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前田大然、ポルト戦で逃したチャンスの重み。中島翔哉や権田修一ら日本人選手の現状は?

ポルトガル1部リーグの第26節が現地10日に開催され、マリティモはポルトに敗れ、ポルティモネンセはベンフィカと引き分けた。この2試合の結果によって、優勝争いにまた動きが出てきている。そして再開から2試合を終え、ポルトガル1部でプレーする4人の日本代表選手たちの現状も見えてきた。彼らは今どのような状況に置かれているのだろうか。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

前田大然がクロスに飛び込むも…

前田大然
【写真:Getty Images】

 ポルトガルリーグの熾烈な優勝争いに、また動きがあった。

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 新型コロナウイルス感染拡大による中断が明けた前節、ポルトがファマリカンに敗れ、ベンフィカがトンデラと引き分けたことで、首位と2位の勝ち点が並んだ。

 今季はポルトがベンフィカとの直接対決で2勝しているため辛うじて首位の座を守っていたが、いつ陥落してもおかしくない状況に。ベンフィカにとっては順位表のトップを奪還する千載一遇のチャンスがやってきた。

 ところが、現地10日に迎えたポルトガル1部リーグ第26節で、両チームの勝ち点差は開いてしまった。なんとベンフィカは17位ポルティモネンセとの一戦に引き分けてしまったのだ。一方、ポルトはホームで残留争いの渦中にいるマリティモに勝利し、2位との差を2ポイントに広げた。

 ポルトとの対戦に挑んだマリティモのFW前田大然には、不運が重なった。

 まず開始6分でポルトに先制ゴールを奪われてしまう。スローインからの流れで、MFナヌがクリアを空振りすると、ポルトのMFヘスス・コロナが振り返りざまに右足を一閃。ゴール方向もGKの位置も確認せずに蹴ったシュートは、きれいな放物線を描いてゴールネットに吸い込まれた。

 かつて川崎フロンターレでもプレーしたDFレネ・サントスの必死のブロックは追いつかず、GKシャルレスも一歩も動けず。誰もが予想しなかったタイミングでのシュートに、撃ったコロナ本人も少々驚いているようだった。

 この失点以降の展開はポルト優勢ながら、マリティモにも十分にチャンスがあった。シャルレスが「引き分けが妥当だったと思う。3ポイントを獲得してもおかしくなかった」と試合後に語ったのも、あながち間違ってはいないと感じる。

 もちろん前田にも決定機があった。まず8分、失点から試合を再開させてすぐのプレーだ。中盤からのロングボールに抜け出して、スピードで名手ぺぺも振りきり、GKと1対1に。ゴールに対して角度はないところからループ気味にシュートを狙ったが、ゴールからはわずかに逸れてしまった。

 そしてポルト戦で前田が最大のチャンスを迎えたのは17分だった。ピッチ中央でFWジョエル・タグエウが相手の安易な横パスをカットしてカウンターを仕掛け、右サイドに展開する。そこにはナヌが走っており、ボールを受けたギニアビサウ代表MFは相手に寄せられながら、ディフェンスラインとGKの間に絶妙なアーリークロスを供給した。

 逆サイドから走り込んでいた前田は、ゴール前でバウンドしたナヌのクロスにフリーで合わせたが、左足はボールを芯で捉えられず。シュートはゴールの左に外れ、天を仰いで両手で顔を覆った。サッカーに「たられば」はないが、決めていれば試合の流れは大きく変わっていたはずだ。

マリティモを襲った不運なアクシデント

 リーグ戦再開から2試合連続で先発起用された前田は、序盤から様々なポジションに顔を出してチャンスをうかがっていた。マリティモは強豪ポルトが相手ということもあり5バックを採用していたが、中盤から前線の選手の並びは流動的で、複数のポジションをこなせるナヌや前田がサイドを入れ替えながらポルトの守りを撹乱しようとしていた。

 前田とタグエウが2トップで並ぶ5-3-2。右サイドにナヌ、左サイドに前田が入る、あるいは2人がサイドを入れ替える5-4-1。これらを時間帯によって使い分け、しぶとく守ってからの前田やタグエウの身体能力を生かしたカウンターに攻め手を見出していた。

 しかし、最悪のアクシデントが前半のうちにマリティモを襲う。左サイドバックに入っていたルベン・フェレイラが、何もないところで突如右ふくらはぎを抑えて倒れこみ、そのまま36分にブルーノ・シャダスと交代を余儀なくされてしまった。

 代わりに入ってきた選手はアタッカーだったため、ユーティリティプレーヤーのナヌが左サイドバックに移る。何よりも痛かったのは、高精度のクロスとセットプレーでチャンスメイクに多大な貢献が期待されたルベン・フェレイラを失ってしまったことだった。

