貴重な勝ち点3。優勝へまた一歩前進
ラ・リーガ優勝へと続く山道でバルセロナが休憩を取っている間に、レアル・マドリードはぐんぐんと歩みを進めていく。そして、彼らはもう少しで頂上へたどり着くことになりそうだ。
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現地時間2日、ラ・リーガ第33節でヘタフェと対戦したマドリーは、ホームで1-0と勝利。これでリーグ再開後6連勝とした同チームは、セルタ、アトレティコ・マドリー相手に連続ドローを喫した2位バルセロナに勝ち点差「4」をつけるなど、リーグ制覇へまた一歩前進した。
ただ、この日はギリギリでの勝利だったことは間違いない。チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得の可能性も十分に残すヘタフェはやはり簡単な相手ではなく、前節のエスパニョール戦同様、マドリーは苦戦を強いられた。とくに前半はアウェイチームにショートカウンターを食らう場面が目立ち、シュート数5本に対し被シュート数は7本となっている。
後半に入っても、マドリーはヘタフェを前に攻めあぐねた。何本か良いシュートは放ったが、GKダビド・ソリアの好セーブもあり、なかなかゴールを奪えない。スコアレスのまま時計の針は77分まで経過。この時点で少しドローを意識した人もいたのではないか。
しかし、78分。右サイドをDFダニエル・カルバハルが駆け上がると、相手ペナルティエリア内でDFマティアス・オリベラのファウルを誘発し、PKを獲得。これを“職人”であるDFセルヒオ・ラモスが冷静に沈め、マドリーが貴重な先制点を挙げた。
そして、マジョルカ戦、エスパニョール戦と連続クリーンシートを記録している守備陣は、この日も相手にゴールを与えず。今季のマドリーを象徴する、苦しくても勝ち切る強さが存分に示された試合であった。
徹底したボールキープ
では、なぜマドリーは難敵ヘタフェ相手に勝利することができたのか。それは、ジネディーヌ・ジダン監督が用意していたプランが最大の要因と言えるだろう。
ホセ・ボルダラス監督の下、ハードワークを基盤としているヘタフェは、この日も過密日程による疲労の影響をまったく感じさせないプレー強度の高さを示した。4-4-1-1のフォーメーションを採用した同チームは、本職サイドバックであるDFアラン・ニョムとDFマルク・ククレジャをそれぞれサイドハーフに配置。前から行く姿勢はスタメンからも表れていたが、それをピッチ上でしっかりと体現した。
そんなヘタフェに対し、マドリーはボールを捨てることなく、GKティボー・クルトワ含め全員で丁寧にキープした。中盤にはMFトニ・クロースとMFルカ・モドリッチを。そして、右ウイングにMFイスコを置くなど、ボールを持てる選手を起用したことからも、確実に支配するという狙いは明らかだった。
ただ、ヘタフェのプレッシャーはかなり厳しかった。ボールホルダーに対し1枚ではなく2枚が素早く寄せてくることで、マドリーは攻撃の歯車が噛み合わず。パスミスも目立ち、何度か中盤でボールをロストすることもあった。先述した通り、そこから鋭いショートカウンターを繰り出される場面も散見されたのだ。
それでも、マドリーは頑なにボールを手放さなかった。イスコをある程度自由に動かし、FWカリム・ベンゼマがサイドに流れるなど動きにも変化をつけながら、ヘタフェの攻略を試みていたのだ。そんなマドリーに対しアウェイチームはお構いなしにプレスを仕掛けてくる。まさに、一進一退の攻防であった。
マドリーのボール支配はある程度の賭けだったようにも思う。低い位置からのビルドアップは一つの判断ミスが原因で失点を招きかねない。相手がハードワークを徹底するヘタフェであれば、なおさらだ。実際、低い位置で奪われてピンチを招くこともあった。
ただ、それでもジダン監督には守備陣に対する確かな信頼があったのだろう。DFラファエル・ヴァランが途中交代を余儀なくされるアクシデントこそあったものの、クルトワとS・ラモスを中心とした守備は非常に堅く、安定していた。だからこそフランス人指揮官は、苦戦しつつもヘタフェに対し強気な姿勢を貫いたと言えるだろう。
ジダン監督の采配ズバリ
0-0で迎えた後半の立ち上がりも試合展開に大きな変化はなかった。しかし、前半から徹底してボールを支配したことで、ヘタフェイレブンが徐々に体力を奪われていたことは明らかだった。
それを好機と見たジダン監督は、65分が経過する前に一気に動き出した。イスコ、FWヴィニシウス・ジュニオール、モドリッチを下げ、FWロドリゴ・ゴエス、FWマルコ・アセンシオ、MFフェデリコ・バルベルデと、走力のある3人をピッチに送り出したのである。
すると、アセンシオやロドリゴが幅を使った縦に素早い攻撃は大きな効果を発揮。ヘタフェは最終ラインでかなり奮闘していたが、体力的にはやはり厳しい印象を受け、前半ほど中盤でボールを刈り取ることはできていなかった。
77分には、マドリーがテンポの良いパスを駆使して中盤を攻略。ヘタフェはワンタッチで繋ぐ相手に対しプレスを無効化されてしまい、結果的には右サイドのカルバハルをフリーとしてしまった。そして、そこから一気にペナルティエリア内まで侵入され、PKを与えている。
相手のスタイルを理解しながらも強気な姿勢を崩さず、若干の隙が生まれたところで一気に勝負に出る。結果論にはなってしまうが、ジダン監督の采配は見事に的中したと言えるだろう。前半から準備していたプランは、非常に効果的であった。
ただ、ヘタフェの奮闘ぶりも見逃せない。後半はやや失速したが、マドリーを大いに苦しめたハードワークは素晴らしかった。何より個人で戦っておらず、チームとして連動した戦いぶりが光っていたのは非常に印象的。敗れたとはいえ、本当に僅差のゲームであったと言えるだろう。
さて、そのヘタフェに勝利したマドリーは、恐ろしいほど状態が良い。途中出場組もしっかりと仕事を果たすなど、指揮官と選手の信頼関係があのライバルクラブとは違ってしっかりとしている印象がある。次は中2日でアスレティック・ビルバオ戦と厳しいが、勢いのままに勝利を掴むことができるか。
(文:小澤祐作)
【了】