直前まで出場が危ぶまれたが…
中島翔哉が公式戦のピッチに戻ってきた。現地4日に開催されたタッサ・デ・ポルトガル(ポルトガルカップ)の準決勝1stレグ、アカデミカ・ビゼウ戦の64分、ポルトはFWルイス・ディアスとの交代で背番号10を投入した。
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プレーしたのはアディショナルタイムを加味しても約30分間だったが、中島にとっては大きな一歩だ。先月10日に行われたポルトガル1部リーグ第16節のモレイレンセ戦で負傷すると、約3週間にわたって離脱し、公式戦6試合の欠場を強いられた。
ビゼウ戦でも直前まで出場が危ぶまれた。ポルトを率いるセルジオ・コンセイソン監督は前日記者会見で「中島は改善を示した」と明かしたが、クラブ公式サイトの練習レポートを参照すると前々日練習はコンディション調整とジムワークのみ、前日練習でようやくチームに合流してコンディション調整メニューをこなしたようだった。
そんな状況で中島は、アウェイで行われるビゼウ戦1stレグの遠征メンバー22人に含まれた。試合直前に4人がベンチ外になる構成だが、8日に予定されているベンフィカとの大一番に向けて温存を図る中で背番号10は18人の出場登録メンバーに残った。
キックオフの笛が鳴ると、ジャイアントキリングを狙う相手が襲いかかってきた。2部のビゼウにとってポルトを前にしたら失うものはない。開始20分頃まで、FWジョアン・マリオを中心に勢いよく攻め込む。だが、ポルトも簡単には崩れない。
徐々に流れはポルトに傾き、前半終了時にはスコアこそ0-0だが、ボール支配率はおおよそ7:3で大きな差ができていた。後半に入っても流れは変わらず、ポルトが主導権を握ったまま先制点を奪う。59分、MFビトール・フェレイラが右サイドでボールを奪うと、そのままドリブルで前線まで運びスルーパス。完璧なお膳立てに抜け出したFWゼ・ルイスが、1対1になったGKの動きを冷静に見極めてシュートを流し込んだ。
ゴールに迫った“らしい”一発
1点リードした状態で、中島は64分から左サイドに入った。66分には中盤まで下がってボールを受けると、顔を上げてすぐさま右サイドで走り出していたDFレンゾ・サラビアへロングパスを通す。その流れでゴール前まで上がり、クロスに対してバイシクルシュートも試みた。久々の公式戦出場でも、再負傷のリスクを恐れることなく落ち着いて、視野を広く持ちながらプレーできていた。
69分には、相手のバックパスに対してスプリントをかけてプレッシャーをかけ、GKのミスを誘発している。この時、中島はGKがリターンパスを選べないようコースを限定しながら寄せることができていた。今季、地道に培ってきた守備面での判断や感覚も失われていない。
最もゴールに迫ったのは77分だった。自陣からのカウンターの流れで、MFママドゥ・ルームからの縦パスを受けたFWチキーニョ・ソアレスが、左サイドに走った中島へ展開する。さらにアウトサイドをオーバーラップしてきたDFウィルソン・マナファのサポートも受けながら、中島は自らドリブルでカットインしてペナルティエリア内まで侵入して右足を振り抜いた。
背番号10が放った強烈なシュートはゴールの枠を捉えていたものの、相手GKのファインセーブに遭って追加点には結びつかず。結局、70分に喫した痛恨の失点が響いて2部のビゼウ相手に1-1のドローに終わった。
この失点の場面、中島は守備対応で後手を踏んだ。自陣左サイドで相手DFルイ・シウバが後方にパスを出し、そのまま斜めにゴール方向へと走り込んでいった。押し込まれていた中島は、ルイ・シウバのマークを自分の背後にいたマナファに受け渡そうと腕の動きも入れて指示するが、そこでボールホルダーの相手MFジンバブエへの寄せが一瞬遅れ、フリーでクロスを上げられてしまった。最後はジョアン・マリオのヘディングシュートが、GKジオゴ・コスタの守るゴールを破った。
ベンフィカ戦で完全復活した姿を
中島は3週間ぶりの復帰とは思えないほど、軽快な動きを見せた。終盤にはトップ下に入ってチャンスを演出するなど、攻撃面では相変わらずの個人能力の高さを示していた。一方で、周囲との連係やコンビネーションの感覚などは改めて擦り合わせていく必要があるだろう。
ホーム&アウェイ制のカップ戦は、どうしてもリーグ戦とは違う戦い方になり、どんなチームにとっても難しい。2部クラブ相手にポルトが引き分けてもいいのかというプライドの問題もある。とはいえ2ndレグがホームであることを考えれば、1-1でもポルトが有利な立場にいることは間違いない。
終盤にMFヘスス・コロナがペナルティエリア内で相手に倒された場面でPKが与えられず、VARの介入によるレビューも行われなかったことに対し、コンセイソン監督はご立腹だった。納得のいかない結果や判定があったとしても、とにかく今は次の試合に向けて切り替えるべきだ。
何と言っても、8日には国内の覇権争いにおける最大のライバル・ベンフィカとの大一番が控えている。現時点では首位のベンフィカから勝ち点7差でポルトが2位につけているが、直接対決の結果しだいでは優勝への望みがつながる。残り14試合で勝ち点4差という状況まで詰めることができるのだ。
前回対戦時はポルトがアウェイで2-0の勝利を収めた。この時、中島は夫人の出産に立ち会うため日本に帰国中で、試合には出場していなかった。今季最大のビッグマッチに負傷が癒えて完全復帰を果たせたことは何よりの朗報だ。今度はビゼウ戦で温存された万全の状態の主力メンバーとともにベンフィカと戦うことができる。宿敵からのリーグ戦初ゴールにも大いに期待したい。
(文:舩木渉)
【了】