 後半はマリティモがボールを持つ時間が長くなり、両サイドバックのスタートポジションを高くすることで攻撃に出る回数も増えた。5バックの粘り強い奮闘とGKシャルレスの好セーブなどでポルトの攻撃をしのぐこともできていた。

 だが、カウンターにおけるサイドからのアーリークロスという武器を失ったことで、マリティモの前線の迫力は薄れてしまった。今節から5人の交代が認められたことで戦術の幅も広がり、60分過ぎからは4バックに切り替えたものの、なかなかシュートまで持ち込めない。

 前田も76分に交代を告げられ、ゴールを奪うことはできなかった。最終的には1-0のままポルトが勝利。マリティモのジョゼ・ゴメス監督は試合後のテレビインタビューで「ポルトから勝ち点を取れたかもしれなかった」と悔やんだが、最後の決め手に欠けた。

待たれる中島翔哉の復活

中島翔哉
【写真:Getty Images】

 マリティモは前節ヴィトーリア・セトゥバルと1-1で引き分けたが、試合は終始優勢に進め、VARの介入によって取り消されたゴールが2つあった。ビデオによる確認がなければ、問題なく認められていたであろう2つのゴールがあれば完勝だっただろう。2試合続けて、あまりにも惜しい形で勝ち点を取りこぼしてしまった。

 一方、コロナのミラクルシュートで勝ち切ったポルトも痛手を被った。出場停止から復帰したアレックス・テレスが、終盤に2枚目のイエローカードを受けて退場に。次節は再び出場停止となる。また警告の累積が5枚に達したウィルソン・マナファも次節出場停止が決まった。

 ただでさえ層の薄い両サイドバックがともに次節アヴェス戦で起用できないことになり、最終ラインの構成にセルジオ・コンセイソン監督も頭を悩ませることになるだろう。特にアレックス・テレスは2枚目のイエローカードを提示される前に足をつっていたのに、交代できなかった。

 コンセイソン監督は試合後に「交代よって入れ替えるつもりはなかった。アレックス・テレスのような選手は違いを生み出せる」と信頼を強調したが、これは同時にベンチの苦しい事情も物語っている。

 冬の移籍市場でアルゼンチン代表のレンゾ・サラビア(指揮官の信頼はほぼゼロだったが)を放出し、契約延長したばかりのトマス・エステベスはベンチ外。サイドバックの人材難は如何ともしがたい。

 また、体調を崩した夫人に付き添うため離脱した中島翔哉もいまだチーム練習に戻ってきておらず、「経営陣が解決すべき問題」と起用のめどが立っていない。似通った特徴を持つ選手は複数いるが、攻撃で流れを変えられる駒が不足しており、5人の交代枠をフル活用するのすら難しい状況だ。

 マリティモ戦ではアレックス・テレスの退場によって当初準備していたBチーム上がりの2人の若手の起用も取りやめざるを得なかった。次節以降に向けて若手のテストの機会を失ってしまったのも痛い誤算だっただろう。

対照的なポルティモネンセの2人

安西幸輝
【写真:Getty Images】

 前節、自身が出場したリーグ戦で初めての勝利を挙げたポルティモネンセの権田修一は、今節も先発フル出場で安定感あるプレーを披露し、ベンフィカとのドローに大きく貢献した。

 前半の2失点は味方のミスも重なった不運なもので、それ以外の場面では鋭いシュートも正確なキャッチングで処理。危険なクロスも相手に触られる前に弾き出した。そして味方が後半にスーパーゴール2発で取り返し、ポルティモネンセは2-2に持ち込んで残留に向けた貴重な勝ち点1を獲得している。

 一方でパウロ・セルジオ監督が就任してから安西幸輝が信頼を失っている様子なのは気がかりだ。新監督就任初戦こそ先発起用されたものの、その後は4試合連続でベンチスタートになり、その間に出場したのは1試合だけ。今節はついにベンチ外になってしまった。それでもポルティモネンセは徐々に調子を上げてきており、2人の日本人選手も逆境を乗り越えてチームとともに波に乗っていってもらいたい。

 前田もゴール数を伸ばしてマリティモを残留に導ければ、さらに評価は上がるだろう。現時点でもチームの攻撃の中心と考えられているのは間違いなく、爆発的なスピードも相手の脅威になっているので、あとはゴールを決めるだけだ。

 そして、ポルトでは中島の復活が待たれる。チーム練習に戻り、監督の信頼を勝ち取るために一から出直さなければならないが、コンディションさえしっかり整えれば必ず重要な戦力になれる。とにかく勝ち続けなければならない優勝争いにおいて、チームのギアをもう一段階上げるには背番号10の突破力が必要になる。

 ポルトガル1部リーグも残り8試合。優勝争いも残留争いも佳境を迎え、気の抜けない戦いが続いていく。4人の日本代表選手たちには、チームを先頭に立って引っ張っていくような活躍に期待したいところだ。

(文:舩木渉)

【了】

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