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プレミアリーグの降格予想は…。無策無能のモイーズ、やはり役立たず。生き残りたければ肝を据えろ【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

プレミアリーグは変則的な中断期間を経て、シーズンは終盤戦へと向かっていく。下位チームは様々な課題を抱えながら、残留するための戦いに臨む。プレミアリーグの論客、粕谷秀樹氏が指揮官や選手層などの現状を鑑みて、残留争いの展望を記す。(文:粕谷秀樹)

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

役立たずのモイーズ

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【写真:Getty Images】

 ヘタすりゃ7連敗もありうる。ウェストハムが正念場を迎えた。

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・2月9日:マンチェスター・シティ(アウェイ)
・2月24日:リバプール(アウェイ)
・2月29日:サウサンプトン(ホーム)
・3月7日:アーセナル(アウェイ)
・3月15日:ウォルバーハンプトン(ホーム)
・3月20日:トッテナム(アウェイ)
・4月4日:チェルシー(ホーム)
※時間はすべて現地時間

 まさに〈地獄〉の7連戦だ──。

 25節終了時点で6勝6分13敗の18位。降格圏に足を突っ込んでいる。1年半ぶりに復帰したデイビッド・モイーズ監督も大方の予想どおり役に立たず、就任後は1勝2分3敗。相変わらず無策をさらしている。その程度の男が、シティとリバプール、アーセナル、トッテナムとのアウェイゲームで勝点を稼ぐ可能性はほとんどない。

 ホームゲームとはいえ、チェルシーに勝てたり、引き分けたりできるのだろうか。ゲームプランの構築ではウルブズのヌーノ・エスピリト・サント監督が、サウサンプトンのラルフ・ハーゼンヒュットル監督が、モイーズをはるかに上まわっている。ウェストハムには7連敗のリスクが十分すぎるほどに漂ってきた。

ウェストハムは「このままだと落ちる」

 タレントは揃っている。GKはリーグ屈指の名手ウカシュ・ファビアンスキ、CBのイサ・ディオプはビッグクラブが触手を動かす逸材だ。中盤にもマーク・ノーブル、マヌエル・ランシーニ、カルロス・サンチェス、デクラン・ライスなど個性豊かな選手を擁し、前線はフェリペ・アンデルソン、ミカイル・アントニオ、アンドリー・ヤルモレンコがいる。

 モイーズもマヌエル・ペジェグリーニ前監督も、恵まれた陣容をなぜ生かせないのだろうか。つねに行き当たりばったりで、主力のコンディションが整っているときにかぎり、上位との対戦でも健闘する。要するに選手たちのポテンシャルを引き出せなかったということだ。

 そもそも、モイーズ復帰という人選がナンセンスだ。好成績とは無縁の生活を送り、現場からいっさい声かかからなかった男をふたたび監督に起用するとは、上層部のセンスを疑いたくなる。また、クラブが危機を迎えているにもかかわらず、カレン・ブレイディ副会長は2800万ポンド(約40億円)ものボーナスを受け取ったという。サポーターは〈怒りのハマー〉をどこに打ちおろせばいいのだろうか。「そのカネ、強化に使う気はないのか!?」

 上層部は危機感に欠け、監督は凡庸がすぎる。選手たちも頭を抱えているに違いない。キャプテンのノーブルはこう言った。

「クラブに関わるすべての人間が、いま置かれている立場を認識しなくてはならない。うわべだけではなく、心の底から不安と向き合う必要がある。このままだと(プレミアリーグから)落ちる」

 悲痛な叫びは、上層部とモイーズに届いているだろうか。

ノーリッジ、アストン・ビラ、ワトフォードは…

 モイーズに比べると、ノーリッジのダニエル・ファルケ監督は状況に応じてゲームプランを組み立てている。開幕戦でリバプールを苦しめたり、5節にシティを3-2で破ったり、サポーターが満足する試合もあった。しかし、選手層の薄さは致命的だ。ひとりの主力が欠場するだけで攻守のバランスが大きく崩れる。失点はリーグ最多の47、得点はワースト3位タイの24。冬の市場でも即戦力を補強できなかった。ファルケは残留のためのプランを練り上げられるだろうか。

