手詰まりだったバルセロナの攻撃
10月24日、空っぽのカンプ・ノウで行われた“エル・クラシコ”。狂騒とかけ離れた、牧歌的ですらある雰囲気の中で行われた一戦で、FCバルセロナは宿敵に完敗した。
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5分、ラインの間でボールを受けたカリム・ベンゼマがドリブルからスルーパス。抜け出したフェデリコ・バルベルデに先制を許したバルサだったが、その3分後に追いつく。左サイドを抜け出したジョルディ・アルバの折り返しを、ニアでアンス・ファティがダイレクトで合わせて同点弾。
クラシコで一歩も譲らない姿勢を見せたが、追撃もここまで。80分以上の時間があったにもかかわらず、バルサの攻撃陣は空っぽのホーム・スタジアムのようにアイデアに欠けた。
左サイドを上がるアルバがマルコ・アセンシオに封じられると、攻撃は手詰まりになってしまう。セルヒオ・ラモスが最終ラインに復帰し、バイタルエリアを固く閉ざすレアルを崩すことができない。リオネル・メッシが試合中に歩く姿は珍しくはないが、それにしてもバルサでのモチベーションを疑わざるを得ないようなパフォーマンスだった。
24分、カウンターからファティのパスを胸でトラップしてラモスを交わし、GKティボー・クルトワとの1対1を迎えるが、決め切れず。ベルギー代表GKの好守はもちろんだが、これまでクラシコで輝きを放った神がかったメッシであれば、確実に決めていたのではないか。中央でのドリブル突破に迫力はなく、シンプルなパス・アンド・ゴーの場面でも、出しっぱなしで“ゴー”に力強さはない。
ゲームメイカーの不在
もちろんバルサの攻撃が空っぽだったのは、メッシだけの問題ではないだろう。
この日の中盤の構成は、フレンキー・デ・ヨングとセルヒオ・ブスケツのダブルボランチに、トップ下がメッシで、両サイドがコウチーニョとペドリ。無いものねだりなのは百も承知だが、かつてのシャビやアンドレス・イニエスタのような創造性のあるゲームメイカーが不在では、攻撃にダイナミズムが生まれないのも仕方ない。
夏の移籍市場でロナルド・クーマン監督が獲得を望んだという2人、ドニー・ファン・デ・ベークとジョルジニオ・ワイナルドゥム、そのどちらかが加わっていたら、オランダ代表で共にプレーするフレンキーにも好影響を与えただろうし、また違っていたかもしれない。もちろんシャビやイニエスタとはタイプが違うが、ファン・デ・ベークもワイナルドゥムも、点が取れる8番としてバルサの攻撃に躍動感を与えただろう。
いずれにせよ、レアルの中盤で台頭したフェデリコ・バルベルデのような選手の到来が、バルサにも待たれるところだ。
63分にラモスに巧くPKを獲られ、追加点を許すと、クーマン監督は81分にアントワーヌ・グリーズマン、82分にウスマン・デンベレらを投入するが、反撃は実らず。ブスケツが下がったことで好守のバランスが乱れ、90分にルカ・モドリッチに決められてジ・エンド。
救いはカンプ・ノウが空っぽだったことで、ブーイングも響かないことか。今後のメッシのモチベーションがいよいよ心配になる、無観客の“エル・クラシコ”だった。
(文:本田千尋)
【了】