ほぼ隙を与えず完勝
点を決めるべき人が点を決めて快勝。ユベントスは首位通過を目指して戦うグループリーグ最終節のバルセロナ戦に向け、大きな弾みをつけた。
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このディナモ・キエフ戦では、フランス人のステファニ・フラパールさんが女性として初めてチャンピオンズリーグ(CL)の舞台で主審を務めた。そんな記念すべき一戦で、ユベントスは直近のリーグ戦を休養していたクリスティアーノ・ロナウドやレオナルド・ボヌッチらが先発復帰。3-5-2システムを採用した。
ユベントスは立ち上がりからテンポの良いパスで相手DF陣を揺さぶった。トップ下のアーロン・ラムジーはライン間でアルバロ・モラタとC・ロナウドの2トップと良い距離感を保ちながらある程度自由に動き、マークを絞らせない。そうした背番号8の動きによって生まれたスペースを、モラタとC・ロナウドが効果的に使う場面が試合開始から何度かみられた。
守備時はラムジーが左に回り、アレックス・サンドロが一つ降り、メリフ・デミラルが右サイドに飛び出す4-4-2を形成。プレスのスイッチを入れるのはウェストン・マッケニーやフェデリコ・キエーザで、その圧力により相手のボールが下がればさらにプレッシャーの強度を高める。こうして、ディナモ・キエフを深い位置へとはめ込んだ。
攻守両面でペースを握ったユベントスは、21分にキエーザが移籍後初得点をあげて1点リードを奪取。ディナモ・キエフの戦意を削ぐのに十分すぎるゴールだった。
その後ユベントスは一瞬の隙を突かれてあわや同点という場面を作られたが、そこはヴォイチェフ・シュチェスニーのファインセーブで切り抜ける。また、「常にボールを持つことはできないので、少しディフェンスの時間があるのは当然」と試合後にアンドレア・ピルロ監督が話した通り、ディナモ・キエフにボールを握られる時間帯もあったが、守備陣が大きく崩れることはなかった。
そして後半は主役が仕事を果たす。57分にC・ロナウドがゴールネットを揺らすと、その9分後にはモラタが追加点。リードを3点に広げ、勝負を決めた。
「良い結果を出して新たな刺激を受けるためにも、今日は勝ちたかった。前半終盤の15分はパフォーマンスが落ちたが、相手の同点のチャンス1回を除けばいい試合ができたと思う」。
こう話したのは主将のボヌッチ。彼の言葉通り、ユベントスは同点のピンチ以外はほぼ隙を与えていない。単純な力の差がもちろんあるとはいえ、イタリア王者にとっては実に気持ちの良い勝利になったと言えるだろう。
ピルロ監督にとってはうれしい悩み?
モラタとC・ロナウドという役者が仕事を果たし、長期離脱から復帰して間もないマタイス・デ・リフトもすでにブランクを感じさせないパフォーマンスを披露している。ユベントスにとってディナモ・キエフ戦はチームとしては当然、選手個々のモチベーションを高める意味でも非常に貴重な試合となった。
そんな一戦で誰よりも輝きを放っていたのが、フェデリコ・キエーザだ。今季フィオレンティーナより加入した男はこの試合で1得点1アシスト(ほぼ2アシストだが)を記録。まさに勝利の立役者となった。
先制点の場面はうまくペナルティーエリア内に侵入し、ピンポイントでクロスを合わせた。簡単な体勢ではではなかったが、しっかりとボールを枠へ飛ばすことができるあたりに、この男の力強さを感じることができた。
57分のシーンでは、高質なクロスを送りC・ロナウドの得点が生まれるキッカケを作った。そして66分には自慢のスプリント力を生かしてハーフスペースを突き、最後はボックス内でフリーとなっていたモラタへラストパス。勝負を決定づける3点目をお膳立てする結果となった。
「監督には攻撃を完結させてゴールを奪うことを求められている」と本人が話す通り、ウイングバックといえどフィニッシュの局面に絡むことができるのはキエーザ最大の強みだ。そして、そのゴールを奪うという役割を担う上で、やはり左サイドよりも右サイドの方がこの男は輝く。
キエーザの武器はスピードとフィジカルを生かした積極的な縦への抜け出しだ。派手なテクニックを駆使せずともごりごりとこじ開けられる能力は、セリエAでもトップレベルにある。そしてこのプレーを「左右両サイド」で高質に発揮できるので、実に怖い。
しかし、縦突破後のアクションに関してはやはり「右サイド」の方が脅威だ。理由は単純、彼は右利きだからだ。深さを作った後、より精度の高いパスやシュートへ繋げられるのは右足。左サイドだと、武器である縦突破を見せた場合、左足でのプレーを強いられる。彼のストロングポイントを考えた場合、どちらでの起用がより攻撃の可能性を高められるかは明白だ。
この日の2点目のシーンも、キエーザが縦への持ち運びで深さを作り、モラタとC・ロナウドがよりゴールに近いエリアでプレーできたことが得点へと結びついた。そして素早く質の高いクロスは右足から生まれたもの。まさに背番号22の良さがすべて詰まったシーンだった。
フィニッシュに絡むことができるキエーザに、組み立てでも貢献できるファン・クアドラード、そしてより内側でプレーしてまた違った可能性を生み出すことができるデヤン・クルゼフスキ。ユベントスの右サイドは層が厚く、それぞれが面白い。ピルロ監督にとっては嬉しい悩みと言えるかもしれない。
(文:小澤祐作)
【了】