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ハメス・ロドリゲスがすごい。ついに確保した居場所。今季のエバートンは見ておいて損はない

プレミアリーグ第1節、トッテナム対エバートンが現地時間13日に行われ、0-1でアウェイチームが勝利している。カルロ・アンチェロッティ監督率いるチームは、新戦力が大活躍。その中でも今夏の目玉補強となったハメス・ロドリゲスのパフォーマンスは、目を見張るものがあった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

いきなりホーム戦黒星

エバートン
【写真:Getty Images】

 試合中、ジョゼ・モウリーニョ監督は常に険しい表情を浮かべていた。そして、その表情が笑顔に変わることは、最後までなかった。

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 昨季、監督交代に踏み切るなど苦しい戦いを強いられながら6位フィニッシュを果たしたトッテナムは、2020/21シーズンのプレミアリーグ初戦でエバートンと対戦し、0-1で敗北。トッテナムがエバートンにリーグ戦で敗れるのは、実に2012年以来のこととなった。

 試合をざっと振り返ってみると、序盤はトッテナムペースであった。右サイドで攻撃を組み立て、長いボールを駆使して反対サイドのソン・フンミンをうまく使い、そこから縦に仕掛けて深みを作る。これがエバートンに対し、かなり効果を発揮していた。

 しかし、徐々にリズムが単調になると、流れはアウェイチームに傾く。トッテナムはボールの奪いどころを定められず、相手のビルドアップに対して後手を踏んでしまったのだ。

 それでも、カウンターはやはり鋭かった。ソン・フンミンの仕掛けは相変わらず脅威で、今夏ウォルバーハンプトンから加入したマット・ドハーティも効果的なランニングで前線に厚みを加え、崩しのオプションの一つに。完全に相手守備陣を攻略したシーンは、前半何度かあった。

 ただ、ジョーダン・ピックフォードのファインセーブもあって決定機を仕留め損ねると、反対に55分に失点。フリーキックから最後はドミニク・キャルバート=ルーウィンにヘディングを叩き込まれた。

 1点ビハインドを背負ってしまったトッテナムだが、ここからの内容はさらに厳しかった。

 ボールこそ握れるものの、昨季からの課題である“崩しの部分”で大苦戦。クリエイティブなプレーが光るクリスティアン・エリクセンのような選手がおらず、ハリー・ケインは孤立し、いつの間にかクロス一辺倒の攻めに。当然、これらはことごとくマイケル・キーンやジェリー・ミナに跳ね返されるなど、エバートンに恐怖心を与えることはできなかった。

 モウリーニョ監督はステフェン・ベルフワインやタンギ・エンドンベレらを投入し、流れに変化を加えようと試みたが、結果的に不発に。最後まで「崩し」というポイントで停滞を強いられ、ホームでの一戦を落とすことになった。

アランとドゥクレがさっそくフィット

 トッテナムは実に5季ぶりに開幕戦を落とした。内容は散々とまではいかないが、今後に向けて不安が残ってしまうようなものだったのは確か。この敗戦によるダメージは、想像以上に大きいだろう。

 しかし、彼らをそこまで追い込んだエバートンが素晴らしかったことも忘れてはならない。同チームは今季プレミアリーグにおける台風の目に…。そんな期待感を抱くような魅力があった。

 トッテナム戦では、とくに新戦力の活躍が目立った。まずここで触れておきたいのは、ナポリから加入したアランとワトフォードから加入したアブドゥライ・ドゥクレの両者だ。

 まだ第1節というにも関わらず、彼らの連係は見事だった。チャレンジ&カバーに一切の無駄がなく、お互いに相変わらず人へのアタックが強い。中央で隙をほとんど与えず、トッテナムの攻撃にブレーキをかけた。

 どちらかと言うと、ドゥクレが攻撃的な守備を行った。彼がボールホルダーに的確なアプローチをかけることでアランも的を絞りやすくなり、必然的に中央エリアが引き締まる。また、サイドバックの飛び出したスペースをアランが埋めに行けば、ドゥクレはアランが空けたスペースのサポートに回る。まるで、ずっと昔から一緒にプレーしているかのようなスムーズさがあった。

 一方、ビルドアップ時はドゥクレとアンドレ・ゴメスの両者が少し高めにポジショニング、その二人の間にいるアランは下がり目に位置。距離感を的確に保つことでパスがテンポよく繋がり、相手をつり出したことで生まれたエリアを使って着実にボールを前進させていた。

 昨季のエバートンは中盤の強度という部分に問題を抱えていたが、アランとドゥクレの両者はそこを解決するのにはうってつけの存在、ということがトッテナム戦で証明された。ビルドアップ面に関しても、とくに大きな問題はなさそうだ。

ついに居場所を見つけたハメス・ロドリゲス

ハメス・ロドリゲス
【写真:Getty Images】

 そして、エバートンの補強の目玉となったハメス・ロドリゲス。この男の活躍もまた、目を見張るものがあった。

 レアル・マドリードではここ最近ほとんど出番を得られなかったが、技術力の高さは相変わらずピカイチ。トッテナム戦では何度も中間スペースでボールを受け、巧みなコントロールでキープしてはパスを散らし、またはドリブルで前進してシュートまで持ち込むなど、多彩なアクションで攻撃に色を塗り続けた。

 とくに目立ったのが、リシャルリソンへのロングパスだ。右サイドでプレーする左利きのハメスは、必然的に内側寄りのプレーが多くなり、視線も縦より中央、あるいは反対サイドへのものが増える。すると真っ先に目に入るのは、左サイドでフリーとなっているリシャルリソンになるのだ。

 ハメスがリシャルリソンを意識しているのは、立ち上がりから明確だった。たとえば9分の場面。中央エリアに侵入したレフティーは、視線を大外のリュカ・ディーニュに向けている。しかし、パスの送り先はダイアゴナルランをみせたリシャルリソンだった。

 ディーニュはこの時完全フリー。そこにパスが通っていれば、チャンスになっただろう。しかし、ハメスはあえて難しい方を選択した。実際、このシーンはパスが長くなってチャンスには結びついていない。しかし、「動きを見ているぞ」ということを伝えるには、十分なプレーだった。

 ハメスはこの日、ほぼリシャルリソンにしかパスを出していない…。これはさすがに大袈裟だが、そう感じるほどブラジル人アタッカーへ送るボールが多かった。リシャルリソンはこの日、チーム最多となる7本のシュートを放ち、同最多11回のドリブルを成功しているが、この数字はハメスによる効果が大きいとみてもいいだろう。リシャルリソンとハメスの南米コンビは、今季のエバートンのカギを握るはずだ。

 また、コロンビア代表MFが攻撃でより良さを示すことができるのは、やはりドゥクレやアランといった中盤の選手の存在が大きい。彼らが背後をしっかりとカバーしているからこそ、思い切って前に行くことができる。単純だが、これはかなり重要なことだ。

 マンチェスター・ユナイテッドは創造性豊かなブルーノ・フェルナンデスが加入したことで前線の選手がかなり流動的になり、攻撃力が格段にアップした。ハメスが加入したエバートンにも、トッテナム戦を見る限り同じようなことが起きようとしているのかもしれない。

 いずれにせよ間違いなく言えることは、今季のエバートンは見ておいて損はない。

(文:小澤祐作)

【了】

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