「オール海外組」は日本サッカーの前進
日本代表が先日戦ったカメルーン戦とコートジボワール戦の2試合の親善試合から必要以上に深く何かを読み取るのは難しいとしても、森保一監督としては今回のユトレヒトでの活動からある程度のポジティブな成果を得ることもできたし、チームが抱える重要な問題点を再確認する上でも意義のあるものだったと捉えているはずだ。
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新型コロナウイルスの問題が依然として残る中、世界のサッカー界も不安感と予防措置の影響を受け続けている。移動と隔離に関する各種の制限により、森保監督はJリーグの選手を連れて行くことはできず、選択肢は欧州でプレーするメンバーのみに限られていた。
とはいえ、それ自体は指揮官にとって特に大きな問題とはならなかった。現在のメンバーの多くが国内ではなく海外に拠点を置いていることは、過去10年間に日本サッカーが遂げてきた前進を示している。
世界トップクラスの選手たちと毎週のように競い合う状況に慣れ親しんだ選手たちは、サムライブルーがアジア以外の相手に挑むにあたっても、より強い自信を持って臨むことができるようになった。カメルーン戦とコートジボワール戦も、非常にフレンドリーマッチ的なペースの試合であったことは否めないとしても、全体的にはさほど苦境に陥ることなく乗り切ることができた。
その理由のひとつは、センターバックを務めた冨安健洋が成長を続けてきた部分にある。21歳の彼は日本が生んだ史上最高のDFの一人へと進化していくことができそうに感じられる。アビスパ福岡を率いた井原正巳監督のもとでプロ選手としての最初の一歩を踏み出したことを考えれば、それも決して意外ではないと言えるだろう。
その冨安と吉田麻也のコンビは、次回のワールドカップに向かっていく上での確かな基盤を成している。柴崎岳も不動の先発として定着しており、中盤の底からスムーズにゲームをコントロールしてくれる。ピッチ中央でパートナーを務める相手が誰になるかはまだ少し不確定だが、中山雄太も遠藤航もこの2試合を通して柴崎の隣で確かなプレーを見せ、激しいボールの奪い合いから攻撃陣の選手たちへとパスを供給していた。
フィニッシャーの不足
攻撃陣でも何人かの選手たちがスタディオン・ハルヘンワールトで好印象を残した。
久保建英と伊東純也はサイドでポテンシャルの一端を垣間見せていた。特に伊東は守備を助けるハードなタックルから裏へ抜け出そうとするプレーまで精力的にこなしていたし、久保も次世代の代表チームの中心となる稀有なタレントであることを改めて証明していた。中島翔哉が今後代表に戻ってくるとしても、何もないところからチャンスを生み出せる力を持った2人は対戦相手にとって頭の痛い存在であり続けるだろう。
だが前任の日本代表監督たちと同じく、森保監督が抱えている懸念もその先の部分にある。依然としてこのチームには、ゴール前で決定的な仕事をするフィニッシャーが不足している。
30歳の大迫勇也がファーストチョイスの9番であることは変わらないが、ヴェルダー・ブレーメンでの彼は今季開幕からの3試合で45分間のプレーと終了間際の交代出場が各1回のみ。代表チームでも最近6試合で1得点しか挙げていない。
カメルーン戦でも、チャンスの乏しい試合の中で日本代表にとっておそらく唯一の決定機だった絶好のチャンスを逃してしまった。ある程度勘が鈍っていることは予想できたとしても、彼ほどの能力と経験あるストライカーであれば、次の瞬間には失敗を嘆くよりゴールを祝うため走り出しているべき場面だった。
前回の代表戦まで5試合連続でゴールネットを揺らしていた南野拓実ももちろんいるが、最前線よりはもう少し低い位置での役割の方が適している。鎌田大地も同様であり、今季のアイントラハト・フランクフルトでもバス・ドストとアンドレ・シルバの後方の10番のポジションでプレーしてここまで1得点2アシストを記録している。
W杯で上位進出するためには…
今回のメンバーの中で本格的に大迫の代役となれる選手は鈴木武蔵が唯一の存在だった。ジュピラー・プロ・リーグ昇格組のベールスホットに加入した26歳は順調なスタートを切り、デビューからの数試合で2得点1アシストを記録して鎌田と並ぶ3点に関与している。だがコートジボワール戦でもポストプレーの方が際立っていたし、キャリアを通しての得点率もJ1で平均4.5試合あたり1得点と高いものではない。
周囲を見回してみても、他に見つけられる選択肢はさほど多くない。武蔵と同じくベルギーでプレーする鈴木優磨は今季のシント=トロイデンでここまで8試合に出場して2得点止まり。Jリーグの得点ランキング上位にも、日本人のストライカーらしいストライカーは33歳の小林悠しかいない。古橋亨梧も得点を重ねてはいるが、彼もまた典型的なセンターフォワードとは程遠いタイプだ。
U-23代表にまで視野を広げても不安は変わらない。上田綺世(今季3得点、最近6試合はゼロ)も小川航基(2020年J2で25試合8得点、最近11試合で1得点)もゴール前でさほど輝きを放っているとは言い難い。
もちろんこのことは日本代表にとって今に始まった課題ではないが、だからといって論じる必要がないわけでもない。ワールドカップ予選の戦いでは、南野や久保、中島、その他の選手たちの閃きが当面のストライカー不足を覆い隠し、タレント豊富なメンバーがゴールと勝利を比較的容易に生み出すことができてしまう。
だが長期的には、日本は点取り屋を輩出できるようになる必要がある。ストライカーが生まれなければワールドカップの上位進出にも手が届かないままかもしれない。
(文:ショーン・キャロル)
【了】