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メッシを生かすことは正義? バルセロナが採用した禁断の4-4-2【メッシシステムの呪縛(1)】

歴史のあるヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた好評発売中の『フットボールクラブ哲学図鑑』(西部謙司著)から、バルセロナの章から一部を抜粋して全3回で公開する。今回は第1回。(文:西部謙司)

text by 西部謙司 photo by Getty Images

4-4-2は確かに合理的なシステムだが…

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 2017/18シーズン、エルネスト・ヴァルヴェルデ監督が就任した。元バルサの選手であり、前シーズンまではアスレティック・ビルバオを率いていた。夏のマーケットでネイマールがPSGへ移籍、代役としてボルシア・ドルトムントからウスマン・デンベレを獲得したが第9節で負傷離脱。

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 ヴァルヴェルデ監督はここで4-4-2を採用した。バルサでは馴染みの薄いシステムだが、合理的な選択である。

 メッシ自身のプレーはほとんど変わらない。スタートポジションがCFでも右WGでも、右のハーフスペースが主戦場になる。そして、最後に守備をする選手だ。

 そうすると、4-4-2は実は最も無理のないシステムといえる。最初からメッシを右のハーフスペースに置けるし、守備では前残りできる。周囲の役割もシンプルになる。ただし、バルサは伝統的に4-3-3か3-4-3を使っていて、4-4-2ではカンテラとの整合性はなくなってしまう。

 本来、システムの違いは大した問題ではない。バルサの場合、伝統的に守備では相手のシステムに噛み合わせる方針なので、ここに関してはもともと主体的ではないのだ。グアルディオラ監督の時には3-5-2も使っていた。重要なのはプレーのディテール。どういう時にどうプレーするか、一貫性を持って積み上げてきたのはそれである。

 しかし、システムが無関係というわけではない。ナポレオン・ボナパルトは「人は制服どおりの人間になる」と言ったというが、多少のシステムの影響は避けられない。

 2017/18はパウリーニョを獲得し、2018/19はアルトゥーロ・ヴィダルを獲っている。4-4-2のCHに相応しい人選だが、従来のバルサにはいないタイプのMFだ。システムがある程度人を選ぶところがあるし、システムの構造上の問題に選手が適応しなければいけないところも出てくる。4-4-2は、幾分バルサのチームとしてのあり方を歪めてしまったかもしれない。

 ただ、メッシを生かすことは正義であり、そのメリットはデメリットを上回ることもハッキリしていた。ヴァルヴェルデ監督のバルサはリーガとコパ・デル・レイを2シーズン連続で制覇している。

(文 :西部謙司)

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例えばマンチェスター・ユナイテッドは「ミュンヘンの悲劇」によって、「何があっても前進する」精神性を身に付けている。
レアル・マドリーはアルフレッド・ディ・ステファノの補強が大成功し、「計画できないところは選手が補ってくれる」ことを現在も具現化している。
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【了】

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