リーグ3連勝中のシティだったが…
前節のアストン・ビラ戦では圧巻の強さを誇った。ビラ・パークに乗り込んだマンチェスター・シティは、FWリヤド・マフレズの2ゴールなど、前半だけで大量4得点を奪取。後半にもFWガブリエル・ジェズスとFWセルヒオ・アグエロがゴールネットを揺らし、最終的には6点を挙げて下位に沈む相手を寄せ付けなかった。
これでリーグ戦は3連勝。依然として首位・リバプールとの勝ち点差は大きく離れているが、ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるチームの調子は決して悪くはなかった。
しかし、現地時間18日に行われたプレミアリーグ第23節のクリスタル・パレス戦では、今季何度か見られているシティの脆さが露呈することになってしまった。
お馴染みの4-3-3システムでこの試合に挑んだシティは、立ち上がりから素早いリズムでパスを繋ぎ、相手の陣内へ幾度となく侵入。1分には左サイドのDFバンジャマン・メンディからFWラヒーム・スターリングへ際どいクロスが入るなど、試合の入りとしては非常に良かった。
一方でロイ・ホジソン監督率いるクリスタル・パレスは、守備時に4-5-1でシティに対応。ただ、中央はしっかりと締めているのだが、サイドのスペースに関してはある程度使われても仕方ない、といったディフェンスの内容であった。サイドハーフのFWウィルフレッド・ザハもそこまで守備に加担することなく、虎視眈々とカウンターの機会を狙っていた。
こうなると当然、シティの攻撃はサイドからのものが中心となる。サイドバックも高い位置を取り、ウィングの選手も目一杯幅を取ってボールを呼び込む。そこからグラウンダーのクロスやファーサイドを狙った高めのクロスなど、状況に応じて種類を変えながらボールを中へ放り込んだ。
そんなシティにとって理想的な形が見えたのは17分の場面。左ウィングのMFベルナルド・シウバがアンカーのMFイルカイ・ギュンドアンへパスを戻すと、インサイドハーフのMFダビド・シルバとともに内側のスペースへ走り込む。こうしてクリスタル・パレスのDFが引き付けられたのを確認したギュンドアンは、ダイレクトで左のメンディへパス。結果的にクロスは相手DFに当たってコーナーキックになったが、ワンタッチパスで攻撃を一気に加速させた美しい形での崩しであったと言える。
と、様々な形でサイドからの攻撃を繰り出したシティであったが、クリスタル・パレスの守備陣がなかなか揺るがない。上記したようなダイレクトパスで深い位置を取られた際には、陣形を整える時間が少なく危うい場面も作られたのだが、時間をかけて繰り出される単純なクロスに対する中央の強度はかなり高かった。低いクロスに対してもGKビセンテ・グアイタが勇気を出して飛び出しストップ。ゴールを与えなかった。
クロスを放り込んでは跳ね返され、それを拾ってまたクロス。この繰り返しだったシティは、39分に最悪の結果を招く。CKから最後はFWジェンク・トスンに頭で押し込まれ、なんと先制点を献上したのである。前半、クリスタル・パレスのシュートはこの1本だけであったが、シティは1点リードを許したまま、後半を迎えることになった。
一度はPK取り消し。それでもエースが2ゴール
後半に入っても、試合の流れに大きな変化はなかった。ボール支配率は圧倒的にシティの方が高く、クリスタル・パレスは4-5-1のシステムをきっちりと保ったまま対応。相変わらず中央の守備強度は高かった。
ただ、前半と少し変わったのがクリスタル・パレスの守備意識である。前半はサイドハーフのザハとFWアンドレ・アイェウがそこまでプレスバックをしていなかったのだが、前半で1点を奪ったことで後半はこのあたりが改善され、彼らも自陣深い位置まで戻り守備に奮闘していた。たかが1点、されど1点。クリスタル・パレスはこのリードをなんとしても保つことを狙った。
シティはそんなクリスタル・パレスを前に大苦戦。サイドの選手が幅を取り、内側のスペースに走り込んできたMFケビン・デ・ブルイネらを生かしながら攻略を図ったが、最後はやはりクロスに終わることがほとんどであった。そのクロスも、ことごとく跳ね返される。時折スターリングらがドリブルで打開しようとするも、クリスタル・パレスのDFは簡単に剥がれなかった。
シティは62分にD・シルバを下げG・ジェズスを投入。システムをそれまでの4-3-3から4-2-3-1に代え、アグエロとの縦関係を築いて攻撃のバリエーションを増やそうと試みた。
が、やはりそう簡単にはうまくいかない。その交代以降も、無得点の状態が続いた。72分にはDFジョアン・カンセロのクロスがDFジャイロ・リーデヴァルドの手に当たったとして、一度はシティにPKが与えられるものの、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入により取り消しに。ボールはリーデヴァルドの足に跳ね返ってから手に当たっていたため、「自らの頭や身体から、そのまま手または腕に当たる」に該当するとし、反則ではないと判断されたと見られる。
少し不運な形で得点の機会を逃したシティであったが、82分、G・ジェズスのGKとDFの間を狙った完璧なクロスをアグエロが右足で合わせ同点に。さらにその5分後にもメンディからのクロスをアグエロが頭で合わせ逆転。なんと終盤で一気にリードを奪ったのである。前半から徹底して行っていたサイドからの攻めが、ついに功を奏したのだ。
最後に待っていた悲劇
しかし、悲劇は待っていた。89分、左サイドでボールを受けたザハがドリブルを開始。対峙したDFジョン・ストーンズがカバーに入るも止められず、放たれたクロスがMFフェルナンジーニョの足に当たって、ボールはゴールに吸い込まれた。
カンセロは、前半からザハを警戒するようにとグアルディオラ監督に指示を受けていた。なので、攻撃時もコートジボワール代表FWを意識しながら、高い位置を取っていたのだ。しかし、このシーンではボールウォッチャーになり、ザハに背後を取られ、そこにパスを通されている。
こうしてストーンズはザハとの1対1を強いられた。当然、このような局面では後者に分がある。ここを突破するのは、ザハからしてみればそんなに難しいことではなかった。
ザハがドリブルをし、前進していく中、中央ではフェルナンジーニョとFWコナー・ウィッカムが激しくポジション取りを行っていた。最初に前に出ていたのは後者であったが、ブラジル人MFはそうはさせまいと懸命に前に出ようとしている。そして、ようやくウィッカムより前に出ることができたのだが、その瞬間に足元へボールが来てしまった。そうなると、体勢はあまり整っていない。クリアするのは難しく、自チームのゴールにボールを流し込んでしまった。
今シーズン、シティはカウンターで何度か失点を喰らっている。もちろん、相手選手の能力が高く、そのままゴールへ持っていかれたケースもあるが、自分たちの対応ミスが引き金となって起こした失点も少なくはない。この日の2失点目はまさにその形で、カンセロのあのポジショニングも疑問であり、ストーンズの対応もやはり弱かった。今季何度も出ている課題が、再びここで露呈している。
グアルディオラ監督も試合後に、個人名こそ挙げていないが、判断ミスが招いた失点であったことを認めた発言をしている。勝利はあと一歩まで近づいていただけに、なんとも苦いドローとなった。
これで首位・リバプールとの勝ち点差は暫定で13。ただ、リバプールは2試合未消化なので、その差は最大で19に開く恐れがある。やはり、プレミアリーグ3連覇は厳しいと言わざるを得ない。
(文:小澤祐作)
【了】