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バルセロナが取り戻した驚異的な支配率。新監督の初陣はどうだったのか? 復活した魅惑のフットボール

リーガ・エスパニョーラ第20節、バルセロナ対グラナダが現地時間19日に行われ、1-0でホームチームが勝利している。キケ・セティエン監督の初陣ということで大きな注目を集めたこの試合だが、さっそく新指揮官の色が出たと言えるだろう。驚異の支配率82%という数字は、どのようにして生まれたのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

セティエン監督の初陣は白星

バルセロナ
バルセロナはリーグ第20節でグラナダと対戦し、メッシの得点で1-0と勝利【写真:Getty Images】

 バルセロナは13日、2017年5月より同クラブの指揮を執っていたエルネスト・バルベルデ監督の解任を発表している。今季のリーガ・エスパニョーラでは首位、チャンピオンズリーグ(CL)でもインテル、ボルシア・ドルトムントらを抑えて1位で決勝トーナメント行きを決めていたが、スペイン・スーパーカップでは準決勝敗退に終わるなど、ここ最近は低調な戦いぶりが目立っていた。内容面に不満を持っていたサポーターも少なくなかったようで、今回の解任に至った。

 後任にはシャビ・エルナンデスの名も挙がっていたが、最終的にはベティスで結果を残したキケ・セティエン氏が就任。同氏はこれまでビッグクラブを率いた経験はないが、自身のスタイルをこの「バルセロナ」というクラブにどこまで落とし込めるのかが大きな注目点となった。

 そんなセティエン監督の初陣となったのが、現地時間19日に行われたリーガ・エスパニョーラ第20節のグラナダ戦。バルセロナは第5節でも同クラブと顔を合わせているが、その時は0-2の完敗を喫している。セティエン監督にとって、初陣が簡単なものにならないことは容易に想像できた。

 セティエン監督は、この試合でDFサミュエル・ウンティティやMFイバン・ラキティッチ、FWアンス・ファティといった選手を起用。FWアントワーヌ・グリーズマンとFWリオネル・メッシらも先発に名を連ねた。

 立ち上がりからテンポの良いパスワークを見せたバルセロナは、いきなりグラナダを深い位置まで押し込む。メッシを中心としながら、ワンタッチパスなどを積極的に取り入れ相手の攻略を図った。

 しかし、フィニッシュの部分で精彩を欠き続けたバルセロナは、なかなかゴールを奪うことができない。グラナダの守備は中央が厚く、メッシに対しては3人で囲んでボールを奪うなど、高い集中力を保って挑んできた。結局、バルセロナは前半だけでシュート8本を放ったが、ゴールネットを揺らすことはできず、0-0のまま後半へ向かうことになった。

 後半もバルセロナがボールを保持し、グラナダが自陣で守備ブロックを築いて耐えるという展開に。しかし、ここでもまだゴールは生まれない。前半に比べるとテンポの良いパスワークも徐々に発揮できなくなっており、攻撃陣はやや停滞していた。反対に、67分にはMFヤン・エテキにポスト直撃のシュートを放たれるなど、ピンチも招いている。

 しかし、69分のことだった。DFヘルマン・サンチェスがメッシへのファウルを取られ、この日2枚目となるイエローカードを受け退場となったのである。

 一人少なくなった相手に対し、余裕を持って試合を進めたバルセロナは77分、相手陣内でMFリキ・プッチがボールを奪うと、ボールを中央へ。そこからグリーズマン、MFアルトゥーロ・ビダルが見事な連係を見せ、最後はメッシが右足でシュート。これがゴール左下隅に決まり、ついに先制ゴールが生まれた。

 その後もグラナダを寄せ付けなかったバルセロナは、メッシの1点を守り切り1-0で勝利。結果はもちろんのこと、内容面でもポジティブな要素を多く残す試合になった。

復活した巧みなパスワーク

 このゲームでは、さっそくセティエン監督の色が出ていたと言える。データサイト『Who Score』によると、この日バルセロナが記録したボール支配率は驚異の82.6%。パス成功率は92%で、パス本数はなんと1005本というデータが出ている。故ヨハン・クライフ氏の信奉者であり、ポゼッションサッカーを愛するセティエン監督からしてみれば、このパフォーマンスは満足いくものになったであろう。

