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アーセナル史上最高の2トップ、アンリとベルカンプは何がすごかったのか? 現代の最新データで迫る【アーセナル伝説の2トップ(1)】

アーセナルを特集した9/7発売『フットボール批評issue29』から、アーセナル史上最高の2トップに最新データで迫った結城康平氏の「ティエリ・アンリ&デニス・ベルカンプ」を、発売に先駆けて一部抜粋して全3回で公開する。今回は第1回。(文:結城康平)

text by 結城康平 photo by Getty Images

プレミアリーグの歴史に光を照らす存在

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【写真:Getty Images】

 無敗優勝を成し遂げた2003/04シーズンのアーセナルは、主として4-4-2のフォーメーションを採用していた。

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 アルセーヌ・ヴェンゲル率いるクラブは、2003/04シーズンにプレミアリーグを独走。技術に優れたMFはリズミカルなパス回しで相手を翻弄し、両サイドバックは積極的に攻撃に参加していく。右サイドのフレドリック・ユングベリはライン際からの仕掛けを得意とし、左サイドのロベール・ピレスは内側にポジションを移動しながら積極的にチャンスメーク。中盤にはパトリック・ヴィエラとジウベルト・シウヴァを並べ、攻守に最高の人材を揃えていた。

 特にヴィエラとシウヴァが並ぶ中盤は抜群のバランスを誇り、恐らく現代サッカーでも通用するコンビネーションだろう。特に全盛期のヴィエラはフィジカルとテクニックの両面で他を圧倒しており、容赦なく中盤を制圧していく。無敗優勝の立役者となったフランス人MFの姿を、クラブの象徴として思いだすサポーターも少なくないだろう。

 ただ、攻撃的で華麗なフットボールを披露したアーセナルのイメージと適合するのはティエリ・アンリとデニス・ベルカンプではないだろうか。世界最高クラスの2トップは、プレミアリーグの歴史を輝かしく照らす光となった。UEFAの公式HPがアーセナルの過去20年から選出したベストイレブンにおいても、前線は彼ら2人となっている。師匠と弟子のような2人は、熱狂的なサポーターの脳裏に焼き付いているに違いない。

 そんなアンリのシーズンをデータ分析サイトの『StatsBomb』が、2020年の6月に解析。そのシュートマップには、中距離から積極的に狙っていくスタイルが反映されている。左右両方から狙っているが、数が多いのは明らかに左サイドだ。左サイドからはフリーキックも多く沈めており、ドリブルでエリア内に浸入するパターンも多い。芯をピンポイントで撃ち抜くブレ球のようなキックは、相手GKにとって処理が難しいものだった。

 マンチェスター・ユナイテッド戦ではゴール中央の高めにシュートを決めているが、甘いコースであってもゴールにボールを突き刺す威力を見せつけた。予備動作が少ない状態から放たれるミドルシュートは、近年ではヤヤ・トゥーレを彷彿とさせる。

 無回転シュートが着目される前に同様のボールを蹴っていたアンリは、ボールの中心を射抜くようなシュートタッチを武器にしていた。ドリブルを仕掛けることを警戒すれば、虚をつくようなミドルが飛んでくる。

(文:結城康平)

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『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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