“激戦必至の好カード”を“つまらない試合”に変えたモウリーニョ
痛恨――。前半ロスタイムにスティーブン・ジェラードが犯したたった一つのミスは、熾烈なタイトルレースにどのような影響を及ぼすのか。
このリヴァプール対チェルシーという今シーズン最大の大一番は、世界中のサッカーファンがキックオフの笛を待ち望み、胸を高鳴らせて観戦した一戦だった。
しかし、ジョゼ・モウリーニョという男は、そんな“激戦必至の好カード”を見事に“つまらない試合”に変えてしまった。
チェルシーにとって、この試合のハイライトは二度の得点シーンのみ。選手が最も多くプレーした位置を示すアクション・エリアは、チェルシーのゴール前が22.63%と圧倒的に高く、パス成功本数でもリヴァプールの530本に対して、わずか147本。個人スタッツでも20本のパスを通した選手は一人もいなかった。
それでも勝ち点3を手に入れたのはチェルシーであり、“師弟対決”を制したのは“マスター”モウリーニョだった。第1期チェルシー時代に下部組織を率いたブレンダン・ロジャースの挑戦を喜びながらも退けたのだ。
ロジャースは、04-05シーズンからチェルシーU-18の監督に就任。06-07シーズンからはリザーブチームであるU-21の監督に昇格した。その後、08-09シーズンからワトフォード、レディング、スウォンジーと2部の監督を歴任。
スウォンジーでは就任1年目でプレミアリーグへの昇格を決め、翌シーズンにはショートパスを主体とした魅力的なサッカーで評価を高めつつ11位で残留。11-12シーズンにリヴァプールの監督に引き抜かれると言った、まさにシンデレラストーリーを体現している監督だ。