主導権を握って離さず4点大勝
ウニオン・ベルリンにとって現地2日に行われたブンデスリーガ第3節のマインツ戦は、今季初勝利という結果以上に収穫多き一戦となった。
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監督交代に踏み切ったばかりの相手に4-0で大勝、しかもウニオンが1試合で4得点を挙げたのはブンデスリーガ1部では初めてだ。いずれもチームとしての狙いがよく反映されたゴールで、ウルス・フィッシャー監督も試合後に「適切なタイミングでゴールを決められたのは、自信を持つためにはいいことだ。いい試合をし、素晴らしい勝利だったと思う」と手応えを語った。
前節ボルシアMG戦と同じく3-4-2-1で臨んだウニオンは流れるようなコンビネーションで右サイドを崩し、シェラルド・ベッカーのダイレクトクロスから開始13分で先制点を奪った。プレシーズンからずっと取り組んできた崩しの形であり、ゴール前に入る選手たちとクロスを上げるタイミングが完璧に合った。
そして、逆サイドからフリーで飛び込んだマックス・クルーゼは、移籍加入後初先発で期待された通りの結果を残して見せた。この元ドイツ代表ストライカーは、今季のウニオンで前線の軸になっていくだろう。
一方のマインツはなかなかシュートまで持ち込むことができず、終始ウニオンが主導権を握って前半を1点リードで終える。
後半はゴールラッシュだ。49分、右ウィングバックのクリストファー・トリンメルがボールを持って顔を上げると、すぐさまアーリークロスをゴール前に送る。これに逆サイドから走り込んだマルクス・イングヴァルトセンが左足で柔らかく合わせ、リードを2点に広げた。
チーム全体のパフォーマンスが高かった中、前半はほとんど存在感のなかったデンマーク代表FWの面目躍如というべき一発で、ウニオンはさらに勢いに乗る。
63分にはトリンメルが右サイドから蹴った高い弾道のフリーキックに、センターバックのマルヴィン・フリードリヒが頭で合わせて3点目。直後の64分には、交代出場したばかりのストライカー、ヨエル・ポーヤンパロがファーストプレーで泥臭いフィニッシュを見せてダメ押しの4点目を奪った。
10分に満たないプレーだったが…
右太ももの肉離れから復帰したばかりで、今季初のベンチ入りとなっていた遠藤渓太に声がかかったのは、82分のことだった。イングヴァルトセンとの交代でピッチに立ち、ブンデスリーガデビュー。横浜F・マリノスから海を渡った日本代表FWが大きな一歩を踏み出した。
すでに勝敗の行方はほぼ決しており、ウニオンはテンポを落としながら試合の締めに入っていたこともあって、遠藤に大きな見せ場はなかった。87分には左サイドのオープンスペースに対して得意のドリブル突破を仕掛けるも、周りの選手たちが次々に飛び出してくるようなことはなく、チャンスには結びつかず。
90分に差し掛かるところでウニオンの左センターバックに入っていたニコ・シュロッターベックが負傷したため、主審はアディショナルタイムを取らずに試合終了の笛を吹いた。大差がついている状況でもあり、妥当な判断だったと言えるだろう。
およそ10分に満たないマインツ戦のプレーで、遠藤が定位置奪取に値するパフォーマンスを見せたとは言えない。ただ、フィッシャー監督が3-4-2-1の2シャドー(役割的には5-4-1のウィングにも近い)に求めるタスクを理解し、実行しようとしているのはよくわかった。
ウニオンの2列目の選手は、崩しの鍵を握る。クルーゼのゴールが生まれたような2人ないし3人が絡むコンビネーションを使ったサイドの崩し、そしてワンタッチで上げるクロスはチームの大きな武器だ。
遠藤はこうしたプレーにマリノス時代から取り組み、得意としてきた。もちろん単独でドリブルを仕掛けて相手ディフェンスを剥がし、ゴール前に速いクロスを送るのも選択肢として持っている。それだけでなく、攻め上がってきたウィングバックのポジショニングを利用しながら、相手のサイドバックとセンターバックの間にできるスペースを突いて、深い位置からマイナス方向へのグラウンダーの折り返しや、ふわりとした逆サイドを狙うクロスも身につけている。
近年、特に向上しているのが左サイドから上げる左足クロスだ。右利きのため逆足を使ってのプレーにはなるが、弱点を克服しようと練習を重ね、左足の技術は飛躍的に伸びた。昨年J1リーグを制したマリノスで7得点7アシストという際立った結果を残せたのも、両足を遜色なく使えるようになったことが大きな要因の1つだった。
2週間後のシャルケ戦へ万全の準備を
ブンデスリーガでは常に結果が求められ、試合の強度は高く、ウニオンのチーム内での競争も激しい。クルーゼが初先発でクオリティの高さを証明し、先月30日に加入したばかりのポーヤンパロもペナルティエリア内での勝負強さを印象づけるプレーを連発した。
2列目では昨季も主力だったイングヴァルトセンが気を吐き、ベッカーもチームコンセプトに則った忠実なプレーを披露。昨季リーグ戦7得点のマリウス・ビュルターですらレギュラーの座を確約されていない。
遠藤はマリノスからウニオンに合流後、8月12日に行われた親善試合のビュルツブルガー・キッカーズ戦で先発起用されて45分間プレーした。その後、同15日のディナモ・ドレスデン戦にも先発して45分間、同23日のケルン戦は70分までピッチに立ち続けていた。
プレシーズンマッチで合流早々から多くの時間を与えられ、主力選手たちとのプレー機会ももらえていた。その中で可能性を感じさせるパフォーマンスを見せていたからこそ、最も強度やレベルの高かった8月30日のアヤックス戦で先発メンバーに名を連ねることができたのだった。
残念ながらアウェイで行われた欧州屈指の名門との試合で右太ももを痛めてしまったわけだが、フィッシャー監督は遠藤を高く評価しているはずだ。ストライカー的な気質の強いビュルターやベッカー、イングヴァルトセンとは違った特徴をチームコンセプトの中で発揮できる素養は示してきている。今後もプレシーズンマッチやマインツ戦と同じく3-4-2-1の2列目、左シャドーでの起用がメインになるだろう。
これからサッカー界は国際Aマッチウィークに入るため、次の公式戦は18日のブンデスリーガ第4節のシャルケ戦になる。遠藤はオランダ合宿を行う日本代表メンバーには選ばれていないため、所属クラブに残って調整を続けることが可能だ。
ウニオンは約2週間の公式戦中断期間中、9日にハノーファーとの練習試合を予定している。負傷明けの遠藤のコンディションを確認するためにも、より長いプレータイムが与えられるに違いない。ここでしっかりとアピールし、再開後により大きなチャンスをつかむための足がかりにしたいところだ。
(文:舩木渉)
【了】