 バルセロナは攻撃時、3-5-2でグラナダを攻略しようとしていた。3バックは右からDFセルジ・ロベルト、DFジェラール・ピケ、ウンティティだ。DFジョルディ・アルバは左ウィングバックの位置でプレーすることがほとんどであり、アンカーにMFセルヒオ・ブスケッツ、その前にビダルとラキティッチを並べる形を取った。

 攻撃の起点となるのは、アンカーのブスケッツだ。同選手の下にボールを集め、そこから縦、横、斜め、後ろと臨機応変にパスを散らし、リズムを生んでいる。実際、この日最も多くのパス本数を記録したのが背番号5。その数は157本にまで上っている。

 バルセロナは攻撃時、選手間の距離はコンパクトに保ち、遅くともツータッチ目にはパスが出ているように意識している。選手一人ひとりはボールが味方選手に渡る前に動き出しており、味方がボールを受けた瞬間すぐにサポートに回る準備を整えていた。これによりパスのテンポは恐ろしいほどスムーズになる。グラナダはプレスを与えようにもパスで剥がされるため、深い位置で待ち構えるしか手段はなかった。

 2トップのグリーズマンとメッシは、やはり相手のボランチとCBの間のスペースを使うことが多かった。ボールを受けるため下がり、ボールを受け、落とし、また斜め前方へ走り込むことで相手の脇のスペースを突き、パスを貰った瞬間に相手を剥がす状態を作り出す。この動きが非常に効果的で、グラナダは少し困惑していた。

 ボールが前方に来ないと思ったら、J・アルバらが相手の背後を突くランニングを見せ、パスを呼び込む。ショートだけではなく、状況に応じてロングボールを使うことでリズムに変化を加える。こうなるとDF陣からすると対応するのは非常に困難なものとなる。ここ最近のバルセロナからは消えていた、流動性やテンポの良い崩しが明らかに復活していた。

 中へ人数を集め、パスを交換しながら大外へボールを振る。相手のDF陣を横にスライドさせたところで再び中央へボールをリターンし、陣形に綻びを生まれさせる。CBとCB、またはCBとSBの間に人を置き、そこにボールを当てたら一気に加速。バルセロナの攻めのオプションは非常に多彩であった。観ている側も頭を休める時間がないが、選手はより柔軟に状況を判断することが求められる。ただ、ここが成熟してくれば、バルセロナはもっとパワーアップすることだろう。

攻→守への完璧な切り替え

キケ・セティエン
今後、セティエン監督が築き上げていくチームに注目である【写真:Getty Images】

 バルセロナの支配率が高かった理由は、攻撃陣によるものではない。この日の同チームは攻撃→守備への切り替えが非常に素早く、相手にボールを持たせる時間をほとんど作らせなかった。

 アンカーのブスケッツが中盤でバランスを取りながら、自身のプレーエリアに侵入してきた敵を一気に襲い掛かる。前を向かせないよう対応し、ビダルらインサイドハーフの選手と挟み込むような形でボールを刈り取った。

 ブスケッツの脇のスペースを突かれた際には、ウンティティやS・ロベルトといったCBの選手たちが背後のエリアを気にすることなく前に飛び出てくる。そこでボールを奪いきり、一気に縦、あるいはバックパスで状況を落ち着かせることで、再び自分たちの時間を作り出すことができていた。

 また、最前線のグリーズマンは最終ラインまで戻って守備に加担するなど、高い意識を持っていた。左サイドのJ・アルバも上下動を果敢に繰り返す。メッシはあまりディフェンスに回ることはなかったが、その後ろのビダルやラキティッチがしっかりと敵を捕まえるため、そこまでウィークポイントともならなかった。

 ボールの即時奪回は、セティエン監督が求めるサッカーを構築するには必要不可欠なものとなるだろう。まだカウンターへの対応など、若干の不安はあったものの、当然ながらこれからそういったあたりも整備されていくはずだ。もともとパスワークには定評のある選手が揃っているため、あとはこの攻→守への切り替えでより強度を高めていければ、バルセロナはもっと面白いチームに変貌できるだろう。

 この日はグラナダもしっかりとした守備でバルセロナに対応できていた。スコア的には1-0と、苦戦を強いられたといえばそうなのかもしれない。ただ、セティエン監督の初陣としては、申し分ない出来であったと言えるだろう。バルベルデ体制時代とは大きく変化したポイントもあった。今後が楽しみなチームだ。

 ここにFWルイス・スアレス、MFフレンキー・デ・ヨングらが絡むと、果たしてどうなるのか。ここも、今後注目していきたい。

(文:小澤祐作)

【了】

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