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リバプールの不調の原因は…。久々に機能したトランジション、逆転勝利で見えた改善の兆し

プレミアリーグ第29節、リバプール対ボーンマスが現地時間7日に行われ、2-1でリバプールが勝利を収めた。9分に先制を許したリバプールだったが、8分間で2つのゴールを奪って逆転に成功した。首位を独走するリバプールは、ここ4試合で3敗を喫していたが、この試合で復調の足がかりを掴んでいる。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

不調の原因は…

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【写真:Getty Images】

 風邪をひいて病院に行くと、問診をされる。医者は症状から見当をつけて薬を処方する。1週間か2週間か、薬を飲んで休息をとり、快方に向かわなければ、別の方法を試す。その繰り返しで風邪が治れば、その方法が正しい方法だったと証明される。

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 リバプールは不調の真っただ中にいる。セカンドチームで臨んだカラバオカップ準々決勝を除いて、5か月に渡って負けていなかったチームが4試合で3回負けた。病気と同じように、不調の原因は必ずあるはずだ。

 4試合で8失点を喫していたチームは、この試合でも前半早々に崩されてしまう。ボーンマスはロングカウンターで敵陣に押し込むと、右サイドからジェフェルソン・レルマが折り返したボールを、カラム・ウィルソンがゴールに流し込んだ。リバプールの失点渦が思わずフラッシュバックした。

 しかし、守りを固められたアトレティコ・マドリード戦のように攻撃陣が沈黙することも、ワトフォード戦のように立て続けに失点を重ねることもなかった。25分にモハメド・サラー、33分にサディオ・マネがゴールを奪って逆転に成功すると、その後はほとんど相手にチャンスを与えることなく時計の針を進めて、2-1で勝利を収めた。

機能したトランジション

 1試合で判断するのは尚早かもしれないが、不調は脱したように見えた。少なくとも、この4試合で苦しんでいた部分は良くなっていた。

 まず、トランジションが機能していた。ボールを奪われた瞬間にボールホルダーへ襲い掛かるプレッシングはリバプールの代名詞だが、ここのところは影を潜め、カウンターにつなげられて自陣に押し込まれる場面が少なくなかった。先制点はその悪い例だったのだが、それ以降は改善していた。

 反対に、2得点はともにボールを奪ったところから生まれている。1点目は、スティーブ・クックの負傷により19分に投入されたジャック・シンプソンのトラップが大きくなったところを見逃さなかった。マネがボールを奪ってパスを送ると、サラーのシュートは相手DFの股を抜いてニアサイドをぶち抜いた。

 逆転ゴールはそのわずか8分後。フィルジル・ファンダイクが相手のパスをカットすると、DFラインの裏をとったマネにスルーパスを通した。GKとの1対1となると、マネは冷静にボールを浮かせてゴールネットを揺らした。相手の隙を見逃さない2人のボール奪取からリバプールは2得点を挙げた。

ミルナーの復帰とヘンダーソンの不在

 空中戦の勝率で相手を上回ることができた。データサイト『Who Scored』によれば、この試合では51%をマーク。アトレティコ戦以降は相手を下回る試合が続いていたが、5試合ぶりに50%を超えたことが、この試合の勝因のひとつに挙げられる。

 球際の勝負という意味では、ジェームズ・ミルナーの復帰は大きい。34歳の副将は、2月15日のノーリッジ戦でハムストリングの負傷から戻ってきたが、再び離脱して3日のチェルシー戦で復帰したばかり。2か月ぶりの先発出場を果たしたミルナーは、大事をとってベンチを外れたアンドリュー・ロバートソンに代わって左サイドバックに入った。

 フィールドプレーヤー最年長の34歳は誰よりも走り、誰よりも戦った。61分にはライアン・フレイザーのループシュートをゴールライン手前でクリアしてチームを救っている。ジョーダン・ヘンダーソンに代わってキャプテンマークを巻くミルナーは90分を通して、そのプレーでチームを鼓舞し続けていた。

 今季のリバプールは先制されても逆転でき、リードを守り切れる勝負強さが備わっていた。その一端が見えたのが開幕節のノーリッジ戦。4-0とリードした場面でシュートを外したヘンダーソンは悔しさを露わにした。「試合は終わっていない。油断するな」という無言のメッセージを背中で表現した。

 ヘンダーソンのキャプテンシーはスタッツにこそ表れないが、ピッチにいることの影響力は計り知れない。アトレティコ戦でハムストリングを痛めたヘンダーソンの不在は、チームの低調ぶりとリンクする。いなくなったことで偉大さを痛感した。

ポジショニングの改善

 リバプールはここ5試合で9つの失点を喫しているが、1/3はセットプレーで、1/3は不用意なボールロストが原因だった。クリーンシート(無失点)とはならなかったが、この試合でその2つからの失点がなかったことは、今後に向けた好材料ではある。

 ウェストハム戦後に指揮官が指摘したフォーメーションも、この試合では改善しているように見えた。公式サイトは「我々はハードに戦えた」「後半は試合をコントロールした」とボーンマス戦後の指揮官のコメントを伝えている。ポジショニングが良くなったことで球際の激しさが高まり、試合の制圧へとつながった。

 不調に陥っているうちは、不調の原因がわからないことが多い。復調して初めて不調の原因がわかるのは、風邪をひいたときに似ている。改善は見られたが、リバプールが本当に復調したかどうかはまだわからない。ボーンマス戦の逆転勝利は、風邪でいう病み上がりか、薬で症状を抑えただけのような状態だった。

 3敗はすべてアウェイで喫したもので、アンフィールドでの無敗記録は1年半も続いている。奇跡を起こしてきたアンフィールドで、リバプールは11日にUEFAチャンピオンズリーグラウンド16・2ndレグを戦う。リバプールが本来の姿を取り戻したかどうかは、その時にわかるはずだ。

(文:加藤健一)

【了】

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