「キモチ」を敗因にしてはいけない
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【U-23日本代表 1-2 U-23シリア代表 U-23アジア選手権・グループB第2節】
森保一監督には、たぶんこのチームは救えない。東京五輪にめぼしい欧州組を全員呼ぶことが解決策だ。それをやってもまだどうなるかわからないが、現状で事態を好転させられるとしたら関塚隆技術委員長だろう。
試合後、森保監督は「勝負強さ」に言及し、選手たちは「熱量」や「賭けているものの違い」あるいは「個で勝つこと」に触れていた。そう言いたくなるのはわかるが、シリア戦の敗因およびグループリーグ敗退の理由はそれではない。キモチなどという得体の知れないもののせいにしてはいけない。
日本は初戦に続いて決定機不足だった。決定機の手前のチャンスすらそれほど作れていない。現在のやり方で点をとれない以上、発想を変えなければならないと思う。ざっと考えられる対策は4つある。
(1)オーバーエイジ枠で大迫勇也を招集する
(2)ウイングバックの人選と攻め込みを変える
(3)得点の手段としてビルドアップ主体からハイプレスに移行する
(4)守備を強化してカウンターに徹する
いずれも今回のメンバーと戦術を否定することが前提になる。
攻撃力活性化のための4つの対策
4つあげた対策について順番に説明していきたい。
大迫の招集は現状の延長線上にある。現在のチームを温存した形での修正案だ。日本の攻め手は相馬勇紀と橋岡大樹のクロスボールがほとんどだった。あとはボランチから相手ディフェンスライン裏へ落とすロブぐらい。相馬、橋岡が1対1で仕掛ける形は作れていたし、1対1の勝負にも勝って何度もハイクロスを入れている。また、これはチームとしてやりたいアプローチの1つでもあったはずだ。
ただ、ゴール前で決められる選手がいなければハイクロスの意味がない。日本にはロベルト・レバンドフスキもトーマス・ミュラーもいないのだ。クサビを収めて中央に敵を集めてサイドへ展開し、さらにハイクロスを決めてくれるFWが必須なのに画竜点睛を欠いている。解決策としての大迫ということだ。
大迫の招集が無理ならアプローチ自体を変えなければならない。もっと相手ゴールに近づいてからの低いクロスボールをメインにする。ドリブルで縦に勝負するウイングバックではなく、ニアゾーンに走り込む味方へパスを出せるタイプが必要になる。例えば、オーバーエイジで柏好文を招集すれば、森島司とのコンビができる。サンフレッチェ広島で何度もニアゾーンを攻略しているコンビだ。西大伍、酒井高徳、酒井宏樹も有力だろう。いずれもオーバーエイジなので、招集できるのは2人ないし3人だが。
結局のところは誰を招集するか
それもダメならさらに発想を変えて、組み立てて得点を狙うよりも敵陣でボールを奪うことでチャンスを作る。自陣でボールを奪われた相手はその時点で崩れているので、素早く攻め込めば得点の可能性は上がる。すでにジャマイカ戦の前田大然、旗手怜央、安部裕葵のトリオが成果を出してもいる。
暑さが予想される東京五輪に相応しい守備戦術とは思えないし、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が導入しようとして失敗した経緯もある。ただ、ロンドン五輪ではある程度威力を発揮していたので、やれないことはないかもしれない。
最後はとにかく守ること。点がとれないなら点をやらないしかない。2010年南アフリカワールドカップのときの方式だ。これまで積み上げてきた攻撃はほとんど機能していないのだから期待は薄い。どこかで見切らなければならない。当時の岡田武史監督は東アジア選手権で現在のU-23と同様の状態に陥り、本番直前に切り替えている。
ただ、あのときのチームには田中マルクス闘莉王と中澤佑二という代表史上屈指の空中戦に強いコンビがいた。放り込み耐性のないチームが引いて守るのは自分の首を絞めることになるが、吉田麻也と冨安健洋を揃えられれば望みはある。
そして5番目の策、というよりこれが最初なのかもしれないが、久保建英、堂安律、三好康児など、2列目の欧州組を揃える。センターバック、ボランチ、センターフォワードの縦軸をオーバーエイジで固めれば、ぶっつけ本番でも何かができる可能性はある。
五輪は選手招集に強制力がない。結局のところ、4つあげた対策にしても誰を呼べるかにかかっている。技術委員長を筆頭に協会の交渉力しだいだ。
(文:西部謙司)
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【了】