アクシデントが続くアーセナル
今のアーセナルのことを泣きっ面に鉢というのだろう。3日前のマンチェスター・シティ戦に続き、この日もアーセナルは不運に見舞われた。しかし、ブライト戦で喫した逆転負けの原因をアクシデントに求めてはいけない。指揮官の言葉を借りれば、「自業自得」の敗北だった。
【今シーズンのアーセナルはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
シティ戦では開始早々にグラニト・ジャカが味方と交錯して負傷。さらに、パブロ・マリも前半のうちに左足を痛めて退いている。マリと交代で入ったダビド・ルイスは前半アディショナルタイムに先制点につながるミスを犯し、後半早々にPKを与えて一発退場となった。
ダビド・ルイスは2試合の出場停止となり、マリとジャカは戦線離脱。まさに踏んだり蹴ったりの再開初戦を0-3で落としたアーセナルは、敵地のアメリカン・エクスプレス・コミュニティに乗り込んだ。
今季序盤のような出口の見えないビルドアップは見る影もなく、選手の配置は整理された。右サイドバックのエクトル・ベジェリンはDFラインの1列前でインサイドに絞り、インサイドハーフで起用されたブカヨ・サカとウイングのニコラ・ペペが幅を作り、ダニ・セバジョスは相手のDFとMFの間受けを担当。彼らは時折ポジションを入れ替えることで相手のプレッシャーを回避していた。
決定機こそあまり多くなかったが、アーセナルは前半の主導権を握っていた。相手GKの好セーブもあって得点を奪えずにいると、相手のロングボールをキャッチしたベルント・レノにニール・モパイが衝突。レノは着地の際に足を捻り、プレー続行ができなくなった。
アーセナルは不安定な守備陣をこれまで支えてきたレノを失ってしまった。しかし、緊急出場となったエミリアーノ・マルティネスは安定したプレーで仕事を全うしている。
痛恨の逆転負け
後半に入ってビルドアップの形を変えたアーセナルは、フィニッシュに持ち込む機会を増やしていった。すると68分、サカからボックスの角付近でボールを受けたペペは細かい間合いから左足を振り抜く。美しい弧を描いたボールは、それまで好セーブを見せていたマシュー・ライアンの伸ばした手の先を通り、ゴールネットに吸い込まれた。
198cmのダン・バーンをはじめ、高さでは分があるブライトンはCKから得点を狙ったが、キックの精度を欠いてチャンスへはなかなかつながらなかった。それでも、75分のCKでショートコーナーを選ぶと、途中出場のソロモン・マーチがゴール前に入れたグラウンダーのボールを、混戦からルイス・ダンクが押し込んで同点とした。
1-1で試合は後半アディショナルタイムに入った。引き分け濃厚と見られたが、途中出場のアーロン・コノリーのスルーパスに反応したモパイが決めて逆転に成功。2-1で勝利したブライトンは残留に向けて大きな勝ち点3をビッグクラブから奪った。
アーセナルはエディー・ヌケティアを入れる際にキーラン・ティアニーも投入しようとしたが、同時交代が認められなかった。ハーフタイムを除いて交代は3度までしか認められないルールで、前半にアクシデントにより交代を使っていたアーセナルはその後、3人を同時に交代せざるを得なくなった。
自業自得
レノの負傷、認められなかった交代と、またしてもアーセナルは不運に泣かされた。オーバメヤンがミリ単位でオフサイドを取られたのもハードラックだった。しかし、それ以上に直接の敗因になった出来事があった。
試合終了のホイッスルが鳴った後、レノと接触したモペイとアーセナルの選手が言い争いになった。モペイによればレノの負傷の後、アーセナルの選手に様々な言葉を浴びたという。アーセナルの選手たちはアクシデントの後、試合にフォーカスできていなかった。それまではなかった奪われ方からカウンターを浴びるシーンが増え、決定機を決めきれなかった。そして、一瞬の隙を突かれて終盤に失点を重ねた。
「ほかの選手を怪我させてやろうという意図がないと信じている」とアルテタは試合後にコメントした通り、モパイにも怪我させるつもりはなかっただろう。モパイはハーフタイムに敵将に謝罪までしている。しかし、アーセナルの選手たちは冷静さを失ってしまった。
アルテタは敗因について、「自業自得だったと思う」と話し、「注意を失った瞬間に痛い目に合う。それが起こったのはこれが初めてではない」と、失点の理由を自軍に向けている。さらに、それを選手に徹底できなかった自身に責任があると述べた。
不運や相手に原因を求めるのは簡単だが、その先に成長はない。アクシデントが続いているのは事実だが、アーセナルに改善すべきポイントがあるのもまた事実である。アルテタが言うように、アーセナルは外的要因に惑わされずに自分たちに矢印を向けなければいけない。果たして、アルテタは10位に転落したアーセナルをどのように立て直していくのだろうか。
(文:加藤健一)
【了】