ハイテンポvsローテンポ
攻める横浜F・マリノス、守るセレッソ大阪、第16節はホコタテ対決だった。
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横浜FMがエリキのゴールで先制したが、C大阪は清武弘嗣のループ気味の一撃で追いつき、終盤に坂元達裕のドリブル突破からのクロスを高木俊幸が決めて逆転勝ち。65分に横浜FMのCB伊藤槙人が退場となって流れが変わったが、それまでは双方の特徴がよく表れた試合だった。
横浜FMはゲームのテンポを上げたい。攻め込んで、ボールを失っても素早い切り替えからのプレッシッングで奪い返す。ハイテンポとスピードのサッカーだ。UEFAチャンピオンズリーグで優勝したバイエルン・ミュンヘンやプレミア王者のリバプールなどにも共通する、現代の流行りといっていいだろう。Jリーグもそうした流れを取り入れているチームは少なくない。
一方、C大阪はテンポを上げたくない。スプリント回数が少なく、そんなにインテンシティも高くない。その意味ではまったく今風ではないのだが、ゆったりとした守備で相手の勢いを吸収してしまう。
前半は横浜FMが攻め込んだ。シュートも打った、敵陣でのプレスで早期奪回からの二次攻撃もあった。その意味では横浜FMのペースだったといえる。ただ、肝心のテンポが今一つ上がらない。C大阪がボールを奪おうとして飛び込んでこないからだ。その点ではC大阪のリズムでもあった。
あえて流行に乗らない
52分に横浜FMが先制した。こうなるとC大阪も守ってばかりではいられない。堅守速攻型のチームにとって、先制された後の試合運びは真価を問われる場面だった。
C大阪に焦りは見えなかった。相変わらず、どっしりと構えて守っていた。つり出されず、ポジションを埋め、ファウルもしない。まるで自分たちがリードしているようにプレーしていた。そうしているうちに見事なカウンターアタックが決まって同点に追いついた。
この後、横浜FMが退場者を出して10人になったことで、C大阪は高木を前線に投入して奥埜博亮をFWからボランチへ下げ、少し攻撃にシフト。横浜FMはまだ攻撃を諦めない4-2-2-1に変化。最後はC大阪が競り勝ったが、ホコタテ対決の優劣がはっきりとついたわけではない。
戦術の変化にはそれなりの理由がある。Jリーグでハイプレスに取り組むチームが増えたのも、それ以前に自陣からビルドアップしていくチームが増加していたからだ。ヨーロッパのトレンドにもそれなりの理由はある。単純にヨーロッパのトップチームのほうが優れているところもあるが、「差」というより「違い」にすぎないものもある。流行を追うことに意味がないこともあるわけだ。
ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が率いて2年目、C大阪には落ち着きと熟成が感じられる。トレンディではないし、新しくもない。選手たちにとっても目新しさは何もないかもしれない。ただ、誰もが知っているようなことを徹底させるのは、それはそれでかなり骨が折れる仕事だと思う。
優勝請負人と呼ばれたファビオ・カペッロは「私を厳しい監督だと言う人もいますが、そうではありません。真面目なだけです」と話していたことがある。カペッロの率いるチームはだいたい強かったが、目新しさは何もなかった。サッカーでは、愚直さこそが重要な力の源泉なのかもしれない。
(文:西部謙司)
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