前半はまさに圧倒
現地時間13日に行われたラ・リーガ第28節、マジョルカ対バルセロナはFWリオネル・メッシの活躍もあり、0-4でアウェイチームが大勝。この結果、バルセロナは勝ち点を61にまで伸ばし、首位の座をキープすることになった。
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そのライバルチームに後れを取るまいと、2位レアル・マドリーも続いた。現地時間14日、エスタディオ・アルフレッド・ディ・ステファノにエイバルを迎えた白い巨人は、リーグ再開初戦を3-1で勝利。バルセロナとの勝ち点差を再び「2」に縮めることに成功している。
この日のマドリーは試合開始早々からエンジン全開だった。4分という早い時間にMFトニ・クロースのビューティフルゴールでリードを奪うと、その後もエイバルを相手にゲームの主導権を完全掌握。リーグ再開初戦とは思えないインテンシティの高さを誇示していた。
誰がというより、チーム全体としてのコンディションの良さは明らかだった。ボールを奪ってからのアクション、奪われてからのアクション共にとてつもなく速く、エイバルに余裕を一切与えない。マドリーがこの試合に向けて非常に良い準備が出来ていたことは明らかで、もともとあった力の差がさらに大きくなったような印象も受けた。
マドリーは攻撃時、FWカリム・ベンゼマを中心に縦に素早いボール回しを展開。前線で一つタメを作り、サイドバックやインサイドハーフの選手がサポートに来た段階で一気にギアを入れ、エイバルDF陣を深い位置まで押し込んだ。FWエデン・アザールやFWロドリゴ・ゴエスも果敢に相手の背後へランニング。アグレッシブな姿勢を前面に押し出していた。
守備時はMFカゼミーロが躍動。フィジカルの良さを活かして幾度となくボールをカットし、危険と見れば最終ラインに落ちてCBのカバーに回るなど、常にパトロールを怠らなかった。相変わらず守備範囲も広く、エイバルにとってここは大きな悩みの種になっていたと言えるだろう。
と、攻守両面で相手を圧倒していたマドリーは、30分にDFセルヒオ・ラモスが見事なインターセプトから前線へ飛び出し、最後はアザールが出したパスをゴールへ。リードを2点に広げた。さらに、その6分後にはDFマルセロが左足で得点。下位に沈むチームを一気に引き離した。
前半はこのまま3-0で終了。この時点でマドリーの勝利は必然だったとも言えるだろう。それほど完璧な試合内容であった。
選手交代で流れは一変
しかし、後半はまさかの展開となった。前半圧倒されていたエイバルが、マドリーを相手に試合のペースを握ったのである。
では、なぜアウェイチームは流れを引き寄せることができたのか。よりプレスの強度を高め、60分にDFペドロ・ビガスが1点を返して勢いが出たことももちろんそうだが、最大の要因はマドリーの選手交代にあると見ていいだろう。
ジネディーヌ・ジダン監督は後半頭からDFダニエル・カルバハルに代えDFフェルラン・メンディを投入したが、彼を本職の左ではなく右サイドにそのまま配置している。当然、F・メンディが右サイドでプレーするのはマドリー加入後これが初めてのことだ。
フランス人DFは持ち味であるスピードとフィジカルの強さを発揮し、慣れないポジションにおいても随所で効果的なプレーを見せていた。しかし、やはり苦労したのはビルドアップの場面。利き足が左であるがためにどうしても内側にボールをコントロールしてしまい、相手から球を隠すことができず、何度か自陣で奪われることがあった。カルバハルのようにスムーズに縦へボールを送ることが、なかなか出来なかったのである。
さらに、ジダン監督は61分にFWガレス・ベイル、DFエデル・ミリトン、FWヴィニシウス・ジュニオールを一気に投入。戦術面ではなく、アザールらの疲労を考慮しての交代であった。
しかし、これでマドリーの勢いは完全にストップした。ベイルはコンディションが全く整っておらず、覇気のないプレーに終始。V・ジュニオールは縦への推進力を見せたものの、アザールのような脅威は感じられず。マルセロが足に違和感を覚えたため、その分守備への負担が少し増えたことも痛かった。
選手を5人交代できることは魅力だ。様々な選手を試すことができ、戦術上の変更もより多く行え、何より主力選手の疲労を抑えることができる。今後、過密日程が続く中で、積極的に交代枠を使っていくことが監督には求められるだろう。
しかし、この日のマドリーのように、交代によって流れが大きく変わってしまうことも否めない。5人の交代は単純に考えると、フィールドプレーヤーの半分を入れ替えるということ。リズムが崩れるリスクは、3人の交代よりもはるかに大きいと言える。ただ、やはり選手の身体への負担を考えると、上記した通り交代枠を余らすわけにはいかない。その中で、どれだけ選手交代によるリズムの波を抑えることができるか。ジダン監督のみならず、他の指揮官にとっても今後の大きな課題になると言えそうだ。
と、5人を入れ替えエイバルにペースを握られたマドリーであるが、前半で奪った3点が大きく3-1で勝利。今後に向け勢いのつくような白星であったと言える。
今後に期待を抱かせた背番号7
「後半はあまりうまくいかなかった。しかし私は前半を高く評価しているよ。とても良かったし、力強かったからね。重要な勝利だし、本当に貴重な勝ち点3だ」。
クラブ公式サイトによると、ジダン監督は試合後の会見でこのように話していたという。久々の公式戦で、指揮官からしてもホッとした結果になったと言えるだろう。
そして、ジダン監督は「彼は自分がやったことに満足しているし、我々も彼やチーム全体の仕事ぶりに満足している」(クラブ公式サイトより)と、ある選手に称賛の言葉を送った。それが、エデン・アザールだ。
今季は開幕当初からオーバーウェイトを指摘され、シーズンが進んでも負傷離脱を繰り返すなど、高額な移籍金に見合わぬパフォーマンスに終始していた同選手だが、この日はキレキレなプレーを披露。中断期間中にしっかりと体を絞ってきたなという印象もあった。
アザールは30分にS・ラモスのゴールをお膳立てし、36分にはマルセロのゴールが生まれるキッカケを作り出すなど、相手ゴール前で見事な仕事ぶりを発揮。その他の場面でも積極的に相手の背後を狙うスプリントを行い、ドリブルで相手を剥がし、ボールキープ力の高さも誇示するなど、マドリディスタが求めていた動きをピッチを退く60分まで継続していた。
データサイト『Who Scored』によると、アザールはこの日、チーム内2位となるドリブル成功数2回を記録し、パスは30本と少ないものの成功率は90%と申し分ない数字を残した。同サイト内におけるレーティングも「7.6」と高評価となっている。
エイバル戦におけるアザールは強く、速く、そして恐ろしかった。まだまだトップな状態ではないかもしれないが、ラ・リーガ制覇を目指すマドリーにとっては今後も間違いなく必要不可欠な存在となるだろう。過密日程が続くため怪我のリスクは当然付きまとうが、徐々にコンディションを上げていってほしいところだ。
(文:小澤祐作)
【了】