リプレーのような2ゴール
第13節の鹿島アントラーズ戦、柏レイソルのエースであるオルンガが2ゴールを決めた。13試合で14ゴールのハイペースだ。
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オルンガの2ゴールは、いずれも右45度付近からの左足のシュートで、打った位置もボールの軌道もほぼ同じ。まるでリプレーのようだった。
オルンガといえば、ディフェンスライン裏へのロングボールを予想外のスピードで追いつき、長いリーチを生かしたシュートを決めるのが十八番だが、この2ゴールはキックの精度の高さがよく表れていた。どちらもファーサイドへピシャリと打ち込んだ低いシュートだった。
Jリーグのシュート練習を見ていて感心するのは、GKの能力の高さである。相当強烈なシュートでも彼らは反応できるし防げる。フリーで力一杯蹴ったシュートでも案外入らない。ただ、さすがにゴールの四隅をついたシュートは入る。とくに上隅へ飛び込むシュートは鮮やかだ。しかし、ここを狙うのはなかなか思い切りが必要でもある。PKでも上隅へ強く打てばまず入るので、狙う人も少なくないが、バーに当たったりする失敗がけっこうある。
下隅へのシュートは、GKが地面に向かって跳ぶのでボールに届くまで時間がかかる。だから得点を量産するストライカーたちが狙うのはまずここだ。もしGKに弾かれても、こぼれ球になる可能性もある。低いシュートを隅に、これが基本だろう。
ところが、プロでも低くて速いシュートを蹴る人はそれほどいない。コースはいいがスピードがない、パワーはあっても浮いてしまう、どちらかが多い。オルンガのシュートは正確で低く、スピードもあるという満点のキックだった。パワーがあるのは間違いないが、それ以前にボールの中心を叩いている。芯をとらえることで精度も速度も保証される。中心を知っている選手は中心を外して曲げることもできる。リプレーのように同じシュートを躊躇なく決めたところにオルンガの能力が表れていた。
得点になりやすいシュート
オルンガが2ゴールした試合は、土居聖真も2得点して鹿島が勝っている。土居の2ゴールはいずれもクロスボールからだ。決めたのは足と頭でシュートの方法は違っていたが、クロスボールを至近距離からダイレクトで狙うのも得点の確率が高い。
サイドからのパスは、DFにとって相手とボールを同時に見ることが難しい。まあ、ボールを見ないわけにはいかないから、蹴られた瞬間は相手を見ることができず、いわゆる「ボールウォッチャー」になるのは仕方ない。つまり、マークが外れやすい。
もう1つは、至近距離からのシュート、しかもダイレクトで蹴られた場合はGKの反応が間に合わない。そこまで完璧なコースでなくても入る。
ゴール下隅へのシュートと、クロスボールからのダイレクトシュート。この2つは古今東西を問わず得点になりやすい。オルンガと土居がそれぞれ2ゴールをゲットしているのは偶然ではないわけだ。
サッカーはより多く得点したほうが勝つ競技であり、どういうシュートが得点になりやすいかの答えも出ている。そこへボールを運ぶための工夫はいろいろあるわけだが、入るシュートはだいたい決まっているのだ。
答えはおよそ決まっているのだが、それだけにGKやDFもそうはさせまいと守る。それを上回って定石どおりにシュートできる選手はエースストライカーと呼ばれ、チームで最も貴重な存在になるわけだ。
(文:西部謙司)
【了】