 さて、アストン・ビラは戦力の維持に成功した。ビッグクラブの補強レーダーに捉えられていたMFジャック・グレイリッシュが残留。彼が移籍していれば大幅な戦力ダウンを招いていただけに、サポーターも胸をなでおろしているに違いない。ただ、正GKトム・ヒートンと得点源のウェズレイが、ともに前十字靭帯断裂で今シーズン絶望。アストン・ビラのような経営規模では彼らに代わる人材を確保できない。さらに中盤のジョン・マギンが足首を痛め、3月下旬までの戦線離脱を余儀なくされそうだ。

 後半戦に向けて主力3名が起用できないのだから、ディーン・スミス監督も頭が痛い。リーグカップ決勝に進出したとはいえ、対戦相手はシティだ。挽回が不可能なダメージを伴った敗北を喫するかもしれない。グレイリッシュが痛手を被るかもしれない。残留のためになにをすべきか、スミス監督は難しい決断を迫られている。

 アストン・ビラ同様、ワトフォードもけが人は少なくないが、このクラブのアキレス腱はジーノ・ポッツォ会長である。なぜハビ・グラシアをたった4試合で解雇したのか。開幕4試合で1勝3敗とはいえ、昨シーズンは余裕の残留をもたらし、FAカップ準優勝に導いたのは紛れもなくグラシアの好采配だった。その功労者を短絡的な視点で見切り、後任のキケ・サンチェス・フローレスも80日で解雇。今シーズン、3人目の監督は特筆すべき実績が皆無のナイジェル・ピアソンだった。

 おそらく、ピアソンも長くはもたない。27節からはユナイテッド、リバプールとの連戦があり、30節は好調レスターとの一戦だ。この3試合しだいで、4人目の監督がやって来る。指揮官が変わればゲームプランが一新される。選手にすればいい迷惑だ。ポッツォが考え方を改めない限り、ワトフォードはプレミアリーグに定着できない。

気の毒なエディー・ハウ

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【写真:Getty Images】

 ボーンマスは不振にあえいでいた。12節のニューカッスル戦から5連敗。17節でチェルシーに勝利し、19節のアーセナル戦は1-1と引き分けたものの、続くブライトン戦から4連敗。原因は負傷者である。一時はネイサン・アケー、アダム・スミス、カラム・ウィルソン、サイモン・フランシス、チャーリー・ダニエルズ、ロイド・ケリー、ルイス・クック、デイビッド・ブルックス、アンドリュー・サーマン、ジョードン・アイブが揃って戦線を離脱する悪夢に見舞われた。

 トッテナムのジョゼ・モウリーニョ監督が「気の毒としかいいようがない」と同情し、リバプールのユルゲン・クロップ監督も「かける言葉がない」と表情を曇らせるほどの窮状だった。

 しかし、24節から2連勝。主力の大半が戻り、ようやく持ち直してきた。ブルックス、ケリー、ダニエルズはまだ戦列を離れ、クリス・メファムが故障者リストに名を連ねたが、戦力は整いつつある。フルスカッドに近い陣容で臨むことさえできれば、ボーンマスは残留争いに巻き込まれるようなクラブではない。少なくともトップ10はうかがえる。

 7連敗を喫したときも、ジェフ・モスティン会長をはじめとする上層部はエディー・ハウ監督を支持していた。この信頼関係こそがボーンマスの強みであり、監督を大切にしないワトフォードが、カネを積んでも決して手にできない大切な財産である。

 本稿執筆時点で10位アーセナルと18位ウェストハムは7ポイント差。数字の上ではノースロンドンの雄が残留争いに巻き込まれる恐れはある。しかし、総合力を踏まえると下位グループの勝点が加速する可能性は低く、むしろどれだけ維持できるかだろう。いずれトップ10との差は開いていくだろう。

 そして上層部の姿勢、監督のプランニング能力、選手層を加味した結果、降格はウェストハム、アストン・ビラ、ワトフォード、ノーリッジのなかから3チームと予想した。残り13戦、生き残りたければ肝を据えろ。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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