アウェイのアーセナルが勝利
1stレグでのスコアレスドローは、どちらにとっても悪い結果ではない。オリンピアコスからすれば、2ndレグでアウェイゴールさえ奪えれば引き分けでもいいし、アーセナルにとってはホームで勝ちさえすればいい。
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そんな考えが頭をよぎり始めた試合終盤の81分、アーセナルはアレクサンドル・ラカゼットのゴールで先制。貴重なアウェイゴールを奪うとともに、0-1でオリンピアコスに勝利を収めた。
ともに直近のリーグ戦を4-0で下して、UEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32の1stレグを迎えている。過去にCLグループリーグで4度、同じグループに入っている両者の対戦成績は4勝4敗と五分で、いずれの年も1勝1敗が続いている。
立ち上がりから主導権を握ったのは、ホームのオリンピアコス。18勝6分で首位を走る国内リーグの勢いをそのままに、4-3-3の布陣で相手陣内へと攻め入った。ゲオルギオス・マソラスのクロスをファーでマテュー・ヴァルビュエナがボレーでゴールを襲うが、ベルント・レノが横っ飛びで防ぐ。さらに1分後にはヴァルビュエナのクロスにマソラスが頭で合わせたが、惜しくもオフサイドの判定となった。
序盤はオリンピアコスが主導権を握って5本のシュートを放ったが、ファーストシュート以外は枠を捉えられず。アーセナルもボール保持率を高め、敵陣でプレーする時間を徐々に増やしていった。前半は4本のフィニッシュにつなげたが、決定機を作ることはできなかった。
左SBのサカが躍動
試合が終盤へと進み、両チームともに交代カードを切っていくが、スコアは動かない。アーセナルはガブリエウ・マルティネッリに代えてダニ・セバジョス、ジョー・ウィロックに代えてニコラ・ペペを入れた。
アーセナルはGKからショートパスを繋ぐと、スコドラン・ムスタフィから左サイドに開いたオーバメヤンへとロングパスが渡る。インナーラップするブカヨ・サカへとパスが渡ると、縦に運んでGKとDFの間にグラウンダーのクロスを通す。ラカゼットがこれをワンタッチでゴールに押し込んだ。
18歳の左サイドバックが躍動を続けている。ブカヨ・サカは12月以降、セアド・コラシナツやキーラン・ティアニーの離脱などの影響もあり、本職のウイングではなく、左サイドバックを任されている。守備では不安定なプレーを見せることもあるが、攻撃においてはそのポテンシャルを如何なく発揮している。
サカは直近のニューカッスル戦でも同じような形からアシストをマークしている。ワイドに開いたオーバメヤンに相手DFがついていくことで生まれたニアゾーンをサカが突いたことで生まれた2つのゴールは再現性があり、今後も有効な形になるだろう。
GKレノの攻守にわたる貢献
勝利に大きく貢献したという点では、ベルント・レノの存在を忘れてはいけない。今大会のグループステージでは、第2GKのエミリアーノ・マルティネスにゴールマウスを譲ってきたが、この試合で初めてスターティングラインナップに名を連ねた。
試合開始直後のシーンでは強烈なボレーシュートをセーブするなど、2つのセーブをマークしている。クロスへの飛び出しでも冷静な判断が光り、オリンピアコスが作った決定機の芽を摘んでいる。
アーセナル公式サイトによれば、「そんなに簡単ではなかったけど、チームを助けることができて幸せだよ」と試合後のレノはコメントしている。小雨が降り、スリッピーなピッチにも関わらず、正確なセービングとクリアで守備陣をけん引した。
10位に沈むプレミアリーグで、レノはリーグ2位となる95個のセーブをマークしている。26試合で34失点は8位タイの数字だが、ドイツ人守護神の存在がなければもっと多くの失点を喫していたに違いない。リーグ最多の13を数える引き分けのいくつかは負けに変わり、残留争いに足を踏み入れていたかもしれない。
センターフォワードと中盤の一枚が両センターバックにアプローチして圧力をかけるオリンピアコスのプレスは、試合序盤のアーセナルを苦しめた。ニューカッスルは1トップだけだったので労せずボールを運べたが、この試合では4対4という状況をオリンピアコスが作っている。
しかし、レノがビルドアップに積極的に参加することで、次第に相手の中盤は前に出られなくなっていった。データサイト『Who Scored』によれば、27本のパス成功数こそ際立って多いわけではないが、88.9%という高い数字を残した。攻守にわたってドイツ人守護神の正確なパフォーマンスは、替えが利かない唯一無二の存在となっている。
昨季の決勝でチェルシーに敗れて苦杯を舐めさせられたアーセナルは、アウェイで行われた1stレグで貴重な勝利をもぎ取った。レノがこれまで見せてきたようなパフォーマンスをホームで行われる2ndレグでも披露すれば、ラウンド16進出はそう難しくないミッションになるだろう。
(文:加藤健一)
【了】