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セリエA 4年前

ミラン、イブラヒモビッチは今季も最強。恐ろしいほど完璧なボローニャ戦、ついに名門復活か

セリエA第1節、ミラン対ボローニャが現地時間21日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。昨季後半戦より強さを示しているミランは、この日もほぼ完璧と言っていいほどの内容で、相手を返り討ちとした。今季は本当に、大きな期待が持てるかもしれない。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

充実した昨季とオフを経て

ミラン
【写真:Getty Images】

 前半戦と後半戦でガラリと姿が変わるチームはある。それは、良くも悪くもだ。

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 たとえば、昨季のマンチェスター・ユナイテッドはその一つだった。彼らは冬にブルーノ・フェルナンデスが加入したことで攻撃の色が出始め、勝ち点を次々と奪取。最終的には、一時は無理と思われたチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得を決める大成功を収めた。

 昨季のミランも例外ではない。同クラブもまた、冬の補強でズラタン・イブラヒモビッチを獲得してから姿が一変。それまで曖昧だったスタイルが明確となり、あとは細かい部分の強化に取り組んだことで、より完成度の高いチームとなった。

 そんなミランは昨季、新型コロナウイルス感染拡大による中断明け以降、なんと負けなしだった。目標であったCL出場権獲得には手が届かなかったものの、ポジティブな雰囲気でオフシーズンを迎えられたのは言うまでもない。

 そのオフシーズンも充実していた。まず、補強面で大成功。ブラヒム・ディアスを加え、ジャンルイジ・ドンナルンマの控えとしてチプリアン・タタルシャヌを確保。そして、イタリア代表の未来を担うであろうサンドロ・トナーリも新戦力として加えることができた。さらに、イブラヒモビッチの残留が決まったのも大きかった。

 プレシーズンマッチではノバーラ、モンツァなどと対戦。ベテランから若手まで、選手個々が状態の良さをアピールするなど、収穫の多いゲームをみせることができた。そして、現地時間17日にはヨーロッパリーグ(EL)予選2回戦でシャムロック・ローバーズと対戦したが、これを2-0で勝利。ステファノ・ピオーリ監督は試合後のインタビューで「試合を支配し、良いプレーをした。結果を出せて満足している」とコメントしている。

 このように、ミランは昨季後半戦からの良い雰囲気をずっと保ってきている。イブラヒモビッチという男の加入は間違いなくチームを変えたし、その他の選手も結果が出ている中でしっかりと自信をつけた印象が強い。

 そのポジティブなチーム状況は、現地時間21日に行われたセリエA第1節、ボローニャ戦でもしっかりと発揮されることになった。

イブラヒモビッチが開幕から好調

ズラタン・イブラヒモビッチ
【写真:Getty Images】

 立ち上がりこそ少しバタついたミランだったが、その後すぐに修正を施して自分たちのペースを手繰り寄せている。ボローニャは守備時4-4-2で対応してきたが、ホームチームは4と4のライン間スペースをうまく突きながら着実にボールを前進させた。

 とくにテオ・エルナンデスとアンテ・レビッチ、そこにイブラヒモビッチも絡んでくる左サイドからの攻めは迫力満点だった。彼らはやや強引にでも突破することが可能なので、なかなか簡単には止まらない。ボローニャは人数をかけてギリギリで対応するのがやっとだった。

 ミランは攻守の切り替えも抜群に素早く、2列目の選手から積極的なプレスを行ってボローニャの攻撃にカギをかけている。イブラヒモビッチはそこまで守備に加担していないが、まったくサボっているわけではない。パスコースはしっかりと切っているし、追い込んだと思えば懸命なランニングでプレッシャーを与えることもある。

 こうしてボローニャに流れを渡さなかったミランは、あとはゴールのみ、というほど相手を押し込んだ。その中で躍動していたのは、やはりイブラヒモビッチだった。

 昨季に引き続き、とにかく前線でボールを収めてくれる。ペナルティーエリア内での存在感はもちろん圧巻だが、とくに最終ライン手前の位置でフリーでボールを持つと、高確率でチャンスに繋がる質の高いラストパスも出てくる。そして背番号11にボールが入ると、必然的に周りの動きが活発になる。このように、イブラヒモビッチがボールに触れるだけで、得点の可能性というのがグッと引き上がる。そんな現象は、この開幕戦でも起きていた。

 大柄な体躯に頼り切るのではなく、技術もしっかりとしており、手の使い方なども抜群に上手い。また、とにかく足首が柔らかい。ボールを晒して相手に足を出させ、そこでくいっとボールを横にズラす。イメージ的には、エラシコをもっと簡単にしたものだろうか。これで敵を無力化するシーンは、昨季も、そしてこのボローニャ戦でも何度かみられた。

 イブラヒモビッチは35分にT・エルナンデスのクロスをピンポイントで合わせてゴールゲット。さらに51分にはPKを冷静に沈めて、開幕からドッピエッタと申し分ない活躍を果たした。

 結果も出せて、数字では表れにくい部分での貢献度も絶大。38歳イブラヒモビッチの王様ぶりとその凄さを、再確認するゲームとなった。

背番号10も躍動

 イブラヒモビッチの得点で2点をリードしたミランは、その後もペースを緩めずボローニャに対応した。その中で輝きを放っていたのは、背番号10、ハカン・チャルハノールだ。

 最も得意とするトップ下を任されたことで昨季後半戦より急激にパフォーマンスレベルを上げたチャルハノールは、この日もイブラヒモビッチの下のポジションで攻守において躍動している。

 攻撃面ではライン間スペースをうまく突いてボールを引き出すなど、ビルドアップの出口に。そこから左右両サイドへ的確にボールを散らし、攻撃のリズムを上手く作り出した。

 また、イブラヒモビッチが下がり目に位置する時は、チャルハノールは背番号11を追い越してボローニャDF陣のラインを下げさせる。こうすることで瞬間的にライン間エリアにスペースができ、イブラヒモビッチがフリーになる。ボールを持った際のセンスもさることながら、オフザボール時でも攻撃にスパイスを加えられるのが、トルコ人MFの良さである。

 守備でもチームのために汗をかくことを厭わず、積極果敢なプレーを披露している。頭も柔軟に使っており、機動力のあるフランク・ケシエ、そしてイスマエル・ベナセルのダブルボランチが飛び出したことで生まれたスペースを確実に埋める働きもみせた。そして、カウンター時はボローニャにとって危険なスペースをうまく突いて全体のラインをアップ。2ゴールのイブラヒモビッチを除けば、MOM級の働きだった。

 ミランはニコラ・サンソーネ、アンドレアス・スコフ・オルセン、マティアス・スバンベリ、フェデリコ・サンタンデール、エマヌエル・ヴィニャートを投入するなど積極的な交代を行ったボローニャに対し、少し対応が曖昧となる時間帯もあったが、ドンナルンマのセーブもあって無失点で乗り切った。ミランはこれで、昨季も含めたホーム直近7試合で6勝目を挙げることになった。

 選手個々のコンディションも良さそうで、何よりチームとしての完成度も高い。ボローニャも決して悪くなかったが、それを上回ったミランはほぼ完勝と言っていいだろう。今季は本当に期待が持てるかもしれない。

(文:小澤祐作)

【了】

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