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マンUはどのようにPSGを撃破したのか? 投入が契機となったのは…スールシャールの采配的中は必然か偶然か【欧州CL】

UEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第1節、パリ・サンジェルマン対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間20日に行われ、1-2でユナイテッドが勝利を収めた。負傷者を多く抱えていたユナイテッドだったが、オーレ・グンナー・スールシャール監督の采配が勝利を手繰り寄せた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ビッグセーブ連発の両守護神

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【写真:Getty Images】

 両チームのGKのパフォーマンスが光っていた。パリ・サンジェルマンとマンチェスター・ユナイテッドはともに14本ずつシュートを放ったが、ケイラー・ナバスは4つ、ダビド・デヘアは5つのセーブを記録。3つのゴールはGKにとってはノーチャンスだった。

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 前半からオープンな展開が続いた。ユナイテッドの布陣は5-2-1-2。DFラインは低めに設定してゴール前のスペースを埋め、2トップのアントニー・マルシャルとマーカス・ラッシュフォード、トップ下のブルーノ・フェルナンデスを中心に少ない人数で縦に素早く攻め込んだ。

 対するPSGは4-3-3の布陣で、ネイマールとアンヘル・ディ・マリアは5バックの前のハーフスペースを執拗に突いた。ユナイテッドはスペースを埋める意識が強く、ダブルボランチが当たるのか、センターバックが詰めるのかが曖昧だった。アタッキングサードへ侵入することは、PSGにとってそう難しくなかった。

 一方で、ユナイテッドのカウンターは効果的だった。ボールを奪ったときに、必ずブルーノ・フェルナンデスがフリーになっている。ここにボールが収まれば一気にゴール前まで運ぶことができた。

 PSGはイドリッサ・ゲイエ、アンヘル・エレーラ、ダニーロ・ペレイラで構成された中盤がフィルターとしてあまり機能せず、3トップは攻め残りするので、ユナイテッドのウイングバックが自由に攻め上がるスペースを作っていた。PSGはボール保持率こそ相手を上回ったが、敵陣に押し込んで2次攻撃につなげることはあまりできていない。

 PSGはフアン・ベルナト、マウロ・イカルディ、マルコ・ヴェラッティらがベンチを外れ、マルキーニョスは練習に復帰したばかり。「11人、12人、13人しかいないかもしれない」とトーマス・トゥヘル監督が嘆いた通り、この試合のベンチには若い選手が多く名を連ねた。トゥヘルは策士だが、使える駒があまりにも限られていた。

PSGの交代策は不発

 デヘアのビッグセーブが続いたユナイテッドは、マルシャルが倒されてPKを獲得。ブルーノ・フェルナンデスのキックはナバスが止めたが、蹴る前にライン上から離れてしまったためにやり直しに。2度目はブルーノ・フェルナンデスがナバスの逆を突いて決め、ユナイテッドが先制に成功する。

 1点のビハインドを負ったPSGは後半開始と同時にモイーズ・キーンを入れ、4-2-3-1(4-4-2)にシフト。左サイドでキリアン・ムバッペが深さを作り、キーンが中央、ネイマールとディマリアの役割は変わらず。しかし、結局のところユナイテッドがゴール前のスペースを埋めているのでなかなか崩せない。ボックス外から放ったシュートはデヘアの守備範囲だった。

 オーレ・グンナー・スールシャール監督の采配は的確だった。55分にオウンゴールで追いつかれたが、67分に選手交代に踏み切る。左ウイングバックのアレックス・テレスを下げてポール・ポグバを投入し、5-2-1-2から4-3-1-2へ布陣を変えている。

 中盤を3人に増やし、ディマリアとネイマールに狙われていたDFラインの前のスペースを塞いだ。PSGはこれ以降のシュートはわずか3本で、1本はコーナーキック、残りの2本はネイマールのミドルシュートだけだった。

 中盤を厚くしたユナイテッドはボールを持てる時間も長くなっている。ポグバ投入から得点シーンまでのボール保持率はほぼ同じ。PSGの攻撃を封じたユナイテッドはポールポジションに立っていた。

ポグバ投入が契機に

 ユナイテッドにとっては、あとはゴールを決めるだけ。しかし、マルシャルとラッシュフォードの日ではなかった。ラッシュフォードは直近のリーグ戦で1得点2アシストの活躍を見せたが、この日はカウンター時の判断が悪く、ことごとくチャンスを潰していた。

 しかし、ストライカーは10回失敗しても、1回成功すればヒーローになれる。GKは10回セーブしても1度のミスを責められるので、正反対の宿命を背負った職業だ。ラッシュフォードはポグバからパスを受けると、豪快に右足を振り抜いてゴール左隅に決める。抜群のシュートリアクションを誇るナバスでも届かないギリギリのコースを狙った。

 エディンソン・カバーニやメイソン・グリーンウッドが起用できれば代えていたかもしれないが、当たっていなかったラッシュフォードを残した。そして、ポグバの投入とシステム変更により流れは間違いなくユナイテッドに傾いた。スールシャールの采配が奏功したと言っていいだろう。

 ユナイテッドにとっては最高の結果となった。ハリー・マグワイア、エリック・バイリー、グリーンウッドらを欠く中で、古巣対戦でのデビューが期待されたカバーニも調整が間に合わず。10か月ぶりの公式戦出場となったアクセル・トゥアンゼベは、ネイマールやムバッペに食らいついて水際で失点を防いだ。

 プレミアリーグでは2勝2敗という低調なスタート、トッテナムには1-6というスコアで屈辱的な敗北を喫した。負傷者も多く、選手起用もままならない状況だったが、この流れを今後につなげていければ、希望の光が差し込むはずだ。

(文:加藤健一)

【了】

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