エバートンの守備の狙いは?
さて、ここからは守備における彼らの「狙い」と「優先順位」についてです。いわゆる4つの局面を考えたとき、守備への切り替えにおける振る舞いを見ることで守備時におけるチームとしての姿勢や意気込みを知ることができます。前から激しく潰しにいくのか、それとも必要以上に飛び込まずカウンターを受けないように自重するのか。
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エバートンは攻撃で相手を押し込んだ時、前述した[2‐3‐5]に配置することでリスクマネジメントを手厚くしている印象が強いのですが、ウェスト・ブロムウィッチ戦で前半に喫した失点では前にかける人数が増えた中で不用意な失い方をし、一気にゴール前まで運ばれてしまいました。
最終ラインに残っていた選手も前に潰しにいくのではなく、相手のスピードを吸収するような対応を見せたあたり、より確実な対応を取る意識が垣間見れます。実際、私が個人で契約しているInStat社のデータによると、相手陣におけるボールリカバリーの数字は軒並み低く、相手より上回った試合は6試合中2試合しかありません(そのうち1試合は相手選手が1人退場したウェスト・ブロムウィッチ戦)。切り替え時を含め、ハイプレスをかけることがチームの「優先順位」の上位には来ていないことを確認することができます。
しかし、試合の中でハイプレスを試みる時もあり、実際ブライトン戦ではショートカウンターから3点目を奪っていますが、総じて、このハイプレスが機能しているとは言い難いのが現状です。
それはなぜか。まずは3トップのプレスのかけ方が定まっていないことが一番の問題点であると私は考えます。センターフォワードは相手のどこにプレスに行くのか、もしくは行かないのか。ウイングはどの高さからどのようにプレスをかけるのか。それに伴い、中盤の3枚をどこまで押し出し、最終ラインはどこまでスライドして出て来れるのか。このあたりはまだ不明確であると言わざるを得ません。ウェスト・ブロムウィッチ戦の前半立ち上がり、リヴァプール戦、サウサンプトン戦では明らかに後手を踏むシーンが見受けられました。
優先順位として上位にこないのであれば…
しかし、ここで重要なのは、チームとしてこの現象をどう捉えるかなのです。「優先順位」として上位に来ないプレーであるのならば、そこに固執する必要はないでしょう。高い位置でボールを奪えればそれはそれで良い。しかし、相手にゴールを割らせないということが最重要であればそこを強化すれば良いのです。
事実、リヴァプール戦まではクロス対応に難が見られましたが、インターナショナルマッチウイーク明けのサウサンプトン戦ではディフェンシブサードでの安定感が高まっていました。前半にスローインからの拙い対応で失点をするなどまだまだ改善の余地はありますが、アンチェロッティ監督はまずこの部分の修正に取り組んだであろうことは容易に想像することができます。
最終ラインが下がってしまうという点は気になりますが、逆に言えば、相手を引き込み、3トップのカウンターを活かすことにも繋がります。サウサンプトン戦にリシャルリソンが出場していればまた違った結果になったかもしれません。6試合を終えての失点数が9(原稿執筆時点)というのは決して優れた数字ではありませんが、この先まだまだ改善され上向いていく可能性を感じています。
(文:渡邉晋)
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