ソシエダに良さを出させなかった前半
イマノル・アルグアシル監督率いる好調レアル・ソシエダは、今季ラ・リーガで初めて複数失点を喫した。内容が特別悪かったわけではない。ただただ、ホームのバルセロナがいつにもまして強かった。
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ソシエダ戦の立ち上がりから、バルセロナのイレブンは普段とは違う雰囲気を漂わせた。攻守の切り替えが素早く、パスが面白いように回る。全体的に躍動感があり、早い時間から相手を大いに苦しませていた。
ソシエダは序盤、4-1-2-3で守ってきた。後方から繋ぐバルセロナに対し、高い位置から捕まえに行く。しかし、ホームチームはその守備を面白いようにヒラリとかわし続けていた。
9分の場面では、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンからダブルボランチの前まで降りてきたリオネル・メッシにパスが通り、DF二人を引き付け、プレスを回避している。この時点で最終ライン4人で守っているソシエダに対し、バルセロナは5人で攻めを展開。最後はペドリのビッグチャンスを作った。
テア・シュテーゲンからの中距離パスがメッシに入り、そこから大きく展開するという形は、この試合で何度も見られたものだった。背番号10は不調と言われているが、それでもボールキープ力は並外れたものがある。対峙する選手からすると、素早く寄せられはするが、奪いきるのは容易ではなかった。
ソシエダは途中より守備時のシステムを4-3-1-2へと変更している。よりミドルサードの警戒を強めた形と言えるだろう。それでも、バルセロナは捕まらなかった。中央は確かに人数が集まっているが、その分サイドバックは空きやすくなる。そこへパスを預け、他の選手もうまく絡むことでボールも人も前進させることができていた。
なかなかプレスがハマらないソシエダは必然的にラインが下がってしまい、バルセロナに何度も深い位置への侵入を許している。ゴール前ではコンパクトな陣形を築いていたのは事実だが、それでも攻略されてしまう場面が目立った。完全に追い風が吹いているバルセロナは、どうにも止まらなかったのである。
その中でソシエダが先制したのは少々意外だったが、バルセロナはその後すぐにジョルディ・アルバが得点、前半終盤にはフレンキー・デ・ヨングも点を奪い、2-1で45分間を終えている。ソシエダはほとんど良さを出せなかった。
選手交代でリズムが崩れたが…
「前半は今シーズン最高だったと思う。ファンがいない中でプレーするのは簡単なことではないが、チームを誇りに思うよ」。
試合後にJ・アルバが話した通りこれ以上ない前半を過ごしたバルセロナは、後半に入ってもペースを緩めることなく、ソシエダを襲った。その中で何度か決定機も作っているなど、早々に勝負を決めてもおかしくはなかった。
3点目をなかなか奪えず、疲労の蓄積やソシエダが前半よりも前からプレッシャーを与えたこともあり、時間が進むにつれバルセロナは守備に回る時間が増えた。しかし、メッシはしっかりとパスコースを限定しながらプレスをかけ、それに応えるようにアントワーヌ・グリーズマンやマルティン・ブライスワイト、ペドリも的確なポジションを取る。センターバックのロナルド・アラウホが前に出れば、デ・ヨングがその穴を埋める。意識を高く保ち、隙を与えなかった。
しかし、選手交代を機にソシエダに決定機を作られる場面が増加。交代選手からすると、リズムの良かったチームへ途中から入り、同じテンポでいきなりプレーするのはかなり難しかったため、攻守のバランスは崩れてしまった。65分から試合終了まで実に9本のシュートを浴び、わずか1本しかシュートを放てていないというデータも出ている。
それでも、アレクサンダー・イサクの決定機をテア・シュテーゲンがファインセーブで凌ぐなど、ホームチームは最後まで耐えた。“今までで一番の内容“だった前半で奪った2点が大きく、今季2度目の連勝を飾っている。
グリーズマンの重要性
この試合では、グリーズマンの重要性を確認することができたと言えるかもしれない。
ソシエダ戦で奇抜なヘアスタイルを披露したフランス人FWは、決定機を3度外している。そのうちの1本でも決まっていれば、後半の展開はもっと楽なものとなっていただろう。
しかし、それ以外のプレーはほぼパーフェクト。上記した通りFWとして多くの決定機を外しているため大きな評価はできないが、逆に無得点だからといって低評価にすることもできない。背番号7の貢献度は、そんな単純なものではなかった。
この日の最前線にはメッシが入っていたが、彼はいわゆる偽9番。中盤に降りてボールを引き受け、ゲームを組み立てる仕事を淡々とこなしていた。
そのメッシの空けたスペースを効果的に使っていたのが、グリーズマンだ。ボールに関与できる、あるいはフィニッシュに繋げられるポジショニングの良さで違いを生み出し、ソシエダDF陣を大いに困らせている。決定機を創出できたのは、グリーズマンのこうした姿勢が要因と言っても過言ではなかった。
守備での貢献度も高く、メッシやペドリがスプリントしてボールホルダーにプレッシャーを与えれば、グリーズマンも彼らの働きが無駄にならぬように連動してパスコースを潰しに行く。こうすることでソシエダのビルドアップを阻止。相手の攻撃を遅れることはもちろん、中盤より後ろの選手を「整備」させる意味でも、地味だが効果的なプレーだった。
57分の場面では、自陣深い位置へ戻り、ボールホルダーと自分の距離が近づいた瞬間にギアを上げてタックル。ノーファウルでボールを奪い、カウンターに繋げ、敵陣でファウルをもらうという、素晴らしい一連の動きだった。
グリーズマンのこうした「守備精度」の高さは、同選手との交代で入ったフランシスコ・トリンコンと比べると一目瞭然だ。後者はまだまだ隙だらけであるが、前者は非常に器用ということが、このソシエダ戦だけでも十分わかる。メッシという存在いるということを考えても、やはりグリーズマンは貴重な戦力だ。
データサイト『Who Scored』によるレーティングは「6.9」で、攻撃陣の中ではメッシに次いで2番目に高かった。ハイライトだけでは決定機を外しまくった選手に映るかもしれないが、90分間の中で好印象を抱いた人は少なくなかったはずだ。
(文:小澤祐作)
【了】