出来た。僕はインテルを愛することを学んだし、これからも愛し抜く」
その言葉通り、体が許す限り全力疾走を続けたことはみんなが知っている。カピターノとの惜別に際し、多くのファンがスタンドで実際に涙していた。そしてそれは、チームメイトたちも同じ。スピーチ中、スクリーンに大写しになった長友は、目に涙を溜めていた。
「負けていたら本当にこれほどいいセレモニーは出来ていなかったと思うので、勝ったことにホッとしています」。うっかり試合の内容を忘れそうになるが、ラツィオ戦はそういった意味で絶対に落とせなかったのである。
前節は不甲斐ない内容でダービーに破れ、マッツァーリ監督に対してはツィッターで解任運動も起こるほど。破れたらEL進出をフイにし、なによりこの夜をぶち壊しにしてしまうところだった。しかしインテルは、見事に汚名返上を果たした。それも相当に、説得力のある内容でだ。
開始2分こそセットプレーで失点をするが、コバチッチの正確なスルーパスからパラシオが一転返した後は、前節の醜態からは見違えるほど流麗なパスワークを披露した。中でも長友とコバチッチが左サイドで見せた連係は、チームとしての欠点の修正と向上を明確に物語るものだった。
前節のミラノダービーでは効果的な攻撃が余り出来ず、「早いタイミングでボールが欲しかった」と長友は語っていた。だがこの日はスペースへ走り込むと、即座にコバチッチから正確なパスが付けられ、トップスピードでサイドを破ることが出来た。