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絶好調ミランに一体何が起きたのか。深刻に見えなくても深刻な問題、今こそ真価が問われるとき【EL】

ヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグH組第3節、ミラン対リールが現地時間5日に行われ、0-3でアウェイチームが勝利している。今年3月から公式戦で負けていなかったミランだが、242日ぶりに黒星を喫した。それも、完敗である。絶好調中だったチームに何が起こったのか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

242日ぶりの公式戦黒星

ミラン
【写真:Getty Images】

 久しぶりにミランイレブンがガックリと肩を落とす姿を見た気がする。それもそのはず、同チームが公式戦で負けたのは3月8日のジェノア戦以来、242日ぶり。ここまでの完敗は昨年12月のアタランタ戦(0-5)以降なかったと記憶している。

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 セリエAで首位に立つミランはセルティックに3-1、スパルタ・プラハに3-0とヨーロッパリーグ(EL)でも好調を維持していた。しかし、グループ最大の難敵と見ていたリールはやはり甘くなかった。ホームゲームだったが、ミランはほとんど良さを出させてもらえなかったのである。

 4-2-3-1システムを採用し、2列目に左からラデ・クルニッチ、ブラヒム・ディアス、サム・カスティジェホを並べたミランは序盤、ポゼッション率を高めながら相手ゴールへと迫っていた。リール側は少し試合への入りが良くなかったので、この時点ではミランが上回っていた。

 しかし、22分に不用意な形でPKを献上し、失点を浴びる。ステファノ・ピオーリ監督が試合後に「我々はビハインドを背負ってから多くのことを与えてしまった」と話す通り、ここからはリールの時間帯が長く続いた。

 今季リーグ・アンで無敗、それもここまで複数失点を喫していないリールの守備陣はかなり堅く、少しの揺さぶりではまったく動じなかった。ズラタン・イブラヒモビッチにボールが入った際の可能性は相変わらずだったが、それ以外のパターンはほぼ沈黙。とくに、個の打開力に劣るクルニッチとカスティジェホの両サイドはまったくと言っていいほど機能していなかった。事実、この両者は前半のみでベンチに下がっている。

 そして、強固な守備から繰り出されるリールのカウンターは何度もミランに大きなダメージを与えた。特大のポテンシャルを秘めるジョナサン・デイビッド、エースのジョナタン・イコネ、ジョナタン・バンバは個で勝負でき、ミランも獲得を狙っていたトルコの逸材ユスフ・ヤズジュは絶妙なスペースを突いてくる。この個性が集結した速攻に耐えるだけの強度を、ミランは持っていなかった。

 また、リールのカウンター時に大きな効果をもたらしていたのがレナト・サンチェスだ。ミランのフランク・ケシエとサンドロ・トナーリのダブルボランチは前から相手の中盤底2枚を捕まえにいったが、R・サンチェスは巧みなボディフェイクやフィジカルを駆使しプレスを回避。簡単に前を向いてはドリブルでぐんぐんとボールを前に運んだ。

 ケシエとトナーリが飛び出しているため、ミランはディフェンスラインと中盤の間に大きなギャップが生じている。これが問題だった。そこをR・サンチェスらに突かれると、さらにそこからマークや受け持つエリアのズレが出てくる。イコネやバンバなど、個で勝負できる選手に対してかなり危険な状態を、ミランはさらけ出していたと言わざるを得ない。ピオーリ監督の言葉通り、「多くのスペースを与えてしまった」。

 堅守速攻。まさにリールの得意としているスタイルに、ミランはズバズバと切り裂かれてしまった。結果的に0-3だったが、さらに大差がついても不思議ではなかっただろう。内容も結果も完敗であった。

 ただ、重要なのはこの次の試合だ。この敗戦がキッカケとなって沼にハマっていくことだけは避けたい。無敗記録が途切れた今こそ、ミランの真価が問われる。

主将のコンディションがなかなか上がらず…

アレッシオ・ロマニョーリ
【写真:Getty Images】

 さて、チームとして多くの問題を抱えてしまったリール戦だが、選手個人に目を向けると、やはり気になってしまったのが主将アレッシオ・ロマニョーリのコンディションだ。

 昨季終盤に負ったふくらはぎの怪我で約3ヶ月間の離脱を強いられていたロマニョーリは、今季開幕数試合を欠如した後、第4節インテルとのミラノダービーで戦列復帰を果たしている。しかし、そこからなかなかパフォーマンスレベルが上がっておらず、最終ラインで安定感を欠いているのだ。

 このリール戦もそうだった。22分にはプッシングでPKを献上。スローインを受けたヤズジュはゴールに対し背を向けていた状態なので、そこまで強く行く必要はなかった。結果論にはなってしまうが、これが試合の流れを変えたことを考えてもかなり軽率な対応だったと言わざるを得ない。

 その他の場面でも何度か軽いプレーを見せてしまったロマニョーリ。そもそも彼はカバーリングやビルドアップといったクレバーな能力は光るが、実はパワー系やスピード系に対してはそこまで強くない。そういった意味でも、スピード、技術ともに優れる強力なアタッカーが揃うリールを前に粗さが目立ってしまったという点は否めない。データサイト『Who Scored』によるレーティングもワースト2位となる「5.7」だった。

 ここまで上々の結果を出してきたので、ロマニョーリのパフォーマンス低下問題は深刻ではなさそうに思える。が、実は深刻だ。

 相棒を務めるシモン・ケアーはここまで素晴らしいパフォーマンスを見せている。ロマニョーリが不調でも守備陣がなんとか耐えているのは、デンマーク人DFによる働きが大きいとみていい。しかし、ケアーの負担はあまりにでかい。ここまでフル稼働しており、ピッチ内でも獅子奮迅の活躍。今年で31歳と若くはないので、この状態が続くといつ“壊れても”おかしくはない。

 イブラヒモビッチの怪我も相当怖いが、仮にケアーが離脱した際のダメージも特大のものとなるのが今のミランだ。それだけは絶対に避けなければならない。

 ただ、ミランはCBの層が薄い。レオ・ドゥアルテはまだまだ物足りず、マテオ・ムサッキオは負傷中。現状、控えで戦力に数えられるのはマッテオ・ガッビア一人のみだ。しかしそのガッビアも発展途上であり、どこまでケアーの負担を減らすことができるかは不透明である。

 CBとしての確かな能力、そしてベテランとしての存在感を併せ持つケアーの負担を少しでも減らすため、そして何よりミランのリーダーとして、ロマニョーリの復調は色々な意味で重要なのだ。このままズルズルと時間が進み、ケアーが離脱でもしたら本当に大変なことになる。ロマニョーリにも休息は必要だが、まずは試合をこなして以前の状態に戻してもらいたい。

(文:小澤祐作)

【了】

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