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セリエA 4年前

冨安健洋にすべての責任はあるのか? ボローニャ大量5失点、難敵ローマに“壊されて”しまった理由とは【分析コラム】

セリエA第11節、ボローニャ対ローマが現地時間13日に行われ、1-5でアウェイチームが大勝を収めている。日本代表DFの冨安健洋はこの日もフル出場。しかし、ロメル・ルカクに大苦戦した前節に引き続き、厳しい結果となってしまった。なぜ、ボローニャの守備陣はズタズタに壊されてしまったのだろうか。(文:神尾光臣【イタリア】)

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

冨安にとっては前節に引き続き厳しい結果

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 前半を終了して1-5。ボローニャ対ローマの一戦は、事実上前半で終了した。前節、インテルのFWロメル・ルカクとのマッチアップに苦しみ、失点に絡んだセンターバックの冨安健洋にとっては、またも厳しい結果となってしまった。

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 ローマの前線にいるのは、フィジカルが卓越している上にゴールセンスも技術も高いエディン・ジェコ。セリエAの最高峰にいるストライカーの一人である彼を軸に、前線が柔軟なポジションチェンジを繰り出して攻めてくる強豪の攻撃に対し、冨安はまたも防波堤となれなかった。結果を見れば、そんなざっくりとした評価も可能だ。

 しかしこの日においては、彼一人に責任を負わせるのは酷だ。ルカクとのデュエルで刺し負けた面が目立った前節とは違い、チーム全体が不出来だった分の割を食ってしまった印象が強かった。

 前線で、中盤で、またサイドで、ボローニャの組織守備はローマを前に全く機能しなかった。そんな状態だと、ディフェンスラインにはどれだけ負担がかかり、どれだけ不安定になるのか。高くポジションを取り攻撃的に行くラインの中心となって動く冨安が直面する、チームの戦術的な課題が浮き彫りになった一戦となった。

 この日のディフェンスラインは、前節の3バックから4バックに戻されていた。左サイドバックには新型コロナウイルス感染検査で陽性となったアーロン・ヒッキーではなく、イブラヒマ・エムバイェが起用されていたのだが、基本的な機能は変わらない。

 高くラインを押し上げて、前線と中盤がタフにプレスを掛けるのを助けていく。冨安自身は積極的に高めのポジションを取り、マッチアップする選手に対しては主に予測をベースにしたインターセプトを狙う。つまりゴール前に引くのではなく、前からボールを奪っていくというやり方である。

 だが、これが機能するのは前のプレスがはまることが前提だ。そしてローマに対しては、これが全く機能しなかった。流動的な連係を仕込んでいくことに定評のあるポルトガル人監督パウロ・フォンセカ就任2年目、流麗なポジションチェンジをからめたパス回しを随所でされて、あっさりサイドや中央を破られた。それが5失点を喫した構図だった。

どのように5点を奪われてしまったのか

 5分、ボローニャの右サイドはヘンリク・ムヒタリアンとレオナルド・スピナッツォーラにワンツーを決められ、あっさりと突破を許してしまう。右サイドのロレンツォ・デ・シルベストリに加え、CBのダニーロが釣られていないので、ディフェンスラインは大混乱。冨安はスペースのカバーに行こうとするが、マークを受け渡されたアンドレア・ポーリはジェコを捕まえきれず、追走した挙句オウンゴールとなってしまった。

 10分には中央を破られ、ワンタッチのパス回しで翻弄された挙句に縦パスを出された。ノープレッシャーだった中盤に詰めようと、冨安は前へ飛び出しロレンツォ・ペッレグリーニへプレスをかける。その結果ジェコにパスを出されてしまうのだが、そこにはダニーロがカバー。だが1対1のフェイントであっさりと逆を取られ、シュートをねじ込まれた。

 ボローニャは5分刻みでまたも失点。右サイドで再びプレスがかからず、裏のスペースにパスを出される。すると今度は、冨安とともに最終ラインに残っていたエムバイェがペッレグリーニをオフサイドポジションに取れずに逃す。あっさりシュートを決められた。

 そこから1点を返したボローニャだったが、チームの調子は戻らない。それどころか、ローマのテンポの早いパス回しを前に後手に回る。35分、前線がプレスをかけられずに縦パスを出され、ボローニャの左サイドに流れていたジェコへ。冨安はマークについたが、中央では味方が組織を作りきれていなかった。ワンタッチのパス回しに翻弄されて、また失点。前半終了間際には左のスペースのカバーに入ったエムバイェが肉離れを起こしてクロスを上げられた。事実上、試合はそこで決した。

人材不足で冨安は左サイドに

 右ウイングのリッカルド・オルソリーニや、中盤のフィルター役として機能していたイェルディ・スハウテンは不在。交代要員がおらず前線の選手は出ずっぱりで、プレーの強度が低下している。そんなエクスキューズがあったとはいえ、前方でプレスをかけられなければ後方に一気に皺寄せが来る。この状態でハイラインの戦術を機能させるには限界があり、ディフェンスラインの連係もズタズタに壊れてしまったということだ。

 後半、シニシャ・ミハイロビッチ監督は戦術を大幅に変え、前線では5人で幅を取ってくるローマに対してマンマークになるように5バックにシステムを変更した。

 冨安は、3バックでもなく左のWBにコンバート。ヒッキーが不在、エムバイェが故障、リザーブメンバーに左サイドバックをこなせる人がいないという状況の中で、急遽穴埋めを任されたということだろう。そこから積極的なプレーを見せ、ボールを奪って何度も攻撃に絡んでいった。もっとも、相手がペースを落とした時だから評価の意味は薄い。結局ボローニャの選手たちは4点のビハインドを詰められないまま、試合終了のホイッスルを聞いた。

「主力となっていた選手がことごとく不在だったという事情があったとはいえ、スキャンダラスだ。明日からクリスマスまで合宿に入る」。ミハイロビッチ監督は試合後、地元メディアに対し怒りも露わに語った。崩れてしまったチーム全体の連係を立て直すには、そのくらいのカンフル剤がいるということなのだろう。

 その中で冨安にとっても、ディフェンスラインのリーダーとなるべき自覚が求められるということになるのだろう。パートナーのダニーロ、左右のサイドバック、そしてカバーに入るMF陣と連係を深めてラインディフェンスに連動性を取り戻すことができるか。もっともサイドバックが壊滅状態という状況では、次節のスペツィア戦では再び左に回される可能性も低くはないのだが…。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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