フットボールチャンネル

岡崎慎司のPK獲得が勝利につながらなかった理由とは? 降格圏のウエスカ、レバンテ戦で見えた収穫と課題【分析コラム】

現地22日にラ・リーガ第15節が行われ、ウエスカはレバンテと1-1で引き分けた。日本代表FW岡崎慎司はウエスカの1トップとして先発出場し、80分までプレーした。そして先制点のきっかけとなるPKを獲得し、改めて重要な存在であることを証明している。しかし、勝利は手にできず。降格圏で苦しむチームが抱える課題とは一体何なのだろうか。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

岡崎慎司、バイシクルシュートでPK獲得

岡崎慎司
【写真:Getty Images】

 ボールを視認するのも難しいような濃霧のなかで、チームとしての強みと弱みが浮き彫りになった。

【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 現地22日にラ・リーガ第15節が行われ、岡崎慎司が所属するウエスカはレバンテと1-1で引き分けた。

 ウエスカを率いるミチェル監督は試合後、「私には引き分けに見えなかった」と悔やんだ。両チームともにロングボールの多い展開のなか、31分にハビ・オンティベロスのPKで先制し、1点リードで前半を終えたところまでは主導権を握れていた。

 しかし、後半のウエスカはシュートを2本しか放てず。前半は9本ものシュートを打っていたのだから、流れが悪くなったのは明らかだ。そして53分にかつての仲間だったゴンサロ・メレロにゴールを決められ、ドローに持ち込まれた。

 確かに指揮官が「1-0というスコアよりもうまくいっていた」と振り返った前半の内容はよかった。ボールを奪うと、すぐにサイドへ大きく展開。両ウィングのダビド・フェレイロとオンティベロスがドリブルなどで打開し、中央の岡崎めがけてクロスを送っていく。

 もともとクロスの多いチームではあったが、レバンテ戦では90分間で37本ものクロス爆撃を浴びせた。27分には左サイドのクロスを起点に、岡崎がPKを獲得する。相手の処理ミスに素早く反応した日本代表FWがバイシクルシュートを放つと、ボールはブロックに入った相手ディフェンスの腕に当たった。

 最近のウエスカではスタメンが固定化してきており、前線3トップには右からフェレイロ、岡崎、オンティベロスが主に起用されている。中盤はペドロ・モスケラをアンカーに配置した逆三角形で、ミケル・リコとボルハ・ガルシアが定着した。

 前線に助走をつけてジャンプし相手DFの上からヘディングを叩き込むような選手はいない。だが、クロスに対するアプローチやゴール前での駆け引き、少々危険でも体を張る勇敢さを備えた岡崎に対してサイドから速いボールを送り込んでいくのは理にかなっていると言えよう。

 展開力に長けるモスケラを起点に配球し、突破力のあるオンティベロスやキック精度の高いフェレイロがサイドからクロスを上げる形も確立されつつある。ミケル・リコとボルハ・ガルシアも豊富な運動量で攻守に中盤を活性化し、時には自らゴール前に入っていくタイミングも心得ている。

セットプレーが浮上への鍵に

 だが、なかなかゴールに結びついていないのが現状だ。ウエスカはリーグ戦15試合を終えて13得点、岡崎もいまだ1得点と苦しんでいる。最近出場機会を減らしているラファ・ミルがチームのトップスコアラーで3得点、オンディベロスはレバンテ戦のPKを含む2得点だ。昇格組の宿命ともいうべきか、クロス中心のチャンスメイクが形になりつつあるなかで絶対的な得点源の不在は痛い。

 一方、チームの弱点も改めて露呈した。ウエスカの大きな課題はセットプレーの守備に違いない。今季の23失点のうち、セットプレーからはPK4本を含む11失点を喫している。そしてレバンテ戦でも53分にコーナーキックのこぼれ球を押し込まれ、ゴンサロ・メレロに同点弾を許した。

 ミチェル監督もセットプレー守備の脆弱さについて「戦略に懸念を抱いている。マークにミスはなかったと思うが、こぼれ球を拾われてしまった」と言及した。マンツーマンで相手選手のマークについているものの、ボールが頭上を通り過ぎると足が止まってしまい、危険なスペースを空けてしまうのが失点の大きな要因だった。

 マークのつき方を変えるのか、集中力のキープをより強く意識づけるのか、あるいはそもそもの戦略を見直すのか、改善方法はいくつかある。リーグ最多のセットプレーからの失点を減らせれば、もう少し楽な展開の試合も増えていくはずだ。同じくリーグ最多の9引き分けと、勝ちきれない試合が多い原因もセットプレーにあるかもしれない。

 逆に「(レバンテ戦では)10本もコーナーキックがあったのに、そこから1点も決められていない。攻撃面でも改善すべきポイントだ」とミチェル監督が嘆いたように、攻撃のセットプレーにも伸びしろがある。フリーキックやコーナーキックから試合の流れに関係なく得点できるオプションを手にすることができれば、さらに戦いやすくなるのは間違いない。

 とはいえ流れの中からゴールに向かうための道筋は徐々に整備されてきた。ウエスカは決してカウンター狙い一辺倒ではなく、自分たちから積極的にゴールへ向かって仕掛けていく姿勢は好印象で、個性ある選手も揃っている。岡崎も正確なポストプレーやクロスへの飛び込み、そして献身的なプレッシングなどで存在感を発揮し、いまではチームに欠かせない選手の1人になった。

 だが、一方で課題が山積みなのもレバンテ戦でよくわかっただろう。特に守備面で自壊しかねない要因を、最初に取り除いていかなければならない。ウエスカはいまだ1勝しか挙げられておらず、19位に沈んでいる。1部リーグ初挑戦で、一度も降格圏から抜け出せないまま2部降格の憂き目に遭った2シーズン前の屈辱を繰り返すわけにはいかない。

 ミチェル監督はウエスカを残留圏内に浮上させられるだろうか。幸いにも次の試合まで1週間ある、このタイミングを利用しない手はない。年明けすぐの1月3日にはバルセロナとのビッグマッチも控えている。

(文:舩木渉)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!