香川真司やマリオ・ゲッツェがいても…
シャルケについてはボランチが1枚、つまりアンカーを置いていたのですが、そこに入る選手が本当に守備的な選手でした。ビルドアップに全然関われず、「え? これでいいの?」という話をしたのは覚えています。
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内田選手が言うには「そもそもそういうタイプの選手じゃないし、特に今日はそういうゲームプランなので」ということでしたが、見る限り、WBも高い位置へ出られないし、インサイドハーフもどんどん下りてしまうし、相手の背後を取るアクションやパスも皆無です。「こうなると3バックは相手の圧に押されてしまう」という現象を、現地で確認することができました。
それはドルトムントの試合も同じでした。こちらは技術的に優れた選手が数多く揃っていました。それこそ香川真司選手、マリオ・ゲッツェもいたと思います。でも結局、そのあたりの選手もどんどん下りてしまい、背後へのアクションがなくなり、相手のプレッシャーをまともに受ける流れになりました。
「こうなるときついぞ」ということをドイツの2ゲームでは強く感じました。その後、ロンドンへ行ってチェルシーの試合を見ると、前線の3人(ジエゴ・コスタ、エデン・アザール、ペドロ・ロドリゲス)が、前へ走り、ドリブルで前進し、とにかく相手の背後を強く意識したプレーを繰り返していました。
そうすると、相手最終ラインが下がり必然的に両ワイドも高い位置を取れるし、全体的な矢印が前を向く。やはり、1トップ・2シャドー、特に2シャドーが前へのランニングで背後を取る動きをしないと、逆に圧力を受ける試合になってしまうなと、最後のゲームでポイントを整理できたのをよく覚えています。
明確となった「何より重要なもの」とは?
そのような試合に出会ったのはまったくの偶然でしたが、様々なチームの特徴、良し悪しを間近で見たことで、自分の中で3バックの特徴を整理しながら2017年に入ることができました。まずは前の3枚、特に2シャドーの背後へのアクションが何より重要だと。これをオフシーズン中に明確にできたのはかなり大きかったと思っています。
そして、その背後の取り方を習得させるために、その後のキャンプから様々な試行錯誤をすることになります。そこから我々は、《レーン》と呼ばれるものを発見し、立ち位置を導き出し、戦術の浸透を一歩一歩進めていくことになりますが、それは次の章で。
布石──。今から振り返ると、2016年は攻撃マインドへの転換、グループ単位のベースの植え付け、高い位置の幅取り、システムの帰結など、後に『ポジショナルプレー』とみなさんに評価していただくスタイルのベースを築く年になったのだと思っています。
(文:渡邉晋)
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【了】