浮き彫りとなった大きな課題
4シーズンぶりに明治安田生命J1リーグの舞台に挑んでいた松本山雅FCの目標は「残留」であった。しかし、今季リーグ戦34試合を終えた同チームの順位は17位。目標達成への道は儚くも閉ざされ、1年でJ2に戻ることとなった。
反町康治監督の下、「境界突破」をスローガンに掲げて今シーズンに挑んだ松本。下馬評はあまり高いとは言えなかったが、開幕2試合を1勝1分で乗り切るなどスタートは悪くなかった。しかし、第3節の浦和レッズ戦で0-1と敗れると、そこから3連敗。その後、一度は立て直したかに思えたが、第14節の清水エスパルス戦から第23節の名古屋グランパス戦まで10試合未勝利が続くなど、夏場には自動降格圏へ転落していた。
その後も勝ち点を伸ばせずにいた松本は、第33節のガンバ大阪戦で1-4の大敗を喫したことで、1試合を残してJ2降格が確定。結局、後半戦はわずか2勝しか挙げることができなかった。ホームでの勝利数もわずか「2」。最下位での降格こそ逃れたが、あまりにも不甲斐ないシーズンとなってしまった。
今季のリーグ戦で苦戦した理由は単純だ。全34試合でわずか21得点しか挙げられなかった攻撃陣の迫力不足が、目標であった残留に向けて大きな障害になったと言えるだろう。
チームの最多得点者はFW永井龍だが、同選手もわずか3ゴールしか挙げていない。チームのエースとして奮闘していたFW前田大然は更なる成長を求めシーズン途中にポルトガルのマリティモへと移籍。MFセルジーニョやMF町田也真人らは離脱を繰り返すなど最後までコンディションが整わず、戦力になり切ることができなかった。
新加入選手もことごとく期待を裏切る結果になった。今季より加入したFWレアンドロ・ペレイラは思ったほどチームにフィットせず、シーズン途中にサンフレッチェ広島へ移籍。9月にエステグラルFCより加入したFWイズマはわずか3試合の出場で、今季のモンテディオ山形で21試合7得点という成績を収めていたFW阪野豊史は2ゴールこそ挙げたが、起爆剤にはならなかった。
攻撃陣が軒並み力を発揮できなかったのは最大の痛手であった。リーグ戦全34試合で複数得点を挙げることができたのはわずか3回。1試合で奪った最大得点数は「2」となっている。これでは、残留を果たすのは難しいと言えるだろう。1年での降格は必然であった。
だが反対に、守備陣は大きく奮闘したと言えるだろう。GK守田達弥を中心に、ゴール前に人数を集め相手のボールを跳ね返し続けるディフェンスは、他の17クラブにとっても厄介なものになっていたと言える。DFリーダーの飯田真輝、シーズン途中に加入した元日本代表DFの水本裕貴の存在も大きかった。
事実、失点数40はJ1全18チーム中8番目に良い数字。10位以下のチームの中では最も少ない数字となっていた。松本は今季のリーグ戦で6度、勝ち点3を奪っているが、そのすべてが1点差での勝利。守備陣の奮闘による効果は大きいと言えるはずだ。なおさら、攻撃陣の迫力不足がもったいないと感じるような結果になった。
来季は再びJ2に戻る松本。8年間チームを率いた反町監督が辞任し、後任にはザスパクサツ群馬を率いていた布啓一郎監督が就く。クラブは2020年に大きな変化を迎えると言ってもいいだろう。
今季は伸ばすべき部分と改善すべき部分がハッキリと分かれる形になった。そこをどう受け止め、クラブの強化につなげるか。1年でのJ1復帰に向け、来季はこうした点も重要となってくるだろう。