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リバプール、A・アーノルド独壇場の理由。レスターが空けた穴と、4得点を生んだ針に糸を通す変幻自在の右足

プレミアリーグ第19節、レスター対リバプールが現地26日に行われ、0-4でリバプールが勝利した。DFトレント・アレクサンダー=アーノルドは全4得点に絡む大活躍。もはやその右足から放たれるキックの精度は右サイドバックの範疇を越えている。チャンスを作り続ける21歳を止める方法はあるのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ピンポイントでターゲットに合わせる技術

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リバプールのトレント・アレクサンダー=アーノルド【写真:Getty Images】

 試合を見ているのか、トレント・アレクサンダー=アーノルドのプレー集を見ているのかわからないほど、右サイドバックの21歳は躍動していた。

 リバプールはFIFAクラブワールドカップに参加した影響で1試合未消化だが、この試合の勝利によって2位・レスターとの勝ち点差を13に広げている。

 立ち上がりの約1分間で2本のシュートを放ったのはリバプールだったが、試合の序盤はしばらくレスターがボールを持つ時間が長かった。しかし、積極的にボールをつなぐものの、フィニッシュまでは持ち込めない。

 レスターは不用意なボールロストが続き、リバプールはカウンターからチャンスを作っていく。徐々にリバプールへと流れが渡り、コーナーキックの流れから31分に先制点が生まれる。

 アレクサンダー=アーノルドが左サイドからインスイングの軌道で入れたクロスを、ファーサイドでロベルト・フィルミーノが頭で合わせた。

 前方のジェイミー・ヴァーディーとは十分に距離があり、ノープレッシャーでクロスを上げることができた。余裕を持ってゴール前を確認すると、手を挙げるモハメド・サラーとフィルミーノが視界を捉えた。ベン・チルウェルがバックステップを踏んでクロスに備えたが、アレクサンダー=アーノルドはピンポイントでターゲットに合わせる技術を持っていた。

6人のDFの間を通すパス

 その後も何度か決定機があったが、追加点は生まれず。リバプールは70分に2枚替えを敢行すると、直後に追加点が生まれた。

 アレクサンダー=アーノルドの左CKがチャーラル・ソユンジュの左腕に直撃。PKが与えられ、直前の交代で入ったばかりのジェームズ・ミルナーがこれを決めた。

 3点目はその3分後。フィルミーノからのパスをミルナーがバイタルエリアで受けると、右サイドへ展開。パスを受けたアレクサンダー=アーノルドが出した速くて低いクロスは、ファーサイドに走り込んだフィルミーノの下に。先制点を決めている背番号9はワントラップから冷静に右足を振り抜いた。

 クロスというよりはパス。アレクサンダー=アーノルドとフィルミーノの間にレスターは6人の選手がいた。25ほどの距離があったが、そのわずかな隙間に、まさに針穴に糸を通すようなパスを出した。

 試合は終盤に差し掛かり、3点リードしたリバプールはボールを保持して試合をコントロールする。しかし、66番をつけた21歳の右サイドバックは4点目のチャンスを見逃さなかった。

 センターサークル付近でサディオ・マネがボールを受けて敵陣へと攻め込むと、右側からアレクサンダー=アーノルドがスプリントして駆け上がる。

 ボールを受けた右サイドバックは迷わず右足を振り抜くと、ボールはチルウェルの股を抜け、GKキャスパー・シュマイケルの伸ばした手は届かず、ゴールネットへと吸い込まれた。

A・アーノルドが躍動した理由

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トレント・アレクサンダー=アーノルドは1得点2アシストの活躍を見せた【写真:Getty Images】

 データサイト『Whoscored』によれば、アレクサンダー=アーノルドは両チーム最多の105、左サイドバックのアンドリュー・ロバートソンはそれに次ぐ101回のボールタッチを記録した。

 レスターは両サイドハーフのプレスバックが少なく、リバプールのサイドバックを留める方法を用意していなかった。果たして、リバプールのサイドバックが高い位置でフリーの状態を作ることは容易だった。

 4得点すべてがアレクサンダー=アーノルドの右足から生まれている。フィルミーノの2得点をアシストし、CKからPKを誘発。さらにダメ押しとなる4点目のミドルシュートを決めた。

 少し時間を遡れば、18日のクラブワールドカップ準決勝でも、フィルミーノの決勝点をアシストした。このときはニアへ走り込んだフィルミーノへ、柔らかいパスを通している。

 オープンプレーでありながら、プレースキックのように精度の高いボールを蹴れる。縦回転で落としたり、カーブやシュート回転で曲げたり、無回転のボールも蹴れる。今季は既に8アシストを挙げ、昨季(12アシスト)を大きく上回るペースで得点を演出している。

 さらにはこの試合で見せたミドルシュートや、直接FKからもゴールを狙える。DFでありながらチャンスメイカー。相手にとってこれほどの脅威は他にない。

 代役は世界中を探してもいない。過密日程による疲弊が懸念されるが、替えが利かない。ユルゲン・クロップにとっては嬉しくも辛い悩みになっている。

(文:加藤健一)

【了